男だって本読みたい

「男なら外で遊んでこい。」


小学生の頃、家でゲームをしていた僕に父は口うるさく言ってきた。
なんで男ってだけで外で遊ばなきゃいけないんだ。
そう言い返してやりたかった。
でも、野球で鍛え上げた大柄な父の姿を前にすると、僕の中の反抗心はどこか遠くへ逃げ去っていた。




中学、高校時代。
僕は運動部に入部させられた。
「男ならスポーツをしろ。」という教育方針によるものだった。
決してスポーツが嫌いなわけではない。
でも、正直体を動かすのは苦手だし性に合ってなかった。
もし時間を巻き戻せるならば、美術部とか文学部などの部活動に打ち込んで見たかったと思う時がある。




気づけば、僕は18歳になっていた。
4月、初めての大学生活が始まる。
校舎に入ると多くの人がいた。
髪が緑色の男の子、ピアスを開けた女の子、奇抜な服を着た男の子、ずっとゲームしてる女の子、本を読んでる男の子…
今まで僕を閉じ込めていた歪んだ常識はそこにはなかった。
好きなものの前には性別も関係なければ年齢も関係ない。
自分の好きなことをやりなさい。
誰かにそう言われた気がした。




ある日、バイト先の事務室で本が好きなことを後輩に言うと、こんなふうに言われた。


「えー、先輩本なんて読んでるんすか。男なのに?」


また、僕の前に歪んだ常識が現れた。
でも、僕は前のようには屈しない。
僕は自信たっぷりな声で言ってやった。


「僕は本が大好きだ!」

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