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走行距離27万㌔の愛車と900kmを走る旅



今日、4ヶ月住んだ町を去る。

まだ朝8時。お昼の12時にはこのシェアハウスを出なくちゃいけない。今日、僕の後に新しい韓国人の女の子が入ると聞いた。ああそうか、だから「12時までに家を出てね」って指令が来たのか。退去してすぐに新しい子が入居してくるこのテンポの速さ、Netflixで最近まで見てたあのテラスハウスそっくりだ。

終わってないパッキングを再開して、せっせと車に運び入れる。我ながらに手際がいい。高3から始めた引越しバイトは7年目になる。ハウスメイトの韓国人ガールのウニョンが、もうすぐ来るお別れを惜しむように朝からずっと僕の部屋のドアの前に座って、パッキングする僕を見届けてくれる。
キャリーバック1つとリュック1つだけで4ヶ月前ここに来たはずなのに。結局、車のスペースが全て隙間なく埋まってしまった。
違う違う、物量などどうでもいい。
本題に入ろう。僕がロードトリップを企んでいることについて。

実は、オーストラリアでロードトリップをすること、その旅行記を書くことが最近の僕の夢。もうすぐ手が届きそう。いや、今ロードトリップの旅行記を書いているのだから手が届いてる。夢に手が触れる感覚。こんな気持ちなのか。

ロードトリップというのは、車に乗って長距離を移動しながら続ける旅のことを言うんだけど、車を持っている時点でもう旅の準備は整っているようなものだ。やらない選択肢なんてなかった。
だから僕は今日、ロードトリップに行こうと思う。
決めた条件は、"目的地はSydney"。ただそれだけ。

まず1つ、もう既に大問題なのだが、これからSydneyに戻るというのに住む家が無い。かなり妥協しない限りは、帰ってすぐに家が見つかるとは思えない。
今、オーストラリアにかなりの数のワーキングホリデーワーカー達が押し寄せている。彼らはコロナのせいで、長い間足止めを喰らっていたんだけど(僕はタイミングが良かったから待たされることなく、予定日通り入国できたんだけどね)、ようやく去年あたりから徐々に門が開き始めて、最近になってようやく門が完全に開いた。それは良いことなのだろうけど、コロナ禍で多くのシェアハウスが潰れてしまったらしい。そういう訳で今、住む人達の数と家の数が全く噛み合ってないのだ。「もうどこの家もいっぱいだよ」ってどこの誰に聞いたって全く同じ答えが返ってくる。詐欺や、サイトに掲載されている家の写真がフェイクだったりすることも珍しくない。住んでみたら立地が悪くて不便だとか、シェアメイトの治安が悪くて信用できないなんて事もあり得るから、入居する前にちゃんと自分の目で確認する方が未来の自分のためだ。家の争奪戦に勝つ為に、内見の日をなるべく早い日にセッティングするべきなんだろうけど、この日までに帰らなきゃって時間に追われるようなロードトリップは絶対にしたくなかった。
考えた結果、考えるのをやめた。考えたってSydneyに着かない事には話が進まないしさ。着いてからまた考えよう。ゲッターズ飯田が「今年の金の鳳凰座は運気が良い」って言ってたし。そして、僕は物事はなるようになっていくことを知っているから。

まだ家を追い出されるまで時間は十分ある。とりあえず、今日の夜泊まる場所を探さねば。何も無くなったベッドの上に腰かけてケータイを開く。そうだ、丁度近くに行きたい街があったんだった。
"Byron Bay(バイロンベイ)"と検索欄に打ち込む。ここはSydneyと同じNew South Wales州(ニューサウスウェルズ州)にあるオーストラリア最東端の小さな港町で有名な観光地だ。僕が今日まで住んでいたQueensland州(クィーンズランド州)の中でも有名な、Gold Coast(ゴールドコースト)というビッグシティを通り抜けて更に1時間ちょっと運転すると見えてくる。
僕、オーストラリアに好きなクッキーがあるんだけど、そのクッキーの名前がByron Bay Cookie(バイロンベイクッキー)なんだよね。行きたい理由はただそれだけなの。ちなみにそのクッキーは高いからセールの時にしか買わない。

特にお気に入りの味。ほっぺた落ちる。
メルカリで高額で転売されていました。



「観光地だしホテル高いんやろうな〜」とあまり期待せずにサイトで探していたら安くて口コミも良さそうなバックパッカーズホテルを発見。バックパッカーズホテルは元々泊まってみたかったし、一泊$73(細かく言ったら日本円で6800円くらい)。なんでもかんでも物価が高いオーストラリアだから一泊$100(約1万円)以内で済むなら全然良い。光の速さで予約した。


そろそろ行かなきゃ。2ヶ月半住んだこの家、住みやすくて綺麗で凄く好きだった。シェアメイトの皆んなと何度もバイバイをして、次は1番最初に住んでたシェアハウスの皆んなに会いにいく。あんまり長居しないつもりだったんだけど、「今からNetflixで"First Love"見るからMomoも一緒に見ようよ!」って素敵なお誘いをいただいたらもう断る理由なんて無い。気がついたら長居してしまった。満島ひかりはいつ見ても、いつまで経っても独特で、キラキラが衰えない。佐藤健には興味がない。一緒に人参を投げていたインドネシアの女の子がFirst Loveを大絶賛してたっけ。
Made in Japanを他の国の皆んなから褒めてもらえる機会が本当に沢山あるのだけど何度褒められてもやっぱり嬉しい。
日本ってさ、凄いんだよ。

同じ工場で働いていた、指で数えられるだけしかいない貴重な日本人の友達2人と急ぎ足で最後にランチしに行くことになったので、Netflixの会を途中で脱退して、お気に入りのお店の大好きなハンバーガーを食べに行った。これでもかという程、気が済むまでお互い喋って満足した僕らは「また会おうね」と言ってバイバイした。ありがとう。またちゃんと会おうね。

時計を見たら15時。やばい。まだお別れを言いたい友達がいるのに。てか、その子と連絡取れないし。自分を信じて、多分この家であろう場所にとりあえず行ってみる。一緒に働いていた皆んなは、町に大量に分布しているシェアハウスの中からお互いどこの家に住んでて、誰と部屋が同じかという所まで何故か知っている。情報網が凄い。怖いよお。
風邪を引いて人参投げを数日休んだ日には、丁度コロナが町で流行っていたのもあって勝手に「Momoはコロナらしい」って噂が秒速で広まってた。やめなさい。

しばらくの間、家の前でうろうろしていたら、ラッキーでその友達とばったり会えた。ゲッターズ飯田の言う通り、やっぱり今年の金の鳳凰座は運が良いらしい。
会いたかったのはソロモン諸島出身のカップルのフレディーとテレサ。感情は伝染するって事を教えてくれた2人。だから、いつも陽気な2人と働くのは楽しかった。人参投げに疲れて死んだ顔をしていたら突然「Momooo!! Go go go go!!」と特殊な励まし方をしてくれた。意味わからんくっておもろかったなあ。ありがとう。またどこかでね。ここでご縁があった皆んなにちゃんと顔を見てありがとうとまたねを伝えたいから、会っておかなきゃ気が済まないのよ。バタバタでもちゃんと皆んなに会えて良かった。ありがとう、皆んな元気でいてね。

車が見えなくなるまで手を振ってくれる皆んなをミラー越しに見届ける。ああ、4ヶ月のファーム生活が本当に終わったんだ。実感が全く無いや。
ちなみに、ファーム生活の間で僕の車はクーラーの故障だけじゃ懲りずに、1番需要のある運転席の窓だけが壊れて開かなくなってしまった。だから窓を開けて手を振れない。窓から手を出して「またね!」ってやりたかったのに。さすが27万キロ走ってるだけある。仕方なく開かない窓の代わりにドアを開けて手を振った。ああ、いつか窓も直さなきゃな。
まずは生きてSydneyに辿り着くのが目標。





「優しさ一周論」

ちなみに今夜泊まるバックパッカーホテルのチェックインの時間を18時にしたが今、もう既に15時40分。Boonah(ブーナ)から今日泊まるホテルまでは車で約2時間半かかる。20分オーバーは誤差の範囲って友達のひいばあちゃんが言ってた気がする。ここは海外だ、僕よりも時間にルーズな人の方がきっと沢山いる。
やっと出発したと思った矢先ナビが不調。何もない誰もいない山道に車を停める。誰もこないだろうけど一応ハザードも。少しの間、ナビと闘ってたら偶然、そして唯一通りすがったドライバーのお姉さんと車越しに目が合った。すぐにお姉さんの車が減速し出す。「どうしたんやろ」と思っていたら、お姉さんが車から降りてきて「なんかあった?大丈夫?」と声をかけに来てくれた。「ハザードをたいて1人で停まってるから何かあったのかと思って心配になったの。ここらへん何もないから尚更ね。」だって。もーーーーなんて素敵なんだ!お姉さんに「ナビが調子悪くて止まってただけなん。気にかけてくれてありがとう。良い1日を〜!」と伝えてバイバイした。僕もあんな人でありたい。


これはねオーストラリアに来てから気づいた僕の持論なんだけど、優しさって一周すると思うんだ。僕、昔から自分がした事に対して見返りを期待してしまう自分の事がずっと好きじゃなくて、そのせいでモヤモヤする事がよくあったんだけどさ、オーストラリアに来ても時々「これ僕優しくしすぎじゃない?!損してない?!」って思うような事が起こるんだよね。
でもさ、それって自分がこれまでにそれだけの優しさとか思いやりを誰かから受け取ってたって事なんじゃないんかなあ。自分が気づいてないだけで。事が大きければ大きいほど、自分はそれだけのものを誰かから貰っていた訳で。逆を言えば、それくらい大きい優しさを自分も自分が知らぬうちにお裾分けしていた訳で。
だから、もし困ってる人を見つけたらその人が誰であろうと、事が大きかろうと小さかろうと僕は何も気にせずに目の前の人を助けたらいいと思う。誰かから貰ったものは誰かに返さなきゃ。
それが"優しさ一周論"なんだけどどうだろう。そこに気づいてから、"見返り"って言葉が僕の中から逃げてった。そして今日、また素敵な人から優しさをお裾分けしてもらった。ありがとう。だから困ってる人たち、待っとってね。





「突然大縄跳び大会」

途中睡魔に殺されかけたけど予定通りByron Bay(バイロンベイ)に到着。"Welcome to Byron Bay"の字を見つけたけど、片側一車線の道がただ続いているだけで本当に観光地?と言いたくなる。今のところ何もない。更に5分ほど走ると突然いかにもByron Bayって感じの街が出てきた。「いやどんな感じだよ」って言葉が聞こえてきそうね。なんというか街が若い。さすが観光地と呼ばれるだけあってかなり小さい街なのに、しかもド平日なのに人、人、人。町じゃなくて街って感じ。綺麗なビーチがあって、素敵な雰囲気のカフェやレストラン、サーフショップ、クラブ、雑貨屋、セレクトショップ、本屋がギュッと集まっている。その街を取り巻く若者や家族連れ、サーファー、わんこを散歩中の住人、ロードトリップ中のカップル達が街の雰囲気を更に深く、濃くする。暗い顔をして歩いてる人なんてこの街のどこを見渡してもいない。
遠目からでも分かる賑わいを見てワクワクが止まらなかった。でもまずはホテルにチェックインしなくちゃ。でもなかなかホテルに辿り着けない。誰から受け継いだか分からないけど僕、方向音痴なもんで。
やっと見つけたと思ったら次は駐車場が無い問題。ああ、オーストラリアで車を持つと言うことはこういう事だったな。
ようやく今日うちの爺やが一晩泊まる(停まる)駐車場も、僕が泊まるホテルも見つかった。
実はオーストラリアに来てから自分でホテルにチェックインするのは今日が初めてで、どういう風に話せばスムーズに手続きが進められるかを運転中イメトレしながらずっと独り言を喋っていた。ドキドキしながら、受付に座っているアジア人女性に話しかけたら「あっお名前伺ってもいいですか?」と突然日本語が飛んできた。びっくりした。僕の日本人訛りがまだ抜けてないのもそうだし、アジア人から見たら日本人って分かるんだろうな。僕だって日本人か韓国人か中国人かの見分けは顔とメイクと着てる服で大体見分けがつくもの。
彼女の名前は聞けなかったけど、今年でオーストラリアは7年目になるらしい。僕なんてまだ8ヶ月。彼女からしたら僕は卵子みたいなもんだ。
彼女のおかげでなんの滞りも無くチェックイン完了。こじまんりとしたホテルだと思って足を進めると大きなプールがドーン。そこでスキューバダイビングの練習をしている人達を横目に階段を上がると僕の部屋が見えてくる。今日泊まるのは5人部屋。治安を考えて女子部屋にした。古いドアには不似合いの今っぽいタッチ式のキーボードに、予め伝えられていた4桁の数字を入力してドアを開ける。部屋に入ると連泊しているであろう女の子達の抜け殻が散らばっている。干してある服を見て「アジア人っぽいな〜」とか思いながら、2段ベッドの上が1つだけ空いているのを見つける。昔、兄と2段ベッドで寝てたな。その時も上だったけ。
部屋に、荷物をいれる鍵付きのロッカーがあるのに何故か僕は荷物を布団の中に隠す。本当こういう所だと思う。綺麗に荷物を隠したので、Byron Bay散歩といこう。
手ぶらで初めましての街を散歩できるなんて、最高。

キャンピングカーにインコ。留守番えらいね。
ByronBayの壁はどこもやかましい。楽しくてひたすら壁を見てた。
本屋で会ったお姉さんかわいかった。ズキュウゥン



丁度こちらは今、夏なのでとにかくずっと明るい。夜の20時になっても夕方17時みたいな明るさだ。
チェックインの時に受付のお姉さんにオススメのお店を聞いておいた。近くのピザ屋さんがオススメとのこと。でもなんだか気分じゃなくて、自分から聞いておいて店の前を素通りする。僕はそんな僕が好き。阿部寛の顔くらい濃い1日だったせいか食欲が湧かない。
だから今日は僕の気が済むまで歩こう。
気がついたらビーチに辿り着いていた。綺麗なギターの音とつい立ち止まってしまうような歌声が聴こえたから。ビーチの目の前にある公園の芝生の上でライブ中だ。ポップなんだけど、ゆったりを忘れていない、海辺の街らしい音。その音の先には焼けた肌がよく似合う4人組の青年。彼らを囲む観客。揺れる皆んなと一緒に自然と僕の体も揺れる。綺麗なビーチと綺麗な音、その間に挟まれながら海に吸い込まれていく夕日を見ていた。僕はきっと僕が思うよりも遥かに贅沢をしているんだろうな。

気づいたらビーチに辿り着きがち。綺麗。



ライブの後しばらくして、どういう訳か次は大縄跳び大会が始まった。チョイス渋いな。小学生の時、休み時間に教室でやった大縄跳びなら知ってるが夜の海辺でやる大縄跳びは全然知らない。大人も子供も関係ない。性別も年齢も見た目も時間も関係なくこういう事ができちゃうのはすごく素敵。日本じゃ到底見つけられない景色。やっぱりThis is Australiaだ。

大縄跳び大会 at 9pm


散歩を再開して歩いていたらデニムのチャックが全開だったことに途中で気づいた。目が合うなと思ってたイケメン2人は僕のガラ開きの社会の窓、見たんだろうなあ。次からは有料。

彼らに見られました。
どうせ見られるならもっと可愛いの履いとけば良かった。


ByronBay散策に満足して、ホテルに帰ってきた。ホテルはほんの少し中心部から離れているのだけど、少し脇道に入っただけで、街灯が一切なかった。iphoneの灯りがないとどこを歩いているか全く分からなくなるくらい真っ暗。暗すぎて本当にちょっとびっくりした。灯りが恋しくなって空を見上げたら星空が綺麗で余計にびっくり。ByronBay恐るべし。そういえば、後から知ったんだけど、というかどうでも良いことを今から言うのだけど、この街には信号機が1つも無いらしい。確かに言われてみれば、1つも無かった気がする。

星がいっぱい!キャー!



最後に部屋を出たのも、最初に部屋に戻ってきたのも僕だった。シャワーを浴びに行ったら脱衣所の電気が付かず、暗闇の中でシャワーをした。部屋に戻って、ベッドの中に隠しておいた荷物の安否を確認する。良かった、無事だ。
ベッドに飛び込んで、読むのを楽しみにとっておいた韓国人の皆んなから貰った手紙を読む。友達が持たせてくれた韓国のお菓子の詰め合わせも食べちゃう。手紙っていくつになってもワクワクする。気持ちを言葉にして、言葉を文字にして、それを相手に届けようって最初に思いついた人天才じゃない?一生懸命見よう見まねで書いてくれた日本語で書かれた手紙に泣いた。大事なものがまた増えた。

しばらくして1人、部屋に帰ってきた。多分違うけど多分インドネシア人。僕は部屋の電気をつけずにいたから、彼女は僕がいる事に気づいてなくて、僕を見つけた瞬間飛び上がっていた。「驚かすつもりはなかったんだけどごめんよ。」と謝って、ちょっと話した。内容は薄すぎて覚えてない。「映画見たいんだけどイヤホンなしで見てても良い?」と聞かれたことは覚えてる。僕、どんなにうるさくてもぐっすり寝れるタイプだから全然良いんだけど、人が寝ようとしていてもイヤホンをしない選択肢が最初に来るあたりが海外っぽい。あ、決して嫌味じゃ無いのよ。
無事、僕はその子が見ている映画の音をリスニング教材、兼、BGMにしてグーグー言いながら寝た。荷物を抱きしめながら。ロッカー使ったら良いのにね。
夜中に残りの子達が一斉に帰ってきたのだけど僕の予想は大いにハズレて、帰ってきたのは中国人ではなく、ましてやアジア人でもなくヨーロッパの子達だった。持ち物だけで判断するのはダメよね、ごめんね。




「アジア人が1人で何しにこんな所に」

朝7時過ぎ、僕以外まだ皆んなスヤスヤ眠っている。起こさないように、そーっと、そーーっとベッドから降りて出発の準備をする。誰も起こさずに部屋を出れたと思ったら、使用済みの布団をロビーに置いてある指定されたBoxに返さなきゃいけないらしい。結局、部屋に布団を取りに戻って皆んなを起こしてしまった。失敬。
今日はここらへんのOpshop(オプショップ)を回ってから次の街に移動する予定。Opshopというのは日本で言うところのセカストみたいな場所で、どこにでもある。全体的に日本のセカストよりも安い印象で、そこで売られている物は全て寄付された物で成り立っている。お店毎に支援団体が異なっていて、Opshopに支払われたお金はそれぞれホームレスや子供、患者への支援金として役立てられる仕組みになっている。そこには意味が分からない物もかなり置いてあって楽しい。松葉杖とか、誰かが描きかけた途中の油絵とか、レンズが片方見当たらないメガネとか、本当に何でも置いてある。基本的に服がメインで沢山置いてあるんだけど、掘り出せる時はとにかくやばい。最近そこで見つけたお気に入りのNIKEの古いスニーカーがあるんだけど、もう既に靴底が両側とも取れて消えた。1日履いて歩くと凄い疲れる。靴底がないから何もない所で滑って転ぶ。雨の日履くと靴の中はゲリラ豪雨。でも懲りずに履き続けてしまうのは可愛いから。お洒落はね我慢なの。

NarutoをOpshopで見つけしまい危うく全部買うところやった。
こういう訳わからんのもある。ハエが嬉しそうに周りをブンブン。




もう1つ手が届きそうな夢がある。それはSydneyに戻ったらマーケットで自分のお店を出すこと。服の買い付けの為に各町のOpshopを回ることが今回のロードトリップの1番の目的。僕が"買い付け"なんてワードを使う日が来るなんて。無縁だと思ってた。
さて、2件Opshopをまわった後、近くのカフェでブランチ。オーダーをとってくれたお姉さんが纏う笑顔が優しくて素敵。テラス席に座ってブラックコーヒーとホカホカのハムチーズクロワッサンを食べながら、今夜泊まる所探し。ケータイの画面がクロワッサンの油だらけになったけれど無事見つけた。場所はココから約1時間先にあるMaclean(マクレーン)という小さな町にあって、一泊$127(約1万千円)。うんうん、良い感じ。道中出てくるOpshopをパトロールしながらMacleanを目指すことにする。
途中ビーチを見つけたから、そこでしばらくぼんやりしてた。日記もそこで書いた。外で書く日記が新鮮。
長時間の運転はなるべくしたくないから"1日運転は最長3時間まで"と昨日の僕が決めた。

本とヘッドフォンを持ってきてビーチで
1人過ごす女の子。素敵。
絵になるね。



目的地であるMacleanに到着。この町の印象は、土地を持て余している田舎って感じ。多分オーストラリアの田舎はどこもそうだろうけど。
貫禄のあるホテルで、なにやら歴史ある所らしい(知らんけど)。1階はパブで、2階がホテル。オーストラリアでよく見かける、見た目がどうみたってパブなのに看板にはホテルと書いてある謎が解けた気がした。まだ外はかなり明るいけれど地元のおじちゃん達が既に呑んでいる。「アジア人が1人で何しにこんな所に。」みたいな顔で見られた、気がした。ほっといてよね。
見渡してもバーカウンターとテーブルしかなく、受付はどこかとウヨウヨと漂っていたら、どうやらそのバーカウンターが受付らしい。スタッフの女の子が、チェックインだと気づいてくれて手続きをしてくれた。既に顔が赤いおじいちゃん達を掻き分けて、奥に隠れていた階段を上がる。映画Leonに出てくるレオンとマチルダが初めて会ったアパートのあの階段に似ている気がする。そのまま進むと共用の大きなキッチンリビングとバスルーム。そこを通り抜けると右手に僕の部屋。昨日は5人部屋だったけど今日は1人部屋。気を遣わなくて良いから気楽だ。オーストラリアの良いところはベッドがどこに行っても大体大きいことだ。昨日のバックパッカーホテルは薄情なベッドだったけどね。ちなみにどこの部屋にも古い昔の暖炉が残っているのもオーストラリアあるあるなのかしら。

写真では全く伝わらぬ貫禄。この上に泊まったよ。
部屋の隣にルーフバルコニー。夜風が気持ちよかった。
僕の部屋。外国のドアって何故理由もなくこんなにかわいいのか。



町の偵察と今晩のご飯を探しにきたけど、町に人がいない。僕の地元に似たタイプの田舎だ。見たことも聞いたこともない名前のスーパーを見つけたのでとりあえず入ってみる。うちの地元にもそんなスーパーがある。ちなみに名前はタピス。田舎であればあるほど、スーパーに個性があるから好き。土地柄が分かるような気がする。なので皆んなも海外に行くことがあればスーパーに行くと楽しいと思うので行ってみてね。
ホテルのパブで出しているピザとかビールとかのメニューを自分の部屋からもオーダーできるらしいけど、最近野菜不足が深刻なのでチャージせねば。シーザーサラダとミニトマト1パックと、余計なのは承知ながら、夜食のスナック菓子と炭酸ジュース、水1L、あとパイ生地の間に生クリームだけが挟まっている、味が完全に想像できるスイーツを買った。うーん、余計だ。本当は近くに中国人がやっている評判の良い中華料理屋さんがあったから突撃したけど閉まってた。明日時間があったらお昼ご飯を食べにリベンジだな。スーパーを出ようとしたら、スタッフの女の子がおじいちゃんが買い物した沢山の食材を車に運ぶのを手伝っていた。優しい気持ちになる。国は違えど田舎は人と人の繋がりが強いと思う。だから好きなの田舎。

帰ってシャワーを済ませたらベッドの上に買ったものを全部広げて夜ご飯。それから毎日の恒例になりつつある明日のホテル探し。
無事、一泊$135で明日のホテルが見つかった。
さっきスーパーで調達したパイ生地のスイーツは想像通りで、まさに想像通りの味でした。もうきっと買わない。オーストラリアで食を経験すればするほど日本食の豊かさに気づく。あの価格帯であんなに美味しいの反則でしょ。そして、日本のコンビニスイーツを尊敬します。


「漏れる」

今日は2023年1月17日火曜日。クイーンサイズのベッドで大の字になって爆睡した。この町には3件Opshopがあるみたいなので早々にホテルを出なきゃ。チェックアウトしようと部屋を出て階段を降りると、出入り口に繋がるはずの扉に鍵がかかっている。どうやって外に出たら良いのさ。よく分からず、鍵を握りしめて歩き回っていたら、外の大きなテラス席で朝からティーをしばいているおばあちゃん達がいた。「玄関閉まっとるんに、ばあちゃん達どこから入ってきたん?」と不思議に思っていたら目が合う。目が合って、おばあちゃん達が手を振ってくれた。ダメ元で「部屋の鍵誰に返したらいいかわかる?」と聞くと、「鍵はその部屋をノックしたら中に人がいるはずだから、その人に渡され。それとここから外に出れるからね。」と丁寧に教えてくれた。これだからおばあちゃんってだいすき。あ、もちろんおじいちゃんも。国が変わってもおじいちゃんおばあちゃんがくれる安心感は絶大。お礼を伝えて、手を振ってバイバイした。

オープンと同時に店に入る。田舎のOpshopは安い上に掘り出し物ばっかりだからかなり調子が良い。今日も予想通りアタリだ。そういうわけで手一杯買う、次のOpshopへ、手一杯買う、を繰り返す。
そして次のOpshopに着いて車を降りた時に"ソレ"は起こった。いつも車の下なんか確認しないけど、たまたま車の下を見たら誰がどう見たって緑色の液が漏れていた。地面に緑色の水たまり。割と大きい。車の知識がない僕でもさすがに「あっ詰んだ。」って思った。車好きな父にとりあえず電話をかけたら「ありゃー」と言われた。娘の不安を煽るんじゃないの。

全然嬉しくない。
クーラント液の色の綺麗さにプチ感動(しとる場合か)
丁度近くにおったにゃご。助けてぇ


クーラント液(=エンジンの冷却水)が漏れている。でも水温計の温度は正常範囲内だからまだ大丈夫なはず。とりあえず応急処置で水を足すことにした。見てみたらクーラントのタンクの中はほとんど空だった。昨日スーパーで買った1.5Lの未開封のペットボトルを取り出してタンクに注ぐ。やば、ちょっと入れすぎたな。でも入れてしまったものを出す方法を思いつかない。ごめんね、頑張れじいちゃん。
気付けば4時間もOpshopを渡り歩いていた。一応じいちゃんの応急処置もしたし、ぼちぼち今日泊まるモーテルに向かおう。しばらくガソリンスタンドが無いから隣町で入れていこう。ガソリンスタンドに入って車を停めて、念のためもう一度車の下を確認したら、見たくなかった緑色の水たまり。もうダダ漏れ。なんならまだ車から液が垂れているのが見える。コンクリートの上に溜まっていく緑色の水たまりを他の誰かに見られるのが恥ずかしくて、足で掻き消す。"僕の車、やばいです"って公言してるようなもんだもの。でも1つラッキーなのはここはガソリンスタンド。カー用品の1つくらいストックしているはず。店員さんに聞いたらちゃんと売ってた。緑色のクーラント液をゲットできたし、とりあえず今日泊まるホテルまで運転してからメカニック(車屋さん)に行こう。もう既にそのホテルのお金は払ってあるし。
エンジンをかけたら、数秒経つごとに、水温計の温度がだんだんと上がっていく。泣きそうだった。全然見たくない。応急処置で水を足した時に、水を入れすぎてしまったからなのか水圧のせいで余計に壊れたのかもしれない。この状況で今から2時間先までおじじを走らせるのは到底無理だ。もうなんでもいいからとにかくメカニックに行こう。慌ててGoogleMapを開く。もしガソリンスタンドに寄らずにそのままハイウェイに乗ってたら最悪だった。多分どうしようもなくなって路肩でハザードをたきながら長い時間レッカーを待つコースだったはずだ。
ガソリンスタンドからすぐ近くにメカニックが4つもあった。でも以前の嫌な記憶が蘇る。この間、ボンネットから煙が出たんだけど(焦った)、その時にメカニックに事情を話して、車を見てもらえないか電話でアポを取っている時、話している途中で"Sorry"とだけ言い残して突然電話を切られた事があった。ただでさえ車のこと分からんのに、それを頑張って英語で説明している最中にさ。そこは口コミは良かったんだけど、そんなのは当てにならないと学んだ。それ以降、メカニックに行くのは緊張する。いかにも知識がなさそうな女子が1人で行ったら、見てもらえたとしても大体は修理費をぼったくられる。だとしても今回はそんな事言ってられない。門前払いされたら目の前でスタッフがアタフタするくらい全力で泣いてやるもんね。
数百メートル先にある1番近いメカニックにこれから突撃する。電話で先に断られてしまったら後がないから"突撃する"のがポイント。
水温計の温度をなるべく上げないように今までに無いくらい徐行で運転した。所要時間4分、近。水温計の針は半分から上に上がったまま下がることはない。もう期待はしてない。
着いた。すぐに受付っぽい所を見つけたんだけど、先客がいて取り込み中だった。突撃したはいいけど、どうしようかと受付の前を行ったり来たりしていたら、僕に気づいた自動車整備士のおじさんが"ちょっと待っててね"って感じのアイコンタクトを投げてくれた。
ええ、もういくらでも待たせていただきます。
どう説明するか、出来るだけ状況を正確に伝えられるように英文を書きおこして自分の番が来るのをドキドキしながら待っていた。
しばらくして、さっきのおじさんが「今日はどうしたの?」と声をかけてくれた。
今、Brisbane(Queensland州)からSydneyまで1人でロードトリップをしていること。ついさっきクーラント液が漏れているのを見つけたこと。応急処置で水を入れたけど、クーラント液が漏れ続けていること。途中から水温計の温度も上がり出したこと。今日はまだここから2時間先まで運転しなくちゃいけないこと。
彼は真っ直ぐに僕の話すことを聞いてくれた。すぐに「じゃあ車見てみるから待っててね」と言って車の下に潜り出した。こんなに優しくて、しかもすぐに対応してもらえるなんて想像もしてなかったからとにかくびっくりした。素敵な人もちゃんといるんだ。彼の名前はBarry(バリー)。小柄でキビキビと動く。喋ってすぐに"この人優しいんやろうな"って思った。優しいのもそうだけど、思いやりがあるって言った方がしっくりくる。僕が言葉に詰まっても嫌な顔せずに待ってくれて「君が言いたいのはこう言うこと?」って毎回確認してくれた。「多分そんなに深刻じゃないと思うから、今から2.3時間で修理できると思うんだけど、車の今の状況を一度ちゃんと確認したいからとりあえず30分程貰ってもいい?」と言われたので、終わるまでじっと椅子に座って待っていた。でも30分経ってもまだBarry達は僕の車の周りで何やら忙しそう。少しずつ嫌な予感。しばらくしてBarryが戻ってきたんだけど渋い顔してる。超嫌な予感。「思っていたよりもかなり深刻なんだけど、まずクーラントのタンクに大きなヒビが2つある。それだけならまだ良かったんだけど、ウォーターポンプ(エンジンを冷やす為の冷却水を循環させる機械)も壊れかけてるし、タイミングベルト(ウォーターポンプと一緒にエンジン冷却の循環作用を作る大事なやつ)も交換しなくちゃいけない。でもそれに必要な部品が今ここには無いから取り寄せなくちゃいけないんだけど、今から注文しても届くのは明日になる。だから君さえ良ければこの辺でもう一泊できる?」と。"Yes"と言うしかなかった。他にも予約があるから直るのは早くて明日の15時頃になってしまうとのこと。昨夜、ホテルを予約した時に何で後払いにしなかったんだろう。当日キャンセルだとお金は$1も戻って来ない。でも仕方ない。Barryに「ホテルにキャンセルの電話をしてくるね。」と伝える。日本にいる時から元々電話は苦手だったから、英語での電話は特にしんどい。視覚から得る情報って意外と多いよね。顔を見て話せるのが1番。予想通り、スムーズにはいかなかったけど予約をキャンセルできた。

スバルおじいちゃん入院。



「ゲッターズ飯田の言うとおり」

さて、今日どうしよう。そう思いながらBarryのもとへ戻ると彼がこの近くのホテルを探してくれていた。そこまでしてくれるの素敵すぎない?
「ここかここだったら良いかも。特にこだわりが無いならこの中から選ぶと良いよ。」と近くのホテルを探して、幾つか見せてくれた。
その中からBarryが「ここ最近できた所で綺麗だしそんなに高くないから良いかも。」とおススメしてくれたのでそこにした。そしたらそのままBarryが電話をかけてくれて「お客さんで、車の修理が明日になるから今から一泊、部屋を予約したいんだけど大丈夫?」と軽く事情を一緒に説明してくれた。返事はオッケー。「ここのホテルまで今から送ってくから、車から必要な荷物下ろしておいで」とBarryが続けて言う。こんな事って本当にあっていいんだろうか。
この時から、どうやってBarryにお返しをしようかとばかり考えていた。そう思うくらいに、彼は嫌な顔一つせず、当たり前のように助けてくれた。
車に積んである大量の荷物の中から必要なものだけを急いでかき集めてBarryの車に積み直す。
そういうわけで、今日でおさらばする筈だったMacleanに出戻ることに。ついさっき1人で通って来た道を、次はBarryと一緒に引き返す。ホテルまでは約15分。「オーストラリアに来てどれくらい?」「日本のどこに住んでたの?」「オーストラリアは好き?」「何でオーストラリアに来たの?」と大体の人に何度も何度も聞かれた質問をBarryからも貰う。何度も何度も答えてるからもうテンプレートは出来上がっている。
前回行ったメカニックでのトラウマをBarryにも話すと「当たり外れがかなりあるからね。特にシティーの方に行くと高いしあんまり親切なイメージは無いなあ。」と。もし初めて行ったメカニックがBarryの所だったらそれが普通だと思って彼の優しさや有り難みに気づけなかったかもしれない。だから最初に嫌なことを経験しておいて良かったのかもしれない。
話していたらあっという間にホテルに着いた。「ちょっと待ってて、今スタッフの人と話してくるから。」と言い残して僕が降りるより先に行ってしまった。チェックアウトの時間が11時なんだけど、車の修理が昼に間に合わないから、終わるまで部屋に居てもいいように交渉してくれてたらしい。確かに車が無いとどこにも行けないし何もできない。彼のおかげでチェックアウトの時間は気にせずに、修理が終わるまで部屋に居ても良いことになった。「修理が終わる頃に電話をかけるから。ここに僕の番号が書いてあるから他に何かあったら電話するんだよ。じゃあ明日、修理が終わったらまた拾いに戻ってくるからね。」と名刺に彼の電話番号を書いて渡してくれた。「あ、明日昼頃に一回どんな感じか電話するね。」と付け足してそのままヒュンと行ってしまった。

Barryから貰った名刺。今でも大事にとってある。


車が壊れて悲しいはずなのに、彼のおかげで不思議と悲しく無い。ゲッターズ飯田の言うとおり。
Sydneyに戻ってから僕の好きな日本食を箱に沢山詰めて送ったらBarry喜んでくれるかな。
チェックインを済ませて、部屋に向かう。受付のお姉さんが車が壊れたことに同情してくれた。今日泊まるホテルの外観が、友達が住んでそうな日本のアパートに似ている。オーストラリアと日本の建物は見た目も雰囲気もかなり違うから、建物に日本っぽさを感じることはあまり無い。部屋に入ると中も綺麗。クィーンサイズのベッド、大きなテレビもある。Netflixは無理だったけど、Youtubeならそこで見れるみたい。
そういえば、日本のホテルはアメニティが充実してるからその感覚で行くと困る。歯ブラシがあるのが普通と思っていたから、持って行かなかったら歯ブラシが置いてなくて、シャンプー、リンスすら無くて困まり果てた事がある(場所によってはシャンプー、リンスはある所もあるよ)。
僕的にシャンプー、リンスが無くて歯ブラシがある方が嬉しいのだけど。

写真じゃやっぱり伝わらない日本のアパート感。






「孤独じゃないグルメ」

実はまだ今日何も食べてない。偶然、ホテルから歩いて数分の所に昨日フラれた中華屋さんがあった。今日はちゃんと営業中。メニューがあり過ぎて迷ったけど、炒飯とハニーソイチキンとカシューナッツ鶏肉炒めにした。小学校の給食で時々出たカシューナッツ鶏肉炒めは当時カシューナッツだけを食べてたなあ。
料理が出来るまで40分と言われたので待つ間、隣のスーパーにお菓子を探しに行く。このスーパーも最近建ったみたいで、新しくて大きい建物はこの町からかなり浮いて見える。中に入ってみたらこの町の住人全員ここにいるんじゃないかってくらい賑わっていた。僕は優柔不断なので、食べたいお菓子を決めるのに40分まるまるかかった。でも買ったのはポテチ一袋だけ。オーダーした料理を受け取ってスキップして帰った。
本当に車が壊れたとは思えない。
オーストラリアに来てからはずっと誰かと一緒に住んでいたから久しぶりの1人の時間が楽しくて仕方ない。今日と明日は部屋にこもってグダグダするんだ。料理が冷めないうちに速攻シャワーを浴びてパジャマに着替える。まだ17時。ベッドに食べ物をあるだけ広げて今日最初のご飯だ。Youtubeで"孤独のグルメ"を見ながら五郎さん(=松重豊)と一緒にご飯を食べると決めていた。彼、本当に美味しそうに食べるから一人暮らしの時にいつも一緒にご飯を食べていた。Youtubeで孤独のグルメを検索したけれどCMの切り抜きだったり、模倣作品しか出てこず、見たいものがない。
ようやく見つけた動画で、五郎さんは美味しそうに焼き鳥を食べておられた。一緒にバクバク食べた。しかも五郎さんめっちゃ食べる。彼のおかげでご飯が10割増で美味しく感じる。さっきスーパーで買った、セールしていた高級ポテチも開けちゃう。昨日スーパーで買ったけど飲み損ねた桃ジュースも飲んじゃう。
お腹はち切れるかと思った。炒飯とハニーソイチキンは食べきれなかったので明日の自分のために大事にとっておく。その後は、狩野英孝のバイオハザードのゲーム実況を見てゲラゲラ言いながらOpshopで発掘した服を切って縫ってリメイクしたり、編み物をしたり、最近ハプニングがやたらと多いから最近の出来事を日記に書き残したり。

誰ですかこんな素敵なドラマ作ったの。
どうみても多量。


今、絶賛車の修理中だけど、1ヶ月前にiphoneを新調したばかりだった。コンクリートの上に落として以降、再起不能になった上に今までの全データも一緒に消えた。更に、つい先週、次はそのおニューのiphoneを車のドアに挟んで画面をメシャメシャにした。全米が泣いた。タッチ操作が全くできなくなり1ヶ月間で2回もiphoneを再起不能にした。人参投げで稼いだお金から次から次へと容赦なく飛んでいく。iphoneを壊した時にApple Storeに駆け込んだけど、欲しい機種の在庫を持っている店舗がQueensland州にたった1つしか無く、しかもそこに残っている1台が最後だと言われた。その店舗は家からは約2時間離れた所にあり、そこに連絡して在庫をキープしてもらうか、iphone無しでSydneyまで帰って、着いてから新しいものを買うか、それとも今から商品を取り寄せて1.2週間待ってからSydneyに帰るかの3択だった。畳みかけられ過ぎ、僕。ケータイの無いロードトリップは絶対に渋いし、取り寄せのために1.2週間も予定を遅らせるのも結構渋い。
その店舗に連絡して最後の1台をキープしてもらうことにした。「じゃあその店舗に連絡してくる」と言って消えたスタッフがなかなか戻ってこないから最後の1個も無くなってしまったんじゃないかとドキがムネムネだった。大丈夫だった。
後日、無事ケータイを受け取れたのだけどケータイの件が解決したと思えば次は車だ。今回の修理費はいくらかしら。最近色んなトラブルにリーチをかけられ過ぎているお陰で、想定外な事が起こってもあまり動じなくなった。





「彼氏?」

クイーンサイズのベッドと仲良く寝た。何時に車が直るか分からないから今日は部屋にいる他ない。
そろそろ先に進みたいので、修理が終わるのにどれだけ時間がかかろうと今夜もう一泊ここで、、という選択肢はない。昨晩泊まるはずだったホテルをもう一度サイトで探したけど高い部屋しか残ってなかった。宿泊代は一銭も返ってこなかったし、今夜こそ、そこに泊まると言えば少しくらい安くしてくれないかと思い、ホテルにメッセージを送ってみたが、そんなラッキーは無かったので辞めた。他に良いところが無いかと調べてたら、なかなか古そうな、雰囲気のあるモーテルを発見。建物の形もデザインも独特で素敵。一泊$92。うん、ここだな。
あとはBarryからの連絡を待とう。昼頃に連絡すると言ってたけど連絡がこないから、こっちからかけるとすぐに出た。どうやら忙しかったらしい。「丁度もう少しで車直る所だよ!もう少しで迎えに行くから準備しておいて!」って、彼氏?
車が直るのは15時頃と昨日言ってたのに、今まだ11時過ぎ。当たり前のようにチェックアウトの時間を過ぎてもここにいるけど、それも彼のおかげなんだよね。こんなにあったかい気持ちを貰ってしまったら、あったかい気持ちを返したい。やっぱりSydneyに戻ったらBarryに贈り物しよう。マルちゃん正麺と、源氏パイ、ルマンドはマストだな。

荷物をまとめて出たら、受付に昨日と同じお姉さん。チェックインの時間が過ぎても居させてくれたお礼を伝える。外に出たらBarryの車。タイミング完璧。とにかく彼に感謝を伝えたいのに伝え切る語彙力がなくて似たような言葉しか言えないのが悔しい。「何でそんなに優しいの?」って聞くと「困ってる人がいたら助けるのが当たり前だよ」って模範解答が返ってきた。自分もそんな事サラッと言える人になるんだ。
帰り道は昨日よりも話した。数年前にオーストラリアであった大規模のブッシュファイヤー(山火事)で、彼も山火事がひどかった一部の地域に住んでいたらしい。とにかく火が燃え広がるのが凄い速かったって教えてくれた。山火事でオーストラリア全土の気温が上がって、その年は室温50度の中で皆んなで仕事していたらしい。その壮絶さを想像するだけで倒れそう。
車内に、タコメーターとは別で車のスピードが数字で表示されているモニターが設置されているのが不思議で、「これ何のため?」って聞いたら「スピード違反で捕まってから嫁さんに付けさせられてるんだ。」ってちょっと苦笑いしながら答えてくれた。そんな話をしていたら15分なんてあっという間だ。
車を降りると目の前には僕の車。会いたかった〜〜。Barryから修理箇所や注意点の説明を聞く。「大丈夫だと思うけど、念のため今日の目的地に着いてからでいいからもう一度クーラント液が減ってないか確認してあげて。」と。相場は分からんけど修理費$2000〜$3000(約20〜30万)くらいを覚悟していた。でもBarryの口から出た数字は$1000(約10万)だった。友達がメカニックで働いている事を思い出して、後から聞いてみたら「田舎なのもあるけど、良い人の所に行ったんだね。シティーの方で直したらもっと高いはずだよ。」と。車が壊れて悲しいはずが、Barryのお陰でずっとこころが温かい。悲しさを忘れるくらいあったかい気持ちにさせられるなんて、そんなのなかなか出来ることじゃない。Barryに今伝えられる最大限の感謝を伝えた。
この日「I can't thank you enough. (感謝してもしきれないよ) 」っていう英語を覚えた。
「シドニーまで気をつけて行くんだよ。でも楽しんでね。もし車のことでわからないことがあったらいつでも、何でも、"ねえBarry!"ってメッセージ送っていいからね。」と言って送り出してくれた。大感謝。本当に本当にありがとう。
ここで車を買った日から、麦わらの一味がメリー号を大事にしていたくらいに僕も自分の車を大事にしようと決めていた。だから、またこうやって一緒に走れることがとても嬉しい。ロードトリップが終わったらピカピカに洗車しよう。

最終チェックしてくれています。好き。
凄い丁寧に説明してくれた。好き。





「海が綺麗な街とファンキーな町」

まだお昼過ぎ。このまま今夜のモーテルがある町まで行ってもいいんだけど、せっかくだから友達から聞いたおすすめの場所に寄り道して行く。足止めを食らっている間にタイミング良く「行ってきなよ!」と教えてもらった海が綺麗な街とファンキーな町がある。どちらもまだ通り過ぎてない。ここから1時間とちょっと、更にSydneyの方向に向かって進むとCoffes Harbour(コフスハーバー)という海が綺麗で有名な都市がある。その友達はこれでもかという程サーフィンが好きなんだけど、そんな彼女のオススメなら行くしかない。どこのビーチがオススメかまでは聞かなかったから適当に自分で選んだビーチへ。パーキングに着くと他にもロードトリップ中であろうキャンピングカーやバンが停まっている。天気が良いから皆んな車の上に服を広げて干している。僕の好きな光景。
水着とタオルを膨大な荷物の中のどこに入れたか忘れたせいで海には飛び込めないけど、ハーフパンツに着替えて足だけ浸かりに行く。麦わら帽子を被って、とうちゃんから譲ってもらったフィルムカメラを首にかけて。
ここは川と海がそのまま繋がっているらしく、この地形のことを"河口"と言うらしい。小学生の時に習った気がしなくもない。
小さい公園を抜けて、川に沿って少し歩くと目の前はもう海だ。友達の言う通りだった。「綺麗」という言葉しか出てこない。オーストラリアの海ってどこを選んでも間違いないから凄い。砂浜の砂が柔らかくて、透き通っている海に慣れてしまったけど、ゴミだらけの日本の海を思い出したら日本にほんの少し帰りたくなくなる。オーストラリアだと道路には皆んなゴミをポイポイ捨てるのに、海だけはゴミ一つ浮いてない。砂浜にBBQの抜け殻が残っている事も無い。日本とは真逆。
川と海の境目に辿り着くと、波が色んな方向から来るのが不思議だった。

よく富山駅前におる宗教勧誘と同じタイプの宗教勧誘のおばちゃんがここにも。
ここはおじいちゃんもおばあちゃんも水着を着て海に入るので素敵だなと思う。おじいちゃんに見えん体の締まり。
ここはまだギリ川。
ここはその川の先にある海。
ただただ青い。
綺麗すぎて困る。
初めて見たマリンスポーツ。
波の上を走り回っとって気持ちよさそうやった。
私は貝になりたい。



何がファンキーなのか気になる。
町の名前はBellingen(ベリンゲン)。今いるCoffes Harbourから車で30分。少し内陸側に入るから道もそれなりに緑色で茂り出す。「本当に町なんかあるん?」って思い始めた頃、突然街が出てきた。孤立した町のはずだけど、車を停める場所に困るくらいには人がいる。ようやく車を停めれたので、ファンキーを探しにいこう。
早速今日、生まれて初めてヒッピーを見た。ヒッピーをうまく説明できないので分からない人は調べてみてね(おい)。街の中でホームレスの人たちを見たことは多々あるけどヒッピーは初めてだ。ロン毛、ドレッド、裸足で服もいかにもって感じ。
とにかくこの町は裸足の人が多かった。海の近くに住んでた時も裸足の人を数えきれないくらい見かけたけど、ビーチ帰りかなとか、海が近いからって勝手に納得していた。オーストラリアは裸足文化って元々聞いてたから最初見た時あんまり驚かなかったけどさ。なのでオーストラリアの家の床も絨毯も全く信用してない。みんな外も家の中も区別なく普通に歩くから。足の裏真っ黒なの知ってるよ。

服、雑貨、ビンテージショップ、レストラン、カフェがこの町の中心のストリートに立ち並んでいる。どの店もかわいい。このロードトリップ中に、いくつも田舎町を回ったけどこんなにセンスが良い店ばかり集まっているのは初めて。予想してた通りここのOpshopでも掘り出しまくって腕いっぱいに服を買った。ちゃっかり可愛いリングも見つけたから普段リングはあまり付けないのだけど安かったので自分用に。すぐ指にはめた。かわいい。
ついでにここで今日の夜ご飯も買う。今日泊まるモーテルで中華料理が食べられるらしいんだけど、レビューに「The food was horrible. We won't be back.(ひどい料理だった。もう一生行かねえ)」って書いてあるのを見つけてしまった。気がついたらオーストラリアで食べる料理に期待しないようになった。「美味しくないくせに高いし、なんやねん」ってなる事が結構ある。日本だとメニューに写真が付いてるのが当たり前だから料理のイメージがしやすいけど、こっちは不親切なくらい写真がない。想像と勘と運でオーダーするしかない。メニューにただ文字が羅列しているだけなのでワクワクもクソもない。日本人に生まれて、あんなに美味しいものだけに囲まれていることを当たり前だと思って育ってきたけど、25年間ずっと恵まれてたんだなあ。

スーパーを見つけたから入る。早速ラザニア発見。オーストラリアに来たばかりの時、ホストマザーが作ってくれたラザニアが美味しくて、それからはラザニアの事は信用している。なのでラザニアだけ買った。口コミの良いスペイン料理屋さんを近くに見つけたので行ってみる。そこで見つけたサラダを注文。野菜は意識しないとまじで摂れない。オーダーしてからすぐに作ってくれた。受け取る際、手を合わせて「Thank you」と言うと店員さんも僕の真似をして手を合わせてくれた。嬉しい気持ち。
アンティークショップも見つけた。お姉さんが1人で経営している。昔のキッチン用品から絵画、家具まで何でも置いてあった。全部欲しいんだが。
そこで"Poison(毒)"って書いてあるかわいい小さい茶瓶を見つけて即決した。レジに持って行くと、「これ私も好きなの。かわいいよね!これは昔本当に毒を入れて使われてた物なんだよ。」って。そこに花を挿そうと思っています。だめかしら。
手から溢れる荷物を抱えて車にもどる。ここからモーテルまでは車で30分。良い感じ。
ファンキーな町かどうかは分からなかったけど好きな町だった。

360°かわいいでした。
噂のPoison瓶。
あ、こういう花なんだよ、枯れている訳ではない。




「祝・方向音痴」

僕は道を間違えるのが結構得意なんだけど、モーテルに行く途中、安定に道を間違えた。生まれる時におかんのお腹に方向感覚を忘れてきたって本気で思う。道を戻る手段も無いから突き進んでみたら思いがけず小さなビーチにたどり着いた。道は間違えてみるものだ。
朝からちゃんとご飯を食べてなかったから15時にもなるとさすがにお腹がグーだ。海の目の前に車を停めて、車に積んである椅子を下ろして、小さなクーラーボックスをテーブル代わりに、テイクアウトしたサラダを海を見ながら食べる。外で食べるご飯がいつでも美味しい理由を誰か知っていますか。お母さんの作る弁当が絶対にいつも美味しい不思議も知りたいな。
食べかけのサラダをそっと置いて、日記の続きを書いて。書いて食べて。食べて書いて。ボールペンのインクが途中で切れてしまった。新しいボールペンもこの膨大な荷物のどこかに埋もれている。諦めも大事ね。日記を閉じて、海とサラダに集中する。

また道を間違えたい。


この海の向こうに僕の国がある。帰りたいけど、皆んなに会いたいけどもう少し頑張んなきゃ。皆んな同じ月と太陽を見ている。もしかしたら大好きなあの子と今この瞬間、同じ太陽を見てるかもしれない。同じ月を眺めてるかもしれない。そう思うと本当に少し元気が出る。病んでるわけではない。でも孤独。オーストラリアは通過点の国。僕と同じように母国を飛び出してきた人達がこれでもかという程いる。出逢って仲良くなっても相手にも自分にも滞在できる年数が課せられている時点で必然的に、近い未来、別れがくる。オーストラリア人の皆んなと仲良くなっても僕にはここに最大3年しか居られない。本気を出せばもう少し居られるんだけど、それは僕がしたいことではない。母国から出た僕は結局どこに行ってもよそ者なのだ。多分、だから孤独。僕の居場所はどこなんだろう、この寂しさはナニで、どこから来るんだろうと何度も何度も考えた。でも考えても仕方なかった。自分を助けられるのは自分だけ、頼れるのは結局自分だけ、自分をハッピーにできるのは自分だけ。自分のそばに1番最後までいてくれるのは自分だけ。それなら自分を好きでいた方が絶対に良い。自分のことが大好きだともっと良い。自分が好きな自分でいるにはどうしたらいいか。自分とよーく話して、自分の声を聞いて、何が食べたいか、どんな服が着たいか、どこに行きたいか、誰に会いたいか、何を経験したいのか、何が好きで何が嫌なのか、結局自分はどうしたいのか。自分の声を聞いて自分の願いを叶えてあげること。自分を責めないこと。自分を褒めること。僕は僕ともう数え切れないくらいの討論を重ねてきたのだけど。自分との討論はこういう道を間違えたら小さなビーチに着いた時とか、日記を書いている時とか、知らない街を散歩している時とか、凄い良いんだよなあ。
「ちょっこ風冷たくなってこんだけ?」と自分が言うので今度こそモーテル向かおう。
ビーチを出て数分、次はワラビー2匹に遭遇した。もうそんなに珍しいとも思わなくなったけど、会えて嬉しいから驚かせないようにゆっくり車を彼らのそばに停める。2人とも良いところに住んでるのね。海も森も近くにあって、人があんまりいない。僕もワラビーだったら此処は気にいるだろうな。

しばらく二匹のワラビーと沈黙の時間。



「友達んちのベランダみたいなモーテル」

ワラビーを見送ってからのモーテルまでの道のりは一瞬だった。しつこいくらい植えてあるヤシの木の列に迎えられて、ちょっと不親切な砂利道に車体ごと揺さぶられて、着いた。写真で見るとこじんまりとした所だと思ってたけど広い。受付と部屋は別々の建物になっていた。受付らしき建物に行くと、おばあちゃんが出迎えてくれた。「予約してるMomoだよ」と伝えると、名前、住所、電話番号、運転免許書番号を書く小さな紙を渡された。悪いことできないや。書き終わるとおばあちゃんが一緒に外に出てくれて「あそこらへんに車停められ〜」と教えてくれた。敷地内が結構広くて、部屋の群れが3.4棟ほど適当に並んでいる。言われた所に車を停めて、部屋を探すのだけどまじで見つからない。絶対10分くらいは彷徨ったもんね。お客さんはチラホラ。家族連れだったり、仕事で来た団体だったり、僕みたいに1人だったり。田舎で周りに大きな街もないから皆んな行き場所を失って、特に何もないけどモーテルの敷地内を練り歩いていたり、敷地内のプールに入ったり、外で早めの晩酌を楽しんでいる。
で、僕の部屋どこやねん。ほんまにあるんか。戻っておばあちゃんに聞き直そうかとも思ったけど、敷地内が広くておばあちゃんに案内させるのも気が引けるからやめた。
ようやく見つけた僕の部屋。「これ入り口なんか?」みたいな所からガラガラと扉を開けて中に入ると小さな部屋にギュッと必要最低限の家具が敷き詰められた苦しそうな部屋が出てきた。僕はあんまり気にしないけど部屋がね、苦しそう。僕ね、餃子が好きで、狭い部屋は餃子くらい好き。部屋に入った瞬間に古い匂いが鼻を抜ける。もっとどうしようもない部屋を覚悟してたから意外と綺麗でホッとする。レビューに"モーテルの後ろに流れている川が良い"って書いてあったから荷物を部屋にぽいぽいと放り込んで拝みに行く。神通川(富山県にあるデカい川)(ちゃんと見たことは無い)みたいな大きい川がすぐ後ろに。大雨とかあったらモーテルが水没しそうなくらい近い。ご親切に川の前にベンチが置かれてるのでお言葉に甘えて座っておく。確かにしばらく眺めてたら良い川な気がしてきた。そう思い始めた頃、ラザニアの存在を思い出したので部屋に戻る。戻る前に、Barryに言われた通り、きっちり"Full"のラインまで足されたばかりのクーラント液が減ってないか確認する。緑色の水面はぴったりFullのラインに。ありがとう、ありがとう。

シャワーを浴びてからラザニアを食べた。普通の味。でも普通の味がするのが有難い。それでいいわ、これでよろしい。

この外観を見て即決したよ。お気に入り。
こんな感じで敷地内に部屋がテンテンバラバラ。
どこやわいの部屋。
どこやわいの部屋。パート2
どこやわいの部屋。パート3
敷地広すぎ。
何も注文せず。今更パンプキンスープが気になる。



おはよう。今日はここから更に2時間進んだ場所にあるDarawank(読み方わからん)という町まで行く。そこに今日泊まるモーテルがあるので。
忘れ物をしたら面倒くさいから何回も忘れ物がないかチェックして「お邪魔しました〜」って言いたくなるような、まるで友達んちのベランダみたいな玄関の戸をガラガラと開ける。さっそく今日もOpshop巡りに。

まじで友達んちのベランダ。





「情緒不安定なおばあちゃんとの電話」

近くにあった町のOpshopたちが良くてまたいっぱい買った。ついでに寝袋の下に敷くマットが$15で売ってた。既に一個持っとるけど調子良さそうなので買う。そしたらレジをしてくれたおじちゃんが「いいチョイス!」と褒めてくれた。
その後に入ったビンテージショップには店主のお姉さんとワンコ。お姉さんと言ってもお母さんより年上そうだけど、おばさんって文字にも言葉にするの自分的にあまり好きじゃないので。お姉さん目当てなのか、店内をパトロールしている間、何人かの男性のお客さんが彼女に会いにくる。誰とでも楽しそうに話す彼女。会いに来たくなる理由がわかる気がする。その間僕はワンコにこれでもかというくらい絡んでいた。ワンコはとっても良い子で初対面なのにお腹をみせて甘えてくる。わしゃわしゃ撫でながら、やっと1人になったお姉さんに「今Sydneyまでロードトリップ中なんだよ〜」と話しかけたら「私の友達のカフェが凄く良いからオススメ!」と、買った商品に付いていた値段のタグの後ろにカフェの名前を書いてくれた。
あ、アンクレットを買ったの。めっちゃくっちゃ可愛くって僕用にね。

一目惚れしたアンクレット。
今は本の栞に。


「She is really nice!(彼女本当に素敵なの!)」って何回も言ってたので行かなきゃね。旅の途中で会った人から教えてもらったオススメの場所ってわくわくする。お姉さんとワンコにお礼を言って、お店を出た。
そういえば昨日、ファンキーな街で自分用に買ったリングが指にいないことに気が付く。既にお気に入りになってたから手が届く所全部探してみたけど、無い。どこにも無い。
昨日のモーテルに忘れてきた。あんなに忘れ物チェックしたくせに節穴みたいな目してるのね。わざとらしいほどホテルや誰かの家、もしくは実家に忘れ物をする癖は昔から。わざとじゃないんだよ。忘れ物をしない賢さも生まれてくる時におかあちゃんのお腹に忘れてきた。忘れん坊らしい忘れ物かもしれない。
モーテルに電話したら、昨日のおばあちゃんらしき人が出てくれた。"指輪を忘れたから部屋に無いか探してもらえないか"とお願いするのだけど何故だか言っていることを理解してもらえない。「貴方が何を言いたいのかさっぱり分かんないわ!」って嫌味っぽく言われた。僕、今かなりシンプルな英語を話してると思うんだが。自分の英語をバカにされていると感じるような出来事はそれほど多くはない。でも時々ある。心は丈夫な方だけど、ちゃんと傷つく。でも傷つくだけじゃない、うるせえ!じゃあお前が耳鼻科行け!と思っちゃう自分だからここで生きていけてるのかもしれない。
意図が伝わって、部屋を見に行ってくれているみたいけど何故か不機嫌。バサバサ、ドタドタ、ドンドンと電話越しに大きな音を立てながら、「指輪なんか無いわよ!分かったね?!」みたいなニュアンスで乱暴に電話を切られた。更年期?自分の機嫌で相手や周りをコントロールしようとする人は絶滅して欲しいと日頃から願っているので、通話の切れた画面に向かってそっと中指を立てる。もういいや。あの指輪とはご縁がなかったのね。




「廃遊園地に泊まる」

ちょっと早いけどモーテルに向かう。そのモーテルの近くに街というか島を見つけたからそこを今日と明日で探検する作戦。とりあえずモーテルの近くまで来たけど、今日の宿ではなさそうな、知らない人の家の敷地にGoogle Mapが案内しようとしてくる。その家の敷地が森と繋がっていて、奥の方はどう見ても森。家主っぽい人がガレージで仕事している。でもGoogle Mapがこのままこの森を進むように言ってくるから信じて進んでみるが、かなり怪しい。でもしばらく進む。木がまばらに生え始める。道がどんどん狭くなっていく。死にたくなかったので一旦道を引き返して別の道を探すことにしよう。そう思って来た道を戻ると、さっきの主人とワンコがちょこんと立っている。主人の隣にいたワンコがトットットと僕の車に駆け寄ってくる。あの空気は絶対に僕を待ってる、と思いながら恐る恐る窓を開けて「この近くのモーテルに行きたいんやけどこの道って違う?」と聞いたら「みんなGoogle Mapにここに連れてこられるけど、ここじゃない。そこの道路を出たら右に曲がって、右にもう一つ道路が出てきたらそれも右に曲がって。」と教えてくれた。おじさん、ちょっと無愛想で怖かったけど教えてくれてありがとう。
まだ森に戻らせようとしてくるGoogle Map。その強引さ、ほんと辞めた方がいいよ。

ここに連れてこられてGoogle Mapアインストール
しようかなって思ったよ〜


おじさんに言われた通りに進むと本当に着いた。ここにモーテルがあるとは信じられんけど、廃遊園地のようなものが佇んでいた。どーんって言うよりもずーんって感じ。かつては賑わっていたようだけど今はそんな面影もない。不安85%で道のままに中に進んで行くと"Parking Space is here(駐車場ここやで)"と書かれた新しめの看板が。看板の奥に見つけたモーテルも同じくずーんって感じ。此処、空気が澱んどって雰囲気悪いなって思ったけど、言わない考えない。車が動いてくれて、体をまっすぐにして寝られるベッドがあるならもうそれだけで十分。もし仮に今夜ここで幽霊に会ったとして、その幽霊がめちゃくちゃ何かを伝えようとしてきたとして、でも何を言ってるか英語を聴き取れる自信がないので僕の勝ちだ。

写真じゃ全く怖さが伝わらない。
でもなんだか怖かった。


チェックインしに行くか。あれ、受付無くない?どれが自分の部屋かも分からないし。頭にはてなマークをくっつけながらホストを探すけどいない。多分今、此処には自分だけしかいない。サイトに載っていた番号に電話すると「詳細は全部メッセージで送ったよ!」と。そして「いや、分からんって!」みたいな所からホストのおじそんがひょっこり出てきて、結局どの部屋で、どこに鍵が隠れててどうやって鍵を開けるのか全部教えてくれた。後から、前日にホストから送られていたメッセージを見つけて自分の確認不足を反省。
部屋は沢山あるけどお客さんは多分僕ともう1組だけ。部屋の中も予想通り、雰囲気が悪くてちょっと怖い。荷物をぽいぽい放り込んで、気を取り直してさっき話した近くの島みたいな街を探検しに行く。車で15分ほど。その小さな島のような街につながる一本の細い橋を渡れば辿り着く。
この街にもOpshopがいっぱいあるのを知ってニヤニヤが止まらない。でも今日は営業時間に間に合わんかったから明日パトロールする。今日も恒例の散歩と今夜のご飯探し。この街もちょっとした観光地なのか人が多め。レストランも沢山集まってて目移りする。良さそうなタイ料理屋さんを見つけたので君に決めた!お店で食べていきたかったけど人気すぎて「テイクアウトならできるよ」と言われてしまった。大人しくテイクアウトすることにしてフライドライスとタイサラダ(的な名前やった)を注文すると、もれなくイカフライがサービスで付いてきた。ありがたや〜。タイ料理なのに普通に炒飯頼むあたり僕ってつまんないな。
車に戻る途中、ビーチの横を通ったんだけど建物の屋根にペリカン。初めて生で見たかもしれない。そして、ペリカンがあまりに規格外のサイズでびっくりして転びそうになった。僕が中1の時くらいの体のサイズ感。しかも沢山おる。デカ、怖、帰ろ。
ペリカンから逃げるようにモーテルに帰ってきた。
部屋の中よりも車の中でご飯を食べた方が美味しい気がしたからそのまま車でご飯を食べた。スーパーでしれっと調達してた韓国のスナック菓子を添えて(余計だなあ)。
タイ料理ね、美味しかったよ。美味しいと思えること、有難いね。体が"嬉しいなー!"って言ってる。
そして今日からもう明日の宿を探す必要はないのだ。明日でSydneyに到着する予定だから。嬉しいような、ホッとするような気持ち。明日、パトロールしなくちゃいけないOpshopが沢山あるからもう寝なくちゃ。

炒飯うま!
隠れとるM PeopleのCD、オススメ。





「車ぱやんぱやん」

今日は2023年1月20日金曜日。ロードトリップ最終日。寝れば忘れてしまえることも、寝ても忘れられないこともあるけれど、昨日迷子になった指輪のことは完全に忘れていた。安く物を買うことは寂しいのね、忘れちゃうもの。
今日こそはもう忘れ物をしないと誓って、荷物をまとめて車に積む。絶対に今日は大丈夫。
昨日行った島みたいな街にOpshopが5件。全部回るために"1店舗1時間以内"と今日の僕と約束する。それからこの間ビンテージショップのお姉さんが教えてくれた友達のカフェが道中にあるから、そこにも寄る。それから今日はSydneyまでトータル4時間半運転する。元々1日にこれでもかというほど予定を詰めてしまうタイプなので、いくらタイトスケジュールでも苦しくない。もし時間が怪しくなったら適当にモーテル探してもう一泊したらいいよ。

僕がラッキーなのか、SydneyのOpshopが良くないのか分からないが、有難い事に今日も順調に、なんやこれ!かわいい!を掘り出している。4ヶ月間のファーム生活中に買い付けた服に加えてロードトリップ中に買い足した服が車の中に積み上がっている。車がぱやんぱやん(最近ハマっている表現ぱやんぱやん)(何語)。
テンポよく回れたので、街みたいな島を出て、例のカフェに向かう。
1時間ほど車を走らせてやっと着いたと思ったら、カフェが暗い。今日は営業日で今は営業時間内のはずなんだけど。前に車を停めて、入り口を見るとCloseの文字。わーーん。「あなたの友達にお勧めされてきたんだよ〜」って話したかったのになあ。仕方ない。
この街には珍しくOpshopが無くって(大体1つの町に1つはある)トイレだけ済ませて町を出た。時刻は14時過ぎ。ちょっと旅の締まりが悪い気もするけどここからSydneyまであと3時間50分の運転が待っている。
このロードトリップでトータル18件のOpshopを回っていた。
大人しく帰ろっと。

People in 島みたいな街。
女の子が絶妙に良いところにおって
ちょっとお気に入りな写真。
見つけたビンテージのマッチ達。かわいい。
ここもOpshop。宝探ししとる気持ち。


Sydneyの友達で、僕と全く同じ2003年式のSubaruのForesterに乗っている人がいて、自動運転機能のことを教えてくれた。4時間の運転にこそ自動運転だよね。今から初めて試す。友達が教えてくれた通りに操作すると、ちゃんと自動運転をしてくれるスバルじいちゃん。2003年に既に自動運転ってあったのか。日本車は本当にオーストラリアで人気だけど、人気な理由が分かる。どこをとっても確実に、そして断トツで日本の技術もサービスも群を抜いている。その上、仕事が丁寧。ネックなのは働く側は地獄ってことだけど。だからさ、何回でも、もう何度だって言うけど日本って凄い国なんだよ。その国で生まれた僕らも、実は気がついてないだけで素晴らしいんだよ。だから僕は、日本を出てから日本人であることを誇りに思うようになった。
この国に生まれて良かった。

自動運転というものは本当に楽チンで、アクセルを踏んでいないだけでこんなに体が楽なのかとびっくりした。途中で眠くなって、一度ハイウェイを降りて昼寝。教会の前でスピスピ寝た。1時間も寝ると復活して残りを運転する。

ひたすらまっすぐ。とにかくまっすぐ進む。


ちなみに今夜は久しぶりに会うSydneyの皆んながおかえりパーティーを開いてくれるんだ。なので旅は終盤だけどウキウキだ。
もう1個、ご褒美かと思うくらいの朗報。
ファンキーな町のことを教えてくれた友達から重ねて連絡があって、「一緒に住んでたルームメイトが今日出て行くんだけど、もう家決まった?良かったらうちに来ない?」って。そんなのもう即レス、即答。
そういうわけで、僕はもうSydneyに戻ってから家が見つかるかどうかを考えて眠れない夜を過ごすなんて心配が無くなった。その友達の家にはお邪魔したことがあったし、場所もいい。それに、何より信頼できる。
こんなにカチッとタイミングってハマるものなのね。



夕方6時。見覚えのある景色と見覚えしかない道を進む。もうナビに頼らなくても大丈夫。
ただいま。久しぶり、Sydney。
気がついたら6日間も好き勝手に旅をしていた。
僕の帰りを待ってくれていたお友達に旅の一部始終を話すと「ほらね、ももちゃんラックがあるから大丈夫。」って。
あの6日間の中にたしかにあった。

それから、ホームステイで一緒に住んでいたトルコ人ファミリーのパパから急に連絡が入る。

「Momo宛にモーテルから1通手紙が届いてるよ。中にね、指輪入ってる。」

もうひとつももちゃんラック、あった。



大事な物を失ったようにみえて、結局何ひとつ失ってなかった6日間のロードトリップ。僕の中の何かがまた1つアップデートされた旅。
それから、またこの広い世界の中で素敵な人たちに会った。どこからどこまで感謝をしたらいいのか分からないし、今回もありがとうだけじゃどう考えたって足りないのだけど、本当にありがとう。





Your kindness warmed my heart, nah it still has warmed my heart. I'm filled with your heart.
I decided for myself that I'll give the kindness that I got from you to someone who is in trouble or who needs help.
So I'd like to say  if you run into any kind of situation, you can just help for someone, just give your heart for them.
You might feel " I always give kindness a lot to the other side, just me."
You don't need to worry about that.  Doesn't matter how much you gave, how many times you gave it. Because you already have gotten thoughtful from someone before you knew it.

This world is always filled with love and gratitude and those are sure to go around, and back to us again and again <3


ウマーメシは自分で食べた。美味しかった。
喜んでくれるといいな。
ちゃんと届いた!ありがとう素敵な人!

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