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最近読んだ本 『氷点』三浦綾子

 私は毎月目標6冊!と掲げて本を読んでいるのですが、今月は5冊読み終わりました。最近読み終わったのは『氷点』です。

 有名な本なのに読んだことがなかったので、どんな内容なのか興味があって買いました。

 この物語の舞台は北海道の旭川で、主人公の啓造は医院を経営している医師です。妻と幼い息子と娘がいます。
 啓造が出張で家を空けていた日、幼い娘がいなくなり、何者かに殺されて発見されます。娘がいなくなった時に妻は来客中で、その客は自分の医院に勤めている眼科医の村井だった。啓造は妻の夏枝と村井の関係を疑って…。と物語は始まります。

 まもなく犯人が分かりますが、犯人は獄中で自殺してしまいます。
娘が亡くなったショックで夏枝は病院に入院します。
 そんな妻を見て許そうと思う啓造でしたが、問いただすことも出来ず、思い浮かべると憎しみが募ります。

 嫉妬にかられた啓造は、ある日とんでもないことを思いつきます。犯人の子どもを引き取って妻に育てさせようと…。

 なんという怖ろしい話でしょう!はらはらしながら読み進みました。
 とうとう夏枝が本当のことを知って、夏枝の心に啓造への憎しみが生まれ、娘の陽子(犯人の娘)を以前のように愛せなくなってしまいます。

 夏枝と村井を疑うということから、啓造が悩み苦しみ憎んで、とうとうとんでもない決断をしてしまうこと。
 1つの感情から端を発した1つの行動からこんな悲劇が起こってしまうということが、人を信じたり、わかり合えたりすることの難しさとか、相手の行動を自分の基準で判断することの怖ろしさとか、そういうことを考えながら読みました。

 登場人物の中で私が1番好きなのは、夏枝の友人の辰子です。
言葉はサバサバしているけどとても温かい女性です。小さい頃にこういう大人がそばにいてくれたらよかった、なんて思いました。
 陽子は辰子の家に遊びに行くのが好きだったのに、夏枝に嫌がられて行けなくなってしまうのですが、私も好きだったことを禁止されてできなくなってしまったことがあったので、思い出して悲しくなりました。
 私は自分の好きなことをして喜んでいる人を見ると嬉しくなるけど、腹立たしいと思う人もいる。それがどういう心境か想像してみると、もしものすごく嫌なことがあって気分が沈んでいる時に、すぐ横で好きなことをして楽しそうにしている人がいたら、腹立たしいと思うかもしれない。そうだなぁ、そう思うだろうなぁと思いました。

 読んでいて、破滅的な何かがきっと起こるのだろうという不安がずっと付きまとっていました。私が思っているより幸福になってほしいと願いながら読み続けました。

 読み終わって、殺人犯の子どもかどうかなんて関係がないはずなんだ、親のしたことは子どもには関係がないのにどうして子どもが罪を感じなくちゃいけないんだ、と思いました。
 この物語の中で、「誰だって先祖をたどれば人を殺した人の一人や二人はいるだろう。」という内容の言葉が出てきますが、ほんまにそうやで、と思いました。先祖をたどれば同じ人につながるのかもしれないし、そう考えれば血のつながっている人とつながっていない人を分けるのもあいまいな区分けでしかないように思うし、血のつながりってあんまり気にしなくていいことなんだな、と思いました。

 この小説のテーマは「原罪」です。「すべての人間が生まれながらにして背負っている罪のこと」
 私は自分に対して、「生まれながらにして罪がある」と考えたことがなかったので、そう考える人がいることが驚きでした。
 自分がしたことじゃないことに罪を感じる人がいて、自分がしたことに罪悪感を持たない人もいる。人間て不思議だ。


ずっと私のPCバグってリンクが貼れないと思ってきたのですが、枠内のボックスに貼るんじゃなくて、そのままテキストに貼るように仕様が変わっただけだったようです。この3か月ずっとできないと思い込んでました…。普通に貼れました!



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