雨後
水溜り、気にせず踏んだ。
真っ白のスニーカーを泥塗れにした。
お気に入りの靴下は汚れて、
まるで今の僕みたいだ。
彼女は笑っていた。
冬が近づいて、
僕らの距離は遠くなる。
春が来たら離れ離れだねなんて、
触れたくないところをえぐりながら進むまっすぐな言葉。
貸した赤本に挟まってた一枚のメモ用紙。
柔らかいアイボリーの紙に
“好きだよ”
と丁寧に綴られていた。
まるでそれが僕と君の仲の短い有効期限みたいでさ、なんか少し泣けた。
「春、雨が降っても傘は2つのまんまかな」
何の意味もない言葉を吐いた。嫌味だった。
春になって言葉の意味を理解した僕らがそこに在ればいい。
どうにでもなればいいと思った。
灯油を売る車が僕らの横をのんびりと通り過ぎていった。
心なしか僕の鼓動は早まる。
黙ったままの君が僕の左手の小指を撫でた。
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