【2021年日本シリーズ展望①】ヤクルトは初戦の先発に奥川恭伸を立てるべきなのか?

NPBの「SMBC日本シリーズ2021」がオリックス・バファローズと東京ヤクルトスワローズとの間で争われることとなり、11月20日(土)から第1戦が始まる。今回も先に4勝したチームが日本一となる。

初戦の先発は、オリックスは山本由伸、ヤクルトは奥川恭伸が予想されている。


プロ野球ファンからすれば、「シーズン15連勝&投手五冠」の山本由伸と、高卒2年目で成長著しい奥川恭伸のマッチアップは垂涎だ。

戦前の予想は、「ヤクルトが初戦で山本由伸に勝てば、ヤクルトが日本一」というものが多い。
ヤクルトからすれば、オリックスの「絶対的エース」の山本由伸を打ち崩せば、日本一が見えてくる、というものだ。

ロッテOBの里崎智也氏も、「初戦の勝敗で日本一になるチームが決まると思うんですよ」と予想している。

だが、果たして本当にそうだろうか?

過去の日本シリーズ71回を振り返ってみると意外なデータが浮かび上がって来る。

過去71回の日本シリーズで、第1戦に勝利したチームが日本一になったケースは45回ある。逆に、26チームは日本一を逃しているということだ。
つまり、初戦を勝利したチームが日本一になる確率は、.634。

逆に第1戦に敗戦したチームが日本一になったケースは26回、ということだ。つまり、初戦に敗れたチームが日本一になる確率は.366

これだけ見れば、やはり、初戦に勝利したチームが日本一になる確率が高い、といえそうだ。

Ⅴ9巨人を支え、日本シリーズでもMVPを獲得した、かつての読売ジャイアンツのエース・堀内恒夫氏は、こう言う。

「『日本シリーズは第2戦重視』
一体、いつから誰がこんなことを言い出したのだろうね。最大7試合しかない短期決戦で、初戦を重視しない監督がどこにいる? 短期決戦で勝利するためのセオリーは『先手必勝』しかありませんよ。『第2戦を重視する』なんて、私から言わせてもらえば、初戦を落としたチームの負け惜しみでしかない。」

一方、巨人で捕手として、ヤクルト・西武ライオンズでコーチ、そして西武で監督として計20度も日本一を経験している森祇晶氏はかつて、「日本シリーズは第2戦を重視する」と発言していた。

「先手必勝」あるいは「第2戦重視」、どちらの戦術が正しいのだろうか?

こういうデータがある。

日本シリーズの第1戦に勝利したチームが、第2戦も勝利したケースは38回あり、そのうち日本一になったのは29回ある。確率にすると.763。
すなわち、初戦から2連勝したチームが日本一になる確率は.763ということだ。

ところが、第1戦に勝利したチームが第2戦に敗れたケースは33回あり、そのうち日本一になったのは16チームしかない。つまり、確率は.485。

つまり、第1戦に勝利しても、第2戦に敗れれば、日本一になれる確率がガクっと下がるということだ。

一方で、第1戦に敗れたチームが、第2戦に勝利したケースは33回あるが、その後、日本一になったチームは17チーム。すなわち、確率は.515。

すなわち、「第1戦に勝利して、第2戦に敗戦したチーム」より、「第1戦に敗戦して、第2戦に勝利したチーム」のほうが、日本一になる確率がわずかに高いということだ。

つまり、第1戦を落としても、第2戦さえ落とさなければ、日本一になれる可能性をほぼイーブンに戻すことができるのである。

森氏は当時、こうしたデータを念頭にそういう発言をしたわけではない。


曰く、
「監督によっては『第1戦重視』だとか、『いや、2戦を重視する』とか言いますよね。もちろん、両方勝つに越したことはないけど、僕の場合は心理的に2戦目を取ったほうが気が楽でした。なぜかというと、2戦目から3戦目にかけては、いわゆる移動日があるわけです。敗戦を引きずって敵地に乗り込むか、勝って気持ちよく敵地に乗り込むかというのでは、まったく気持ちが違うから。」

森氏は「第2戦重視」の理由に、心理的なメリットを挙げていたようだが、さらにデータでも裏付けることができるのである。

実際に、第2戦(第1戦が引き分けて場合は第3戦)に勝利したチームが日本一になったのは71チーム中、45チームある。逆に日本一を逃したのは26チームあるということだ。

つまり、理由はともあれ、日本シリーズでは初戦を取ろうが、敗れようが、それ以上に、第2戦に勝利することが非常に重要だということを、統計が教えてくれる。

となると、ヤクルトとしては、「絶対的エース」山本由伸に敗れたとしても第2戦を取れば、致命的なことにはならない、ということだ。

従って、ヤクルトは初戦、奥川恭伸を山本由伸にぶつけるのではなく、第2戦の先発に廻し、勝利の確率を挙げる、という戦術も考えられるということだ。

もちろん、ヤクルトは奥川を第2戦の先発に廻したところで勝てる保証はない。オリックスには山本由伸以外にも先発陣に、宮城大弥(13勝、防御率2.51)、田嶋大樹(8勝、防御率3.58)、山崎福也(8勝、防御率3.56)という左腕が控えている。
だが、奥川を16連勝中の投手にぶつけるより、第2戦に廻したほうが勝利できる可能性は上がるだろう。
逆に、ヤクルトは初戦、山本由伸に敗れてもそこまで気落ちする必要はなく、第2戦をいかに落とさないようにするかに腐心したほうがよいのではないか。

さて、ヤクルトの高津臣吾監督はどういう決断を下すのか。
当然、先発投手の調整を考慮すれば、現時点でもう第1戦の先発投手はすでに決めているし、本人にも言い渡しているだろう。

第1戦の両チームの予告先発の発表が楽しみである。



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