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最近読んだ本の話 vol.63

 「最近読んだ本の話」の第63弾です。今週はちょっと寒い日が続いた後にまた暖かくなって、薔薇が満開になりました。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。


1、佐藤 和哉『〈読む〉という冒険 イギリス児童文学の森へ』

ロビンソン、アリス、プーさんにナルニア……おなじみの名作たちは、本当は何を語っている? 「作者の言いたかったこと」と同じくらい、「作者が言おうとしたわけではないこと」もおしゃべりかもしれない。本のページは冒険の扉、言葉や文は未知の森。あの物語を「いま」のあなたが読む意味とおもしろさ、体験してみませんか。          -Amazonより引用-

 中高生向けに書かれている本だと思うのですが、興味があって読んでみました。そもそも国語の勉強って、私は高校生までしかしてないし、知らないことがたくさん書かれているかもしれないので。
 小学校から大学入試共通テストにいたるまで、「作者の意図」と「登場人物の気持ちを考えること」が国語の問題として繰り返し問われているが、それだけが物語の読み方ではない、と著者はおっしゃっています。どういう読み方を教えてくれるんだろう?と、期待が高まりました。
 取り上げられている本は、『ロビンソン・クルーソー』『不思議の国のアリス』『くまのプーさん』『ナルニア国物語』などです。読み方の1つとして、その作品が書かれた時代の歴史的状況、という観点から読むことが勧められています。私がこの1年ぐらいの間に読んだ小説では、SNSでの誹謗中傷が取り上げられている作品が多かったですが、そういう小説を読んでいるとそのことに対する作者の憤りを感じます。自分の作品に込めた気持ちというか、「ここで言ってやる!」という強い気持ちを感じますが、そうやってまた「作者の意図」みたいなことを考えてしまうのは、長年「作者の意図」を考えてきたことの呪縛だろうか?それとも、どの切り口から読んでもそこにつながるんだろうか?なんて考えたりしながら、楽しく読みました。


2、伊藤 調『ミュゲ書房』

そこは、人も物語も再生する本屋さん
小説編集の仕事をビジネスと割り切れない、若手編集者の宮本章は、新人作家・広川蒼汰の作品を書籍化できず、責任を感じ退職する。ちょうどその頃、北海道で書店を経営していた祖父が亡くなり、章はその大正時代の洋館を改装した書店・ミュゲ書房をなりゆきで継ぐことに……。
失意の章は、本に関する膨大な知識を持つ高校生・永瀬桃ら、ミュゲ書房に集まる人々との出会いの中で、さらに彼のもとに持ち込まれた二つの書籍編集の仕事の中で、次第に本づくりの情熱を取り戻していく。そして彼が潰してしまった作家・広川蒼汰は――。         -Amazonより引用-

 編集の仕事を辞めた後、祖父母が経営していたミュゲ書房を閉じるために北海道を訪れた主人公の宮本章は、なりゆきで店を再開して継ぐことになります。ミュゲ書房が大好きで通ってくる周囲の人たちや、祖父母が仲良くしていた人たちにも助けられて、すごくいいお店になっていきます。近くにこんな書店があったらなあ!と読みながら何度も思いました。
 章は、本を作ってほしいと頼まれて、編集だけでなく出版もすることになり、いい本ができるのですが、編集者時代に章が注目していて書籍を出版したいと願っていたけれど潰してしまった作家・広川蒼汰は実は…。というそちらの話もどんどん展開があって、痛快なところもあってとても面白かったです。


3、岩井 圭也『竜血の山』

著者史上最大のスケールで描く、圧倒的筆致の人間ドラマ――!
昭和13年、鉱山技師の那須野寿一は、北海道東部の山奥で、巨大な水銀鉱床と地図にない集落を発見する。〈フレシラ〉という名のその集落には、ある秘密を抱えた一族が暮らしていた――。
フレシラの鉱夫となった一族の青年アシヤ。寿一の息子で、水銀に魅せられた源一。太平洋戦争、朝鮮戦争特需、水俣病の公害問題……昭和の動乱に翻弄された二人の青年の、数奇で壮絶な生き様を描く!  -Amazonより引用-

 北海道の東部に調査に来ていた鉱山技師の那須野寿一は、水銀鉱床と集落を発見します。その集落に住む人々は水銀の中毒にならないという秘密があって…。物語は昭和13年から始まり、軍需のために水銀が必要で山はどんどん切り開かれていきます。一族の青年アシヤの目線からも物語が描かれているので、嫌なことにならないか心配しながら読み進みました。とんでもないことが次々に起こるのですが…。私は水銀が山から採れるとは知らなくて、湖のように湧いて出るなんて想像もしたことがなかったです。アシヤと、寿一の息子で水銀に魅せられた源一が、最後に一緒に行動するところがいいです。


 今週は「最近読んだ本の話」を書くことができました。休日があったのになかなか読むのが進まないですが、少しずつでも読んで書いていけたらと思います。最後までお読みくださってありがとうございました。

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