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深海と隣人

胸に広がる暗い暗い気持ち、それは深海のようで果てがなく光が届かず私を固く緊張させる圧を持っている。

深海では泳げない。私たちはできることなら浅瀬で泳ぎたい。そこは陽の光で暖かく明るく、いつでも空気が吸えて安全な場所。仲間たちもたくさんいて楽しい場所。

深海ではずっと独り。そっとそばに誰かが来ても暗くて気づけない。上を向けば少し明るい気がして、そこに向かって泳いで行きたいけれどそんな力は湧いてこない。

胸に広がるどうしようもない暗い気持ち、悲しみや怒りとも言い切れないふと思い出すこの気持ち。私は「これが孤独や絶望か」と認識することにし、彼らが去ってくれるまでただひたすらじっと待つ。
彼らはまるで深海のよう。暗くてひとりぼっちで息が辛くて。私はそんな深海の底に体育座りをして俯いて、陽の光がここまでさすのを待っている。

孤独や絶望がもっと暴力的なものだったらいいのにと思う。理不尽で手がつけられなくて自分には理解できない、自分とは別世界のものなんだと思えたら。
実際の孤独や絶望は違う。そっと後ろから近づいて私を優しく包み込んでしまう。あるいは優しくトントンと肩を叩いて振り向くと「ココにいるよ」とにっこり微笑んで手を繋いでくる。
ゾッとするほど冷たいのに私はそこで温もりを感じることさえある。(不思議な言い方だがこれが一番しっくりくる)

悲しみや怒りとは違う、この気持ち。誰と出会っても、何を食べても、本を読んでも、勉強をしても、恋をしても、愛されても、朝日が昇っても絶対に消えない。去ってはくれない。いつでもそこにいる。彼らとの共存の仕方なんかきっと一生分からないのに。

彼らは深海。そして隣人。
どうせいつも隣にいるのでしょう。たまには一緒に海に沈んでいく夕日でも見ましょう。静かに流れる川面を眺めましょう。寒空の下星座を見つけましょう。

あなたはどうやって彼らと生きていますか?

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