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最近読んだ本の話 vol.115

 「最近読んだ本の話」の第115弾です。昨日から金木犀が香りはじめました。もう秋だなあ。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。

1、村雲 菜月『もぬけの考察』

第66回 群像新人文学賞受賞作!
この部屋の住人は、みんないなくなる? 都市の片隅にあるマンションの一室、408号室に入れ替わる住人たち――。奇想天外な物語が、日常にひそむ不安と恐怖を映し出す。

Amazonより引用

 めっちゃ怖いです。この部屋の住人がいなくなるんです!1話目は、会社にある日行かなかったら誰にも気づかれなくてそのまま行くのをやめて部屋に閉じこもっている女性の話なのです。この人は自分の部屋に現れた蜘蛛を捕まえてビンの中に閉じ込めて殺してしまうんですが、自分も同じように部屋に閉じ込められて、最後はたぶん同じような運命に…。そして誰もいなくなった部屋に2話目の主人公が引っ越してきます。2話目も怖い展開で、誰もいなくなった後、3話目の住人が引っ越してきます。旅行に出かける友人から文鳥を預かってくれるように頼まれるのですが、世話をするのが大変で鳴き声も耐えられなくなって、布をかごにかぶせてクローゼットに長時間入れたままにしてしまうんです。それでとんでもないことが起こってしまって…。恐ろしいです!4話目の「もぬけの考察」でその現象が起こるようになったきっかけがわかりますそんなことが!いや~怖かったなあ。

 

2、村上 春樹『街とその不確かな壁』

魂を揺さぶる村上春樹の<秘密の場所>へ――6年ぶりの新作長編1200枚!
十七歳と十六歳の夏の夕暮れ……川面を風が静かに吹き抜けていく。彼女の細い指は、私の指に何かをこっそり語りかける。何か大事な、言葉にはできないことを――高い壁と望楼、図書館の暗闇、きみの面影。自分の居場所はいったいどこにあるのだろう。<古い夢>が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された「物語」が静かに動き出す。

Amazonより引用

 めっちゃ楽しみにしていた村上春樹さんの新刊(4月発売)をやっと読めました!
 主人公は17歳と16歳の男女で、2人はエッセイコンテストの受賞式で出会います。女の子が夢で見た壁に囲まれた街の話を、男の子は聴いて質問をしたりする、そういう2人だけの時間を大切にしています。その高校時代の話と、壁に囲まれた街の中にいる2人の話が交互に繰り返し描かれていきます。
 なぜ街の中に入ることができたのか、2人に何があったのか、気になりながら、早く先を読みたいようなもったいないような気持ちで読み進みました。壁に囲まれた街の中にいる主人公の男性は、街に入る時に引きはがされた自分の影を助けようとして、気が付くと元の世界に戻っています。仕事を辞めて、福島県にある小さな町の図書館長になるのですが、不思議なことが次々と起こって…。
 いつまででも読んでいたいと思いながら読み終わってしまいました。読み終わってからも謎を解くヒントがどこかにあったのでは?と気になってしまいます。読めてよかった!


3、一色 さゆり『カンヴァスの恋人たち』

私は、幸せになるために芸術をやるんです。
碧波市の美術館に勤める学芸員の貴山史絵は、80歳の女性画家、ヨシダカヲルの展覧会を担当することになる。ヨシダは美術業界から一線を退いたあと、山奥のアトリエでひとり絵を書き続けていた。担当になった史絵は、東京で働く恋人との将来や、職場での人間関係、学芸員としてのキャリアに悩んでいた。今ではほとんど無名と言っても良いヨシダの展覧会開催に疑問を抱く史絵だったが、ヨシダとの交流を重ねるうちに、その不思議な魅力と、ひとり筆をにぎりつづける生き方に魅了され、自身も次第に変わり始める。
展覧会の準備に奮闘する一方で、史絵はヨシダの過去が気掛かりだった。一時は戦後の女性画家として名を上げていたにもかかわらず、なぜ表舞台から消えてしまったのか。ふたたび絵を描き始めるまでの空白の10年間に何があったのか。ふたりが心を通わせたとき、ヨシダが語るのは、秘められた愛についてだった――。

Amazonより引用

 主人公は碧波市の美術館に勤める学芸員の貴山史絵です。正規雇用になりたいけれど枠が少なくてなかなかなれず、同期の男性職員は正規雇用になり仕事を押しつけてくるし、長く付き合っている恋人は、自分と結婚して仕事は辞めてもいいんじゃないかと言うし、結婚して出産したいなら年齢的にもそろそろ真剣に考えないといけないし、いろいろどうしよう!と悩みの中にいる主人公は、地元碧波市の出身で今も絵を描き続けている80歳の女性画家・ヨシダカヲルの展覧会を担当することになります。ヨシダの工房に通って話をしたり一緒に時間を過ごすうちに、史絵はヨシダの描く絵や生き方に魅力を感じ惹きつけられていきます。
 展覧会開催までの準備などが詳細に描かれていて、そんなことは考えもしないでただ美術館に見に行っていただけだったので、他の美術館に貸出依頼した作品の納入の時には、立ち会って元々ある傷と運搬途中で新しくできた傷のチェックとかもするんだなあ、と感心したりしました。
 現実にあったら見に行きたい展覧会です。日本在住の現役作家の回顧展ももっと開催してほしい、と思うんだけど、なんで外国からわざわざ作品を取り寄せて開催する展覧会が多いんだろう?入場者数が少ないと採算がとれないからなのかな?借りる料金も運搬費もめっちゃ高そうなのにそれでもそっちの方が採算とれるんだろうか、不思議だなあと思ったりしながら、いろんな思いがたくさん込められた物語を読めてよかったです。


 10月になって涼しくなったのに、私のいる場所は今も結構暑いです。他の人は暑がっていないので私の体温が上がっているのか?最後までお読みくださってありがとうございました。

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