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ファン(に推される)マーケティング〜オタ活から学ぶマーケティング〜

こんにちは、春は別れの季節というのをひしひし感じている私です。
というのも、先日私が非常に応援していた、所謂「推し」が活動引退を発表しました。

もちろん寂しさもありますが、新生活にあたって新たな道に進むことを決意した彼の背中を押すことが真に「推す」ということなのではないか…としみじみ考えていました。

さて今回のお話のテーマは、「推される」マーケティングについてです。

1 「推す」というパワーワード

皆さんは「推す」という言葉をご存知でしょうか。

「推しメン」(推しているメンバー)が由来であり、1つのジャンル内でもっとも好んでいる人物や物事を応援することを指して言う言葉です。
巷ではAKB48の登場によって世に広まったといわれているそうです。

AKB48には実際こんな楽曲もあります。


「推す」および、その対象になる人物や物事のことを表す「推し」という言葉を実際に使用している身としては、辞書的な意味や字面以上のメッセージを含んだパワーワードだと思っているのですが、そのすごさを伝えるのことは実に感覚的で非常に難しいです。

それぞれの「推し」に対する「推し方」は十人十色なので一律的な意味合いやイメージへの収斂はナンセンスなのかもしれませんが、日常会話で触れたりオタク経験があったりするわけではない方々に向けて、その感覚がわかるよう私なりにちょこっとご説明をしてみます。


「推す」という行為をとてもわかりやすく表現しているこんな曲があります。

5人組邦ロックバンドのキュウソネコカミの楽曲ですが、最後の歌詞に「生きていて良かった」というフレーズがあります。


一方で地下アイドルを応援する熱心な女性ファンを描いたこんなアニメも。

タイトルは『推しが武道館いってくれたら死ぬ』

相当センセーショナルなタイトルですが、これも「推し」への思いを一言で言い表していると思います。

ちなみに公式サイトに書かれているコピーは「きみのために生きてる」。
こちらも大変わかりやすい。

両者に共通しているのは、「推し」を応援する者たちにとって「推し」の存在は生死やその価値を左右するかのごとく、心揺さぶられるものであるということ。

生活の中心になってしまうほど夢中になり、時に強く胸を打たれたりしながら、ファンでいることを誇りに思い全力で応援するということ。
大げさではありますが、それを「推す」ということといえば少しお分かりいただけるでしょうか。

2 ファンマーケティング

で、「推す」や「推し」という言葉を長々説明してきたわけですが、ここからは打って変わってマーケティングの話をしたいと思います。

すでにファンマーケティングという考え方がありますよね。

ここで言われるファンとはロイヤルカスタマーのその上をいく存在で、企業のミッションへの共感やブランド指名買いなどもし、さらにその製品の良さを友人知人に勧めたり、その友人たちを巻き込んで共にリアルイベントに参加をしたり店舗を訪れたりすると期待されています。

さらにファンたちはSNSで製品やイベント、店舗について投稿をし発信をしていくなど、やがて世の中へもその魅力をどんどん伝えていってくれる。

そういう「優秀」な顧客をファンと言います。

オススメや口コミといった他の消費者の発信は通常、企業本体の広告活動よりもリアリティがあるものだというイメージがあります。
インフルエンサーが勧めるコスメを選んで買う心理と一緒です。

推し1

引用:CNET JAPAN『熱狂的な“ファン”を育てる「ファンマーケティング」のコツ--よなよなエールやH&Mが語る』
https://japan.cnet.com/article/35136255/


ビジネスの様々なシーンで引用される「パレートの法則」的に言えば、「売上の8割は、全体に占める2割の顧客がもたらしている」と、そういう理論のようです。

つまり熱心なファンたちは売上を生み出す、大事な存在であるのです。

推し2

引用:Techfirm Blog『新規顧客を連れてくる! ”ファンベース“のマーケティングに必要な要素』
https://www.techfirm.co.jp/blog/fan-based-marketing

実際にファンマーケティングでの成果で有名な企業といえば、「よなよなエール」やあの猫のパッケージが可愛らしい「水曜日のネコ」でおなじみのヤッホーブルーイングなどがあげられます。


3 ファンが推したくなるマーケティング

大好きな製品・企業を応援したくて様々な形で貢献しようとするファンの行動は、オタクたちが好きなものを熱心に「推す」のとよく似ていると思います。
(無論、実際に応援と「推す」ということが完全に同義かは、別途議論が必要だと思いますが…)

具体的に言えばサービス・製品を買う、店舗やイベントに足を運びリアルで接触をする、そして周囲にサービス・製品をすすめるというファンの行動は、
オタクでいうところの「貢ぐ(グッズなどを購入する)」「現場に行く(ライブなどのイベントに参加する)」「布教する(「推し」の良さを皆に伝える)」という活動にそれぞれ対応しているのではないか。

となると、オタクたちの「推す」という行動を引き起こす心理から、ファンマーケティングに応用できることがあるはずです。


そんなこんなで調べていたところ、電通報の記事で「推し」の構成要素を分析した記事を見つけました。

こちらの記事によると、「推し」てもらうためには

① 高頻度・中距離コミュニケーション
② ギャップが垣間見れるような、多角的切り口での発信
③ 共感できる背景と努力と達成に並走できるストーリー
④ 楽しそう、かつ平和な空気感
⑤ ファクトに基づいた嘘のない姿

この5つの要素を必要とするようです。

現代では、作り上げられた完璧なスターというよりも人間味が滲み出るような身近な存在を推したいと感じるのでしょう。
実際私もこの条件を見て、大変共感しました。

確かにこの条件を踏まえると、歌唱力もバッチリな美形で大人びた昭和の国民的アイドルよりも、身近なお兄ちゃんお姉ちゃんのようなYouTuberが愛されるようになった時代の変化を表しているように見えてきます。

そして同時に、これを企業に当てはめると、自ずと「推される」すなわちファンがつく企業像が見えてくる気がします。


企業は元来オフィシャルで無機質な経済活動をする組織というイメージがあります。
どこか近寄りがたいような雰囲気です。

しかし一方で近年人間味が垣間見られるようなマーケティングを行う企業が増えてきました。

公式のSNSでの発信は距離の近さを感じさせてくれるし、ユーモラスな広告の仕掛けは固いイメージとはギャップのあるチャーミングさを感じさせられます。

先ほど挙げたヤッホーブルーイングのエピソードは消費者が応援したくなるようなストーリーですし、そこには嘘のない企業の努力そのものがあります。


消費者たちにファンになってもらう、「推し」てもらうためには、企業の発信時やマーケティングを行う際、自らをどう見せるかの工夫による「人間くさい魅力的な姿」の表現が関わってくるのだと私は思います。

つまり従来の企業像から「推される」企業像への変化が求められているとも言えるのではないでしょうか。

(記事:Nakaoka.)

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