Mike Mutsuzaki

自称ストリートライター。土曜日戦争を執筆中。

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01土曜日戦争

きっかけ あんた、J? はい。 あたしはハナだ。高校中退じゃ、ろくな仕事無いだろ。 そうですね。 このまま、社会の底辺を這いずり回るのか? ・・・・・・。 あたし達の仲間にならないか? 宗教ですか? 違うよ・・・。戦いだ。 俺、フィジカル弱いし・・・。 求められる能力は、身体的なものだけじゃない。子供だっているしな。 子供? まあ、特別な子供だけど。・・・今度の土曜日、迎えに行くよ。どうせ、消費期限ギリの値引弁当、食ってるんだろう? なんで、解るんだ? テレパシーだよ。 テ

    • 曜日と時刻若しくは市役所職員の憂鬱

      水曜日 10時 南野合同庁舎 (二階の受付に歩みを進める。) Y市環境課の青空 翼です。 今日は暇田君じゃないの? はい。係長は別件で在庁です。 そうか、残念だなあ。君は、いつから環境課に? 三ヶ月前からです。 そう・・・終わったら残ってくれないかな。話があるんだ。昼飯、奢るよ。 はい。(ナンパ?) ーーーーーーーーーーーーー 定刻です。本日の司会を務めます南野市総務部行政管理課のフジナミです。 まず、本市の行政管理課長から「地方行政におけるAIの活用」についてお話しさせて

      • 文学青年の憂鬱

        1 (文学部の部室、フクナガ部長とエコー、スワンが同席する。フクナガが重い口を開く。) タカハシ先輩が死んだ。 どうして? 自殺だと聞いています。 理由は何ですか? 僕は知りません。もともと自殺願望があった人だし・・・。 自殺願望? (顔を曇らせたエコーが退席する。) } 【 =屋根裏部屋の少年ⅩⅠⅤ= { (放課後、文学部の部室のドアをノックするエコー。) 開いてるよ〜。 失礼します。 (小さな部室の奥で、長髪の男が机に向かっている。エコーを見ようともしない。) 一年の

        • 回帰と終末5

          1 { (9月に入り、迷走台風の影響による雨などで、気温が下がったのだが、暑さがぶり返した。 土曜日の午後、バトルフィールドから帰ったスワンがエムに話しかける。) お爺ちゃんの生活ってさあ、隠遁生活だよね。 うーん、そう言えなくもないが、引きこもり老人とも言える。 まあ、同じような意味でしょ。・・・お爺ちゃん、ひらめきって何? ひらめき? うん、お爺ちゃん、前に言ってたよね。 そうだったかな・・・。 } 【 =楽園の狂人Ⅳ= { (梅雨の合間、好天の日、西公園のベンチに座

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        01土曜日戦争

          回帰と終末4

          1 { 私は土曜日戦争の戦士で、ガーティというニックネームで飛んでいます。結婚しています。夫のアダムも戦士です。彼は隣町の土木会社で働いています。肉体労働です。背丈は男性の平均値くらいですが、上半身が逞しく胸板が厚い。 もし、私が生まれ変わることが出来て、欠けるところがない娘だとしたら、私の人生はどうなっていたのだろうと思うことがある。アダムと結婚していたのだろうか?それとも、もっと別の人生を送っていたのだろうか? } 【 =08 What's Next?= 06 Emp

          回帰と終末4

          回帰と終末3

          1 { 8月も終わりに近づいているのだが、相変わらずの猛暑と湿気だ。 人の存在はアイロニーに満ちている。興味深い概念だ。 私は、兄にくっ付いて土曜日戦争のバトルフィールドに行っていて、デビッドに会った。それからは、デビッドに会うのを楽しみにしていた。 デビッドや兄の後ろ姿を追って、私も土曜日戦争の戦士になりたいと思うようになった。 紆余曲折があったのだが、私の夢は8割方実現した。レギュラーリーグに入ったからだ。 それでも、時折、自分が惨めだと思うことがある。 そんな時は、

          回帰と終末3

          回帰と終末2

          1 エコーです。私の家は、JR南野駅から徒歩で10分足らずの所にあります。安普請とは言いませんが、立派な建物ではありません。それでも一家四人が暮らすには充分だと思っています。一階に父と母、二階の二部屋が兄と私。 家族の足りない部分を補っていたのは兄です。明確に意図することもなく、自分を変えようともしない。で、孤独だ。女っ気のない人だ。浮いた話の一つや二つあっても良いと思うのだが・・・。そんな兄を私は無視してきた。責められるべきは私だ。 金曜日、朝から台風の影響で蒸し暑く、

          回帰と終末2

          回帰と終末1

          1 私はスワンと言います。今は、事情があって、お爺ちゃんと一緒に住んでいます。お爺ちゃんと言っても、本当のお爺ちゃんではありません。母の知り合いで、遠縁の老人です。彼はエムと名乗っています。 お爺ちゃんは伴侶を亡くし、娘と息子は家を出ていて、一人暮らしでした。 父が家を出て母が入院しました。私は、途方に暮れ、学校も休みがちになりました。 もうダメだと思った時に、お爺ちゃんが来ました。 【 =屋根裏部屋の少年ⅩⅩ= (呼び鈴を押すエム。やつれた感じの、若い娘が出てくる。) ス

          回帰と終末1

          バスに乗って3

          1 { (金曜日、居酒屋「ずびずばあ」の暖簾をくぐる幸太郎。客足が落ち着くまで、カウンターの片隅で杯を重ねる。) ヒマちゃん、今日も残業か? はい。土日は休みになるんで。 休みの日は、何をしてるんだい? 特段の用事がなければ、何もしません。家から一歩も出ないこともあります。 趣味とか、無えの? 強いて言えば、コンピューターですかね。・・・マスターは? 俺は、ゴルフだな。 上手いんですか? そこそこ。・・・上には上が居るんだよ。クラブ選手権のベスト4止まりだ。 そうですか。

          バスに乗って3

          バスに乗って2

          1 { (竜クリニックから戻る翼。) 係長、書類預かって来ました。 うん、ご苦労様。 何の書類ですか?数字が並んでいるだけですよね。 見たのかい? はい。中身を竜先生と確認しました。 そう・・・。 で、何の書類ですか? 人に関する書類だ。 } { 人は数値に置き換えることが出来る、ですか? ん? 竜先生が言ってました。 おまえはどう思う? 出来ないと思います。 そうだね。 } { そう言えばさあ、一年くらい前かなあ。おまえ、駅裏あたりを男と歩いていたろ? ああ、それは、彼と

          バスに乗って2

          バスに乗って1

          1 { (Y市役所環境課長と面談する青空 翼。新卒採用2年目の職員だ。中肉中背でバランスの良い体型をしている。) 中途の異動ですまんね。 いいえ。 君の上司は、暇田幸太郎、高卒採用の係長だ。二部で大卒資格を取った。君のキャリアとはだいぶ違うね。 はい。どんな人なんですか? うん、ちょっと難しい奴でな。 どう難しいのですか? それが、俺にもよく解らん。部下が、よく異動願いを出すんだよ。どうしてかなあ? 課長にもお解りになりませんか? そうだなあ、悪い奴じゃないんだが。 パワ

          バスに乗って1

          屋根裏部屋の少年ⅩⅩⅡ

          1 { 母さん、君の心配は何かな? スーサイドです。 ・・・心配しすぎだよ。 だと良いけど・・・四六時中、そばに居たいくらいです。 ・・・・・・。 お父さん、私、あの子のことが心配なの。この前、一緒に居間の掃除をしたんだけど、終わった後、そこに座ってボーッとしているの、寂しそうな顔をして。 【 どうしたの? ・・・何でもないよ。 心配事? 違うよ。 】 訊いたんだけど、答えてくれない。 そう言う年頃だ。 人並みの生活を送ってもらいたいわ。 人並みの? はい。16歳の男の

          屋根裏部屋の少年ⅩⅩⅡ

          楽園の狂人ⅩⅩⅡ

          1 { お爺ちゃん、明日、学校まで送ってくれる? 良いよ。 9時に出たいんだけど、大丈夫? ああ、頑張るよ。 悪いね。 気にするな。マイプレジャーだ。 } { (スワンを学校まで送るエム。) このところ暑いな。 そうですね。 帰りも迎えに来ようか? いいよ、何時になるか分からないから。 そうか・・・。 それよりさあ、お昼ご飯、用意しておいたから。 さて、何かな? ドライカレーとサラダです。ドライカレーは冷凍だから、説明書きがある。チンすれば良いから。サラダは冷蔵庫にあるから

          楽園の狂人ⅩⅩⅡ

          恋の行方ⅩⅩⅡ

          1 { (自分自身について。) 私は、羽田 櫂(ハタ カイ)と申します。大学を卒業して、ドラッグストアのパートタイマをしています。兄の純は、若くして死にました。原因不明の肥満でした。彼は我が家の希望の星で、母が最も愛した息子でした。 } { 櫂さん、ジョシュアにかまってもらえるようになりましたか? ええ・・・少し。(頬を赤らめる櫂。) どのくらい? どのくらいって、週に1回くらいです。 あら、少ないのね。 そうでしょうか・・・。 まあ、回数の問題でもないから。 } { (土

          恋の行方ⅩⅩⅡ

          老人の夢と孤独ⅩⅩⅡ

          1 { (千葉のホテルで食事をする母と息子。) 母さん、僕、米国支社に行くことになりました。 ・・・アメリカに? はい。 行くの? 社命ですからね。 遠くなるわねえ。・・・どのくらい行くの? 三年くらいかな。でも、確約はありません。 出世コースなの? どうなんだろう・・・保証なんてありませんよ。 彼女は? 難しいと思っています。 別れるの? 決めたわけじゃないけど、彼女に相応しい男は、僕だけじゃないでしょうから。 ・・・・・・。 成り行きに任せようと思っています。 そう・・

          老人の夢と孤独ⅩⅩⅡ

          老人の夢と孤独ⅩⅩⅠ

          1 { (水曜日、午前中の家事が一段落した妻が声をかける。) お父さん、今日のお昼、また市役所に連れて行ってくれませんか? ああ、そうだね。 嬉しいことがありました。 さて、何だろうか? 孫ちゃんの中間テストが返ってきて、5教科485点ですって。 まあ、中一、一学期の中間だから、これからだな。 でも、上々の滑り出しだわ。 うん・・・。 お父さん、5教科で15点しかミスしてないのよ。 まあ、あまり期待してもなあ。 ・・・お父さん、嬉しいときは素直に喜ぶものですよ。 } { (

          老人の夢と孤独ⅩⅩⅠ