しろ

どこにでもいる大学生。もうすぐ社会人になります。 好きなものは漫画、映画、小説… ショ…

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どこにでもいる大学生。もうすぐ社会人になります。 好きなものは漫画、映画、小説… ショートショート書き始めました。

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    書きたいことを、書きたいままに。

最近の記事

バタフライと数学教師

寒空の下、終礼が終わると所属している水泳部の部室ではなく、校門へと歩いていく。 すでに体操服に着替えたテニス部の人たちが集まっている。 早着替えでも会得しているのだろうか。 半袖の人も数人いる。見ているこっちまで寒くなってくる。 帰宅部の人達と一緒に電車に揺られて最寄駅に着くと、帰らずに家から自転車で10分ほどの場所にあるジムへと直接向かう。          ○○○ 僕が通っている田舎の公立高校には室内プールなんて贅沢品は無く、昔ながらの何十年も使い古されたようなボ

    • タクシーと酔っ払い

      さっきまで、同じ部署の上司といつもの居酒屋で飲んでいた。何百回聞いたかわからない仕事の自慢話を、これまた何百回飲んだかわからない炭酸水を多めに入れて薄くしたハイボールで流し込む。 いつも飲みに誘ってくる割には、1時間もすれば顔を真っ赤に染め、お手本のような千鳥足を披露する。 「今日もかぁ」 夜道に解き放たれた上司を介抱するまでがいつものルーティン。 「こっちの身にもなれっての」 泥酔しているのをいいことにぶつぶつと愚痴を撒き散らしながら、駅前のタクシーの列に向かう。

      • 星降る夜に

        その日教室に入ると僕の隣は空席だった。 次の日も、また次の日も。 日が経つにつれ、授業の合間や昼休みにクラスのあちこちでひそひそと話し声が聞こえて来るようになった。 「仮病で休んでるんだって」 「交通事故で入院してるらしいよ」 「家出したらしい」 どれもこれも根拠のない噂話。そんな話に花を咲かせるクラスの空気感が嫌いだった。 同じクラスの大して仲良くもない人達から「どう思う」、「なんか知ってんの」と話しかけられても「さぁ」と一蹴し、ぼんやりと窓の外を眺めていた。 3日

        • モスコミュールと一人旅

          初めて一人旅に行ったのは大学2年の秋。時折やってくるひんやりとした風が、街を行き交う人たちの肌を小刻みに震わせていた。 受けていたIT関連の資格試験が終わり、一年半続けていた家電量販店のバイトも辞めていた僕は有り余る時間を浪費していた。受験生たちが憧れる"華の大学生"とは程遠い、漫画や服で溢れかえったリサイクルショップの様な部屋で1人スマホをいじる日々。 このままではまずい。 何かしなければ、と考えていたときに思いついたのが一人旅だった。 昔から旅に興味があった、なんてこ

        バタフライと数学教師

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          2本

        記事

          手帳を逆に読んでみる

          大学からもらった1冊の手帳。 普通に売られている手帳よりも少し大きい。 黒い革のようなカバーで守られて、 混沌とした僕のバッグに入れても大丈夫。 僕は色々なことを手帳に書き込むようにしている。 学校での事も、私生活での事も。 見た映画、バイトのシフト、課題の〆切、その日の予定… コツコツコツコツ書き溜めた手帳は少しずつ分厚くなっていく。 いや。物理的にじゃなくて。 本当に分厚くなってたら怖い。 アナベルもびっくりな呪いの手帳。 じゃなくて、 神社にあるような御神木には遠く及ば

          手帳を逆に読んでみる

          気づけば、note を始めてから1ヶ月経っていました。3日坊主な僕がこんなに続けるなんて自分でも驚いています。いつも読んでくださっている方、本当にありがとうございます。これからも頑張りますのでどうぞ宜しくお願いします🙇‍♂️

          気づけば、note を始めてから1ヶ月経っていました。3日坊主な僕がこんなに続けるなんて自分でも驚いています。いつも読んでくださっている方、本当にありがとうございます。これからも頑張りますのでどうぞ宜しくお願いします🙇‍♂️

          なんてことない日を大切に

          僕は大学1年生の時から、1つ心掛けていることがある。 それは"日曜日は休む"ということだ。 簡単だと思われるかもしれないが、これがまた意外と難しい。 今の人たちは働きすぎなんじゃないかと思うくらい働いていると思う。 朝の通勤ラッシュのサラリーマンたちはその代名詞ではないだろうか。 身近な場所でも、同じ大学の友達やバイト先の後輩に聞くと祝日や大学のない日はバイト三昧だ。 終いには年末年始も朝から晩までシフトに入っているらしい。 僕からすれば何でそんなに働かなければいけないの

          なんてことない日を大切に

          男だって本読みたい

          「男なら外で遊んでこい。」 小学生の頃、家でゲームをしていた僕に父は口うるさく言ってきた。 なんで男ってだけで外で遊ばなきゃいけないんだ。 そう言い返してやりたかった。 でも、野球で鍛え上げた大柄な父の姿を前にすると、僕の中の反抗心はどこか遠くへ逃げ去っていた。 中学、高校時代。 僕は運動部に入部させられた。 「男ならスポーツをしろ。」という教育方針によるものだった。 決してスポーツが嫌いなわけではない。 でも、正直体を動かすのは苦手だし性に合ってなかった。 もし時間を巻

          男だって本読みたい

          umbrella

          私はあなたを守ります。 あなたは私を壊します。 私はあなたを想います。 あなたは私を忘れます。 私は誰にも見られません。 あなたは誰かに見られます。 私は晴れを知りません。 あなたは雨を知りません。 私はあなたが全てです。 あなたは私が一部です。 どうか私を忘れないで。 わたしはあなたがいいのです。 あなたでなければいやなのです。 どうか私をそばにいさせて。 どうかあなたを守らせて。

          umbrella

          0.3%の絆

          バラエティー番組などでたまに見かけるお互いのことをどれだけ知っているか当てるというシンプルなクイズ。 挑戦するのは、寝食を共にしてきたお笑いコンビ、よく遊んだりする友達、長年連れ添った夫婦、ラブラブのカップル達。 僕はこの手の番組で全問正解している人たちを見た記憶がない。 相手の誕生日や年齢すら間違えている人もいた。 人は一生かけても相手のことを0.3%ほどしか知ることができないというのを昔どこがで聞いたことがある。 最初聞いた時は大袈裟だと思った。 でも、改めて考えてみると

          0.3%の絆

          真夜中のサイクリング

          夜中の23時頃。 ぽつりぽつりと窓から光が消えはじめる時間帯。 僕は出発の準備をする。 黒の小さなショルダーバックに家の鍵と財布を入れて、そっと音を立てないように家を出る 駐輪場へ向かうと、ほとんど見えない中手探りで自転車を探し、サドルに跨る。 そして、月明かりと僅かな街灯の光を浴びながら ゆっくりペダルを漕いでいく。 僕の住んでいる家は駅から遠い場所にある。 駅から歩いて帰ろうものなら2時間近くかかるかもしれない。 周りには田んぼもあるし、いつ建てられたのかわからないよう

          真夜中のサイクリング

          1ヶ月ぶりのバイト

          「お疲れ様です」 シフトの40分前に従業員用の裏口から入ってきた僕は挨拶をしていく。 具材の味付けをしていた仕込みのおばちゃん、食器をきれいに洗っていた洗い場のおじちゃん、厨房でテンポよく料理を作っていたベトナム人、笑顔で接客していたホールの後輩、事務所でパソコン作業をしていた店長。 みんな挨拶を返してくれる。だけど、みんな僕のこと忘れてないよね?とちょっと不安になった。 「お久しぶりです!」 事務所で着替えていると僕にみんなが声をかけてくれた。軽く返事を返したが、内心

          1ヶ月ぶりのバイト

          神様がくれた言葉

          偏差値 身体能力 内定先 顔 身長 お金 地位 服 時計 車 人は何かにつけて比較したがる。 あの人よりお金持ちになりたい。 あいつよりカッコよくなりたい。 あの子より可愛くなりたい。 あの人よりテストでいい点とりたい。 あの人より偉くなりたい。 僕もそうだった。 勝手に自分と他人を比較して勝手に苦しむ。 大学生活も苦しかった。 特に、講義の後に出される課題は僕にとって地獄そのもの。 提出しなければ帰れない。 でも、みんながペンを勢いよく走らせている中、僕だけずっと止ま

          神様がくれた言葉

          信号無視する人たちに思うこと

          街中を歩いていると信号無視して横断歩道を渡っていく人をたまに見かける。 その度に必ず思うことがある。 信号無視によって得られるわずかな時間と自分の命を天秤にかけた上で渡っているのだろうか。 もしかしたら、急ぎの用事があるのかもしれない。 でも、命をかけるほど? 生身の人間が走行中の車に当たればひとたまりもない。 確実に怪我するだろうし、下手すれば命を落とす。 信号なんて、せいぜい30秒から長くても3分くらいだろう。 もしかしたら10分以上待たせる信号機などがあ

          信号無視する人たちに思うこと

          バスを降りると彼女は大人になっていた

          大学3年生の冬。 寒空の下、羽毛がたっぷり入ったダウンジャケットを身に纏い、僕はバス停の前に立っていた。 普段は大学まで自転車で通学している。 もう、6年以上前に近くの自転車屋さんで買ったぼろぼろのママチャリだ。 通学路のせいか、自転車のせいか、定期的にパンクしている。 それも後輪だけ。 その日は昼から講義だった。 いつもギリギリを攻めた通学をしているからか、たまには余裕をもっていこうと早めに家を出た。 玄関を出て右に駐輪場があり、1番手前に止めてあるやつが僕の愛車だ。

          バスを降りると彼女は大人になっていた

          ありふれた一杯、幸せの一杯

          大学からの帰り道に一軒のうどん屋さんがある。 僕の住んでいる地域の人ならみんな知ってるような、どこにでもある普通のチェーン店だ。 僕はその店の"かき揚げ天うどん"を愛している。 だから、僕は"かき揚げの誓い"なるものを立てた。 その店ではかき揚げ天うどんしか食べないというものだ。 人に話すと意味がわからないと言われると思う。 大丈夫。 自分でも意味がわからない。 でも、かれこれ3年半くらい破られていないから愛は証明できたと思う。 …僕は何を言っているんだろう。      

          ありふれた一杯、幸せの一杯