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『友人の本棚~1分で読める感想文~』Vol.63「県庁おもてなし課」

大して自分が努力をしていないときに、横で必死になって結果を出そうと頑張っている人を見ると、「体壊すぞ」とか「無理するなよ」とか「どうせやっても無駄だ」とか、いかにも「お前のために言っているんだぞ」という姿勢でくる人がいるけれど、その心の内は「お前が頑張って結果を出されたら、俺も頑張らないといけなくなるじゃないか。いやむしろ、結果を出せていないのは頑張りが足りないからだと証明するようなことはやめてくれ」という心の不安が透けて見えるから面白い。まぁ何を隠そう、昔の自分がそうだった。

高地県に実在する「おもてなし課」。著者である有川浩さんが、高知での講演をしたことをきっかけに県の観光特使に任命されたことから生まれた、行政における地方創生を題材にしたハートウォーミングな小説。平成23年に書かれた本だけれど、今、無性に高知に行きたい。

「それこそ意識の部分だよ。行政は変化を嫌う。特に地方は保守的だ。現状を維持できたらいいって感覚のままじわじわジリ貧になってることに気づかない。気がついたら財政破綻してるって寸法だ。破綻が見えてから慌てたって手遅れだ、そのときにはもうどうにもならない」

観光特使を依頼された高知出身の作家、吉門のセリフ。これから改革を進めていく上で、一番の問題点ともいえる部分を痛快に指摘した。

人は変化を嫌う。けれど、自分が変化を嫌っていることに気がつかないのが人だ。

僕が前職のパチンコ店で働いていたとき、必死になってるやつを見て、そんな無駄なことばかりしてるからダメなんだと思っていた。もっと頭を使え、俺にはアイデアがある、どうせ会社は認めないだろうから言わないけれど。結果が出ないのは会社のせいだ、頑張るだけ無駄だ、適当にやってればいい。どうせ他のやつらも、大して結果など出せないのだし、そこそこでいい。そんな風に思っていた。今にして思えば、誰よりも変化を嫌っていたのは僕だった。

これまでのことを間違いだったと認めるには、勇気が必要だ。そこには痛みが伴う。けれど、そこからしか始まらないし、その痛みを覚えた人しか、次に進むことは出来ない。

この本から、たくさんの勇気をもらえた人がいたと思う。それは高知県だけでなく、行政だけでなく、組織を動かしたいけれどなかなか思うようにいかないと悩んでいる人に、この本が届けばいいなと思った(いや、むしろ9年越しに僕の元に届いたのだから、やっぱり僕の変化が遅すぎるのだけれど。汗)

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