日が落ちる頃
「ダーリン 君がいなくても眠ろう」
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星を見せたかった
貴方の街では星が見えない
街を照らす光が明るすぎて、わたしたちの影を生む光が眩しすぎて。
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「海か山に行きたい」
わたしは辺りに何も無い何処かへ行きたかった。自分を取り巻く環境から逃げたかった、放たれたかった。
約1年ぶりに一緒に海へ行った。初めて一緒に遠くへ足を運んだ時も海だった。あの頃は頑張ったわたしへの労いで連れて行ってくれた。あの日見た夕日は今でもわたしのホーム画面でいつもわたしを照らしてくれる。そして夕日が隠れた後の余韻と自分たちの空気を重ねながら少し切ない気持ちで海辺をあとにする。暗闇に急かされながら車を走らせて帰っていく。
一番星が見えた。見つけた時、嬉しくてはしゃいでしまった。「あそこにあるよ、そこそこ!」と言いながら何度も何度も見た。見せた。
わたしは貴方に星を見せたかった。
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満天の星空は見えなかった。それでもよかった。星が見たかったのと同時に どうにか貴方と一緒にいたかった。同じ空を見ていれば たしかに貴方とわたしがここにいると示してくれるような気がした。同じ空があたたかく、切なく包んでくれるこの世界が好きだった。
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毎晩 空を見上げる。貴方はいまお風呂に入っているのか、ご飯を食べているのか、お酒を飲んでいるのか、寝ているのか。そんなことを考える。空が何かを教えてくれる訳ではない。運び伝えてくれる訳でもない。ただ静かに上からわたしを見ているのだ。それでいい。そのまま、変わらず日が昇り沈む姿を見せてくれればいい。それを眺めるわたしと目を合わせていればいい。
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それぞれの生活を送るわたしたちに変わらず与えられる糸が空だと思うから。
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