MaaSは47都道府県に広まっているのか
2019年度からスマートモビリティチャレンジ(以下、SMC)が始まったことで日本各地でのMaaS実証が実施されてきた。
そこから約3年が経過し、MaaSは47都道府県すべてに広まっているのか、という疑問がふと生まれたので、考察してみることにした。
(「MaaSって何?」という方はまずはこちらへ)
2019年度(令和元年度) SMC案件
全28案件の実施都道府県
2020年度(令和2年度) SMC案件
全52案件の実施都道府県
2021年度(令和3年度) SMC案件
全29案件の実施都道府県
この時点でいずれの年度も対象都道府県に入っていないのは、以下15県
青森、秋田、岩手、山形、千葉、山梨、岐阜、奈良、和歌山、岡山、徳島、高知、山口、長崎、熊本
企業が推進する取り組み
上記15県のうち、企業がMaaSに取り組んでいるところが含まれているので、まずはそれを確認してみる。対象にするための定義として「MaaS」という単語がプロジェクト名や協議会名に入っていることを基準としたい。
JR東日本(TOHOKU MaaS)
JR東日本が実施するTOHOKU MaaS対象エリアに含まれており、青森、秋田、岩手、山形の4つはMaaS対象県である。
トヨタグループ(my route)
TFSが運営するMaaSアプリ「my route」が熊本県水俣市でサービス提供しており、熊本はMaaS対象県である。
NTT/NTTドコモ(千葉市幕張MaaS)
今月から「千葉市幕張MaaS実証事業」が始まっており、千葉はMaaS対象県である。
電通国際情報サービス(くるり奈良)
2019年に、インバウンドに焦点を当てた観光型MaaS「くるり奈良」が実施されており、奈良はMaaS対象県である。
JR西日本(setowa)
中国地方はJR西日本が提供するMaaSアプリ「setowa」の対象エリアに含まれており、岡山、山口はMaaS対象県である。
ちなみに、四国も一部含まれるが、徳島、高知は執筆時点で対象外である。
KDDI(くるくるなると)
KDDIが観光庁の補助事業として取り組む「くるくるなると」は観光型MaaS実証実験と位置付けられており、徳島はMaaS対象県である。
ゼンリン(長崎市 観光型MaaS)
正式に始まるのは22年度春であるが、「STLOCAL」が間もなく開始予定であり、長崎はMaaS対象県である。
自治体等が推進する取り組み
次に、自治体等が独自にMaaS補助金を出している地域もあるので、まずはそれを確認してみる。企業が推進する取り組みと同様に、対象にするための定義として「MaaS」という単語がプロジェクト名や協議会名に入っていることを基準としたい。
やまなし観光MaaS(シンゲンランド)
「やまなし観光MaaS事業」として山梨県が公募し、JTBが採択されており、
山梨もMaaS対象県である。
紀伊半島MaaSプロジェクト(キーパス高野山)
紀伊半島外国人観光客受入推進協議会が観光庁の補助事業として取り組む「キーパス高野山」は、紀伊半島MaaSプロジェクトとして推進されており、和歌山はMaaS対象県である。
さて、残ったのは、
ここまでで残ったのは岐阜、高知の2県。
これらの地域については「MaaS (県名) 実証」でググってみて、MaaS取り組みが出てくるか、確認したい。
岐阜
検索上位に「岐阜県地域公共交通活性化推進事業費補助金」の交付募集が出てくるが、対象となる案件が出てこないので、もう少し調べてみたい。
企業のMaaS取り組みとして、以下の記事が引っ掛かった。
高知
「MaaS 高知 実証」で検索してみても、実はMaaSっぽい実証は出てこない。しかしながら、少し調べ方を変えてみると、スマートシティプロジェクトの一環で「自動運転技術利活用による地域公共交通システムの構築」(※PDF) に取り組んでいることが分かった。
まとめ
調べてみてわかったこと
✅「MaaS」はほぼ日本全国で取り組みが行われている。
✅MaaSと名の付くプロジェクトが行われてないのは、高知県のみ。
(調べ方の問題もあるので、見つけた方は教えてください。)
✅ただし、SMC案件はMaaSと付いているかどうかの検証はしていないので、もう少しちゃんと調べる余地あり
✅MaaSと付いていても、「それってMaaSなのか」と思われる案件もある
「MaaS」という単語がバズワード化していて、本質的な意味を伴って広まっているとは思えないが、地域交通や観光の課題に光があたり、その解決に様々なプレイヤーの叡知が注がれているという点では良いことだと思う。
個人的には、toC向けのチラシやサービスに「MaaS」を押し出す違和感をいつも感じている。ユーザーにとってMaaSかどうかは関係なく、便利でお得なサービスかどうかが重要だと考えている。
とはいえ、BtoBの世界では共通用語がある方が物事が進みやすいのも事実で、日本全国でもっと「MaaS」の取り組みが進んで、地域交通や観光がより良いものになるといいなと思うし、自分自身もそういったプロジェクトにしっかり関わっていきたい。
以上
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