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まさみの本棚 #6 自分の感受性くらい

こんにちは、まさみです。

年の初めということで、読むといつも背筋が伸びる、襟が正される言葉を紹介しようと思います。

茨木のり子さんの詩集から、『自分の感受性くらい』という詩です。

自分の感受性くらい


ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
詩集「自分の感受性くらい」より

ピシッと「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」と言ってもらい、言い訳をしそうな自分を律してくれる言葉です。

作者の茨木さんは、戦後に活躍した詩人、エッセイスト、童話作家、脚本家。
上の詩や、「わたしが一番きれいだったとき」という詩を国語の教科書で見たことがある人もいるかもしれません。

「自分の感受性くらい」の詩は、思春期を戦時中に過ごし、世の中間違っていると思っても気持ちを押し込めて、他人の感受性を飲み込んで過ごした作者が戦後に残した詩だそうです。

きっとこの詩があたためられていた時代は、いろんなことが制限されて、感受性、というか、意志や目標を守るどころか、生きるのが精一杯な時代だったと思います。

それに比べたら、今は果てしなく感受性を守りやすくなった時代。
守るか守らないかは、個人にゆだねられる部分がとても大きくなりました。

どうしようもない時代の中で感受性を守っていくのか、
言い訳になる要素がたくさんで、守らなくても大きな痛みなく生きていける中で感受性を保っていくのか。

時代が変わっても心に刺さるのは、こうでありたいと望む姿は変わらないからなのでしょうか。

他人や世の中のせいにして言い訳をしそうになった時、こうでありたいという方に正してくれるシンプルで強い言葉たち。

ぜひ読んでみてください♪

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