最近読んだ本の話 vol.105
「最近読んだ本の話」の第105弾です。今日から7月です!それにしても時間がたつのが早い。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。
1、辻村 深月『傲慢と善良』
つい最近『Another side of 辻村深月』を読んで、全作品が紹介されていた中で気になって読んでみたいと思った作品です。「善良」な人が「傲慢」じゃないとは限らない。「善良」と「傲慢」は1人の人間の中で成り立つのでは⁉ということに挑戦している作品です。「善良」な人の「傲慢」とはどんなことなんだろう?読みながらいろんなことを考えました。
婚約者・坂庭真実がある日突然いなくなった。彼女に何があったのか?西澤架は真実を探すため、彼女の実家に話を聞きに行くのだが…。
読み始めて30ページに至らない間に「あれ?この人傲慢では?」と架に対して思いました。いい人なのに傲慢だ。これはもしかしたら主人公の男女2人とも傲慢で善良な人なのでは⁉と、ますます興味を惹きつけられました。
架は真実の居場所を知るヒントを得ようとして、真実が実家の群馬にいた頃にお世話になったという結婚相談所に話を聞きに行き、お見合いした相手に話を聞いたり、職場の元同僚に会いに行ったり、真実の姉にも話を聞いて懸命に探します。その中で、真実が置かれていた状況やどんな思いでいたのかを知っていきます。どうなるんだろう?と先が気になって、あっという間に読んでしまいました。最後の2人の選択がいいです。読めてよかった!この作品が大好きです!
2、六草 いちか『すべてのナゾがこれで解けた!!鷗外「舞姫」徹底解読』
「舞姫」の謎が解決するという魅力に惹かれて読みました。高校の現代文の教科書に載っていて授業で取り上げられたので、その時に読んだ記憶はありますが、今覚えているのは「豊太郎、ひどい!」ということぐらいで、おぼろげなあらすじしか覚えていません。
最初に原文から始まります。こういう文体だったっけ?と思いながら読んでいくと、読めなくはないけど注釈がないと意味がわからない言葉も多くて、古文と現代文の間みたいな難解さがあります。確かに高校の教科書に載せるにはふさわしいような。最後の一文は覚えていました。
高校生の時は、豊太郎の憂いを帯びた独白がまったく響いてこなかったのですが、今読むと妙にしんみりした気持ちになって、親の言いなり、上司の言いなりになって、勉強や仕事に打ち込んできたけど、本来の自分には向いてないことだったのでは⁉と思い始めること、あるよね~などと思っているのが不思議です。鷗外が、エリスのモデルになった女性と日本に帰国してからも手紙のやりとりをずっと続けていたことを他の本を読んで最近知って、「あれっきりじゃなくてよかった!大切に思ってたんだなあ」と嬉しかったのですが、そのこともこの本に書かれていました。
「舞姫」が何のために書かれたのかよくわからないな、と思っていたのですが、今回再読してみて、恨んでいるということと自分の無念さ、ドイツの思い出や自分が考えたことを永遠に残したかったからなのかなあ、と思いました。めったにしないんですけど再読って面白いですね。
3、藤野 恵美『ギフテッド』
「ギフテッド」とは、先天的に平均よりも顕著に高い能力を備えていて、ある特定の分野で並外れた才能を示す子供のことだそうだ。主人公の凛子は、国内トップの大学を卒業して一流企業に就職したが上司のモラハラがきつくて退職し、現在はフリーランスの翻訳者をしているが、 姪の莉緒の受験勉強を見てやってくれないかと妹に頼まれて、引き受けることになる。莉緒は読書と昆虫が好きで、頭の回転が速く論理的に考えるのが得意なのだが、コミュニケーションに難がある小学生だ。莉緒は、凛子が友人から聞いた「ギフテッド」なのではないかと思われるのだが、「ギフテッド」はなかなか理解されない。凛子は受験勉強を見ながら、莉緒の父母とのやり取りや塾でのできごとに耳を傾ける。莉緒のそばに凛子がいてよかった!
凛子は、小学生の頃に急にいなくなった男の子を探すために頑張って勉強して大学に入ったのだが、その男の子は見つけられなかった。莉緒の受験の相談で訪れた学習教室の都築から、凛子は学習教室を手伝ってほしいと提案され、莉緒の受験が終わってから手伝うことに決めたのだが、かつての知り合いの男の子と同じような境遇の男の子に手を伸ばす。最後の場面、泣きそうになりました。この物語を読めたことは、私にとって大きな意味と発見がありました。そういうことがあるから本を読むことは意味がある!と思います。自分一人では知ることができなかったことを知ることができるから。
もうすっかり夏⁉でしょうか。毎日暑いです。読書に向かない季節の到来です。去年の夏はどうやって乗り切ったんだったかな?最後までお読みくださってありがとうございました。
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