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月曜モカ子の私的モチーフvol.249「VILLA MEDISIS」/ルネサンスの香り」

十年ぶりの書き下ろし単行本「宵巴里」の刊行を来週に控え、宵巴里関連のことと店の運営以外に何かをするゆとりがない、だけど何かを書きたい。
何かを書きたい、というよりは一切新刊を出さなかった間も「月モカ」を読み続けてくれたFB小説家ページのフォロワーの皆様に何かしら「ここでしか読めないもの」を届けたい。
そんなわけで本当は6月末から書きたいと思っていたエッセイらしいエッセイを今書きたいと思う。

6月29日(水)に常連さんの紹介で中目黒のロミロミのサロンへ伺った。
中目黒という場所が、懐かしき麻布十番時代を思いださせてくれてノスタルジイ。そこで香りを選ぶステップがあり3種類の中から1つを選んだ。

ロミロミをやっているMarieさんは本業は根っからのヒーラーさん。
自分の親しい友人であるスピリMと同じくらいの能力の方だなと思ったけど、それを推さずに「ロミロミ🌺」を推してるあたりが非常に地続な感じで信頼できると我考えた。

全ての施術をお任せして「フェイシャル」に入った時に、とてもその選んだ香りが心地よくてその旨をお伝えしたら「こちらはハンガリーの王室で使われる西洋ラベンダー(ジャスミンだったかな!?)なんです。多分モカコさんは(過去性が)王女さまなので、馴染みがあるかと」
と言われまして、笑、その後で言うのは大変はばかられましたが王女気取りのモカコは「懐かしい香り💓」と答えました。笑。

こちらはモカコ王室気分ですが、気分に合うものは全て”ダリ”の作品でした。引用です。

ところで話は遡るんだけど、わたし2016年に非常に過酷な翻訳補佐の仕事をしたことがあって、わたしの仕事は日本語をより美しく表現する仕事だったんだけど、まず翻訳の域を出てはいけないとか、原稿料は最終納品の文字数で払うとか、笑、ありまして、改行でもスペースでも1行あきでもその分含めて稼いでいた自分としては肌感でいつもの10分の1くらいの報酬に感じたんだけど、結果それが翻訳のミカさんとのギリシャの旅につながるので人生無駄はないわけだ。ところでその翻訳本がさ、また活版印刷で、担当作品なので一冊の謹呈もしてもらえなかったのだけど(1冊1万だったんだって)

この本を発行したのがパリの陶器ブランド「アスティエ」でね、
たまたま神楽坂に住んでいた時に、新潮社がやってた「ラガグ」でアスティエのポップアップがあって、その時以来、激惚れしてずっと買っているお香がある。

Asitier dr villatte/VILLA MEDICIS(Paris)

先日うちの栞が「モカコさんが愛用してるお香って」という話から彼女もアスティエで香りを取り寄せ、その際に、アスティエのラインナップのノートを二人で細かく調べたことがあった。その時にこの「VILLA MEDISIS/ヴィラメディチ」に関して石というか石畳というか、それを含む「ローマのヴィラの香りなんですよ」とあった。わたしは自身をアトランティスの末裔と言ってるだけあって、やっぱり木より石にシンパシーがあって、惹かれる。
だからなるほど「石の香りか!」ってその時も思ったんだけど、
そのMarieさんが言う「ハンガリーの王室ってどんな感じですか」と訊くと「(それは多分敷き詰められた方の)石畳の感じで中庭がある感じ」とおっしゃっていて、それはなんだか「VILLA MEDISIS」とも通じるし、わたしが2011年に書いた短編「月子とイグアナ山椒魚」の王妃のいる城とも似ている、と感じた。

巨石大好きモカコです。こちらはアラビアのフジエラ(2015)

↑すまんデジタル配信を探したが、実業之日本社ではやってなかったんだった!

それで帰宅してから調べたんだね、なぜ自分がローマのあのヴィラになぜ途方もなく惹かれるのか、知りたくて。

ヴィラ・メディチ/at フィレンツェ

それでわかったのが、わたし的には目から鱗なことが多かったんだけど、
まず

①メディチ家はメディスン、つまり薬屋で財をなし、最終的には銀行も持つくらいの大富豪になった。
②メディチ家は砦として使われていた城塞を買い取り、メディチ家の別荘にし、芸術家のパトロンとしてその別荘をサロン化した
ルネサンス期の重要なパトロンの一人としても知られ、美術ではフィリッポ・ブルネレスキ、ミケロッツォ、ドナテッロらを庇護した。
④また、古代ギリシャの哲学者プラトンの思想に心酔して、私的な学芸サークルプラトン・アカデミーの基礎を作り、人文主義者マルシリオ・フィチーノにプラトン全集の翻訳を行わせたことで、ルネサンス期にネオプラトニズム(新プラトン主義)を刻印した。

wikipediaより

まず ①自分は医療関係の会社をやっている父の元に生まれ、父は数年前までは「あやめ薬局」という薬局も経営していた。

次に②自身は芸術的サロンというものに強い憧れがあり、親友とも「Salon de Utatane」という小芝居仕立てのジャズライヴをずっと行って来たし、
昭和のサロン女主人と言える長谷川時雨さんの評伝も書いた。現在のお店イーディも要はInnocence Define(純潔定義の)アートサロンだと思っている。

③に関しては小説家モカコがまだ道半ばゆえ、誰かをパトロンするほどの余力がないが、

④プラトンの思想に心酔という意味ではプラトンの思想を下敷きに作られた映画「Hedwig and angry inch」をオマージュして「誰かjuneを知らないか」という作品を刊行したくらいのプラトン主義、なんならアトランティスとエメラルドタブレットについて最初に言及したのはプラトンなんであるからして、

という気持ちになって、何やら大層な奇縁を「フランスで作られたフィレンツェの香り」に感じたわけなんである。

もう一つわたしが感動したのは「ルネサンスの立役者」という言葉から「ルネサンス」という言葉の意味を改めて調べた時である。

わたしは「ルネサンス」を「アール・ヌーヴォー」のような「新しい時代のうねり」とか今よく言われている「風の時代」的な感じに捉えていたのだけど「ルネサンス」の言葉の意味は

「『再生』『復活』などを意味するフランス語であり、一義的には、古典古代(ギリシア、ローマ)の文化を復興しようとする文化運動。14世紀にイタリアで始まり、やがて西欧各国に広まった(文化運動としてのルネサンス)。また、これらの時代(14世紀 - 16世紀)を指すこともある(時代区分としてのルネサンス)。日本では長らく文芸復興と訳されており、ルネサンスの時代を「復興期」と呼ぶこともあった」

wikipedia「ルネサンス」

とあった。なんたること!!!
わたしがまさにこの根津の路地でこの3年間全力で行って来たこと、
それはまさに「この箱における文化の復興」「何かしらの奪還」つまり「ルネサンス」ではなかったか。

復興や再生、復活という言葉の奥には虐げられて来た日々がある。
この場合おそらくそれは、VILLA MEDISISが城塞であったことも鑑みて「戦争」であり、イーディの箱の場合は「荒廃」であった。

そこに無意識にでもフィレンツェのヴィラの香りを、ルネサンスの香りを灯しながら店を続けて来た自分は「いい線行っていた」んじゃないかと思った。

根津の路地はフィレンツェではないし、絢爛なヴィラもない。
けれども我々が毎夜かわす杯にその香りは確かにあり、
全力で生きていればいつか令和ルネサンスの立役者として、見えない石碑に名が刻まれるだろう。
「宵巴里」発売まであと8日。

すり鉢の底は地平線まで到達しました、2022。

左から、モカコ/壷井さん:編集/松本さん:装幀/幸子さん:装画/(まもなく!!)

<モチーフvol.249「「VILLA MEDISIS」/ルネサンスの香り」/ 2022.7.25>

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☆モチーフとは動機、理由、主題という意味のフランス語の単語です。
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