見出し画像

サービスの報酬設計における「現金」の意味

「習慣において、現金による報酬がネガティブに働く場合があるのは、内的欲求によるモチベーションに、市場規範という金勘定が混じってしまうからだ。」

僕の会社では、運動習慣を支援するサービスを運営しています。
運動に対するモチベーションを高め、維持し、習慣にしてもらうための仕組みが大事で、科学的な知見を学びつつ、それをサービスの中に組み込んでいます。

その中で大事になってくる要素の1つが報酬設計。 
頑張るとコインがもらえる、ポイントを換金できるなどの機能を目にしたことがあると思うのですが、まさにあれです。
習慣化には内的欲求(〇〇したい、なりたい)が大切で、金銭などの外的欲求はキッカケにはなっても継続には直接寄与しないとモチベーション理論では言われています。様々な本に「現金による報酬はモチベーションに対してネガティブに働く(場合がある)」という説を見かけ、その実験結果が記載されていたりします。

実際に社内でも「現金や景品の報酬」については、かなり慎重に取り扱っているのですが、その理由がまだまだクリアに理解できていませんでした。そんな時に、ある本の中で、そのヒントになりそうなことを見つけました。

私たちは2つの異なる世界 - 社会規範が優勢な世界と市場規範が規則を作る世界 - に同時に生きている。... 社会的交流に市場規範を導入すると、社会規範を逸脱し、人間関係を損ねることになる。
Dan Ariely「予想通りに不合理」

社会規範というのは「助け合い」や「社会的意義」そして「社会に自分がどう見られたいか?」といったような社会的交流を中心とした世界。市場規範というのは「利益」「賃金」「価格」といった市場の規則を中心とした世界。

例えば、「託児所のお迎えに遅刻しない」という事例が面白い。
「遅刻したら罰金」とい制度を導入した途端に遅刻する人が増えたそうです。
迷惑がかかるので遅刻しないようにしようという「社会規範に基づくモチベーション」で秩序が保たれていた。そこに「遅刻したら罰金」という制度の導入によって「損得勘定」という市場規範が入り込み、元々あった社会的規範の世界を破壊してしまうという例です。この後、罰金制度を廃止しても、社会的規範は戻ってこず、遅刻は減らないというのが怖いところ。書籍の中では「社会規範」と「市場規範」が混ざることの危険性が語られています。

この社会規範というのが、モチベーション理論の「内的欲求」と似ているなと感じました。 「あれをやったら儲かる」みたいな心理を生み出してしまう報酬設計にすると、習慣化のために大切な内的欲求を壊してしまう原因にもなってしまうのかもしれません。

そのために頑張るほどではないけど、もらえたら嬉しいギリギリの金額なら、金銭の報酬も効果的に働くかも?まだまだ勉強しながらですが、心地良い報酬についての研究を重ねて、サービス開発に活かしていきたいと思う今日この頃です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?