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インクルーシブ教育と、女性就労支援の関係

インクルージョン研究会のあぜみにて、「インクルーシブ教育に関わる人が置かれる環境」というテーマでお話をさせていただきました。私からは女性就労支援の現場で起こっていること、長年の就労支援の経験から感じていることをお話しました。問題提起した内容とその背景をご紹介します。

障害児を持つ親が働くことは、好ましくないことなのでしょうか?

日本では、障害の有無にかかわらず「子供のケアは家族が行うべき」という考えが存在します。そのケアの担い手として、女性が行っていることが多い現状があります。現実として、今でも働く女性の4割以上が出産を機に退職しています。

参考:リクルートワークス「出産離職(2020年11月版)」

障害児や特別にケアが必要なお子さんを持つ場合、預け先の確保が難しいなどで退職するケースも良く見られます。

キャリアコンサルタントは、強みの確認や柔軟な働き方の導入、預け先の確保などを支援し、再就職やキャリアの継続を後押しする役割を担っています。また、自治体によっては施設情報や預け先の情報の提供等を行っている場合もあります。家族だけでなく社会全体で支えながら暮らせるように、社会の仕組みは少しずつ変わりつつあると感じています。

また、家族ケアに従事したいという男性のキャリアとの両立支援も行っています。女性の離職が多いことの裏返しに、男性は離職しにくいという現状もあるのです。

参考:日経DULA「障害児の母の95%は安定した就労ができていない」

  NHK「医療的ケア児の親 “働きたいのに働けない”3つのハードルとは」


私達が、家族に対してできることは何でしょうか?

大人世代として感じることは、子育てに対して「親子だから何でも分かり合えるはず」という強い先入観があったということです。メディアの影響や、子育ての知識不足が背景にあるのかもしれません。実際には、経験を積むことで理解が進んでいくもので、それは家族だけでなく地域や学校関係者、親戚等周りのすべての人にも言えると思います。

最近では、働く場やキャリア形成を時代の変化に合わせて自分で決断する「キャリア自律」の重要性が言われています。人生100年時代と言われ、70代・80代まで働くかもしれない時代です。

従来の企業内で昇進していくことを目的としたキャリア形成だけではなく、途中で中断して復職、本業と副業、フリーランス、起業等、多様なキャリア形成の在り方が必要となっているのです。また、長時間労働の是正や在宅勤務の導入は、働くことへのハードルを下げる要因にもなっています。

参考:東京都 テレワーク実施率調査2021

まずは、働きたいという気持ちに寄り添い、一緒に何ができるかを考えることが、私たちにできることなのかもしれません。

これからも、インクルーシブ教育と関わる人が置かれる環境と、社会の仕組みの変革へ、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

参考:障がい者の「きょうだい」に”光”をあてた映画