ヤクルト9連敗・・・過去の大型連敗ストッパーは誰だ


セ・リーグ3連覇を目指す東京ヤクルトスワローズが苦戦を強いられている。

ヤクルトは5月16日、静岡・草薙球場での対巨人戦で8-9と敗れて以降、勝ち星から見放されている。
5月21日、対DeNA戦(横浜スタジアム)での引分けを挟み、5月27日、マツダスタジアムで行われた対広島戦も1-4で敗れ、ついに9連敗となった。
今季46試合目にして、借金は最大の10に達し、自力優勝の可能性も消滅した。

ヤクルトがシーズン9連敗以上を喫するのは、小川淳司監督時代の2019年、5月14日から6月1日までに16連敗を記録して以来である。

2020年に高津臣吾監督が指揮を執り始めて以降は、昨年2022年8月の7連敗、今季4月の7連敗がワーストであったため、その記録を更新している。

だが、シーズン9連敗した年にリーグ優勝を果たしたチームがある。

それが東京ヤクルトスワローズであり、しかも、1992年と2015年と2度ある。

NPBでシーズン10連敗以上を喫してリーグ優勝を遂げたチームはまだないため、9連敗で止めるか、10連敗を喫するかは、ジンクスとしては大きな分かれ目である。

では、2014年以降のシーズンでヤクルトの大型連敗を止めた先発投手・勝利投手は誰なのか、振り返ってみたい。


2014年以降、ヤクルトがシーズン9連敗以上を喫したのは今回で7度目である。
そのうち、9連敗で止めたのが3度ある。
その連敗ストッパーとなった先発投手を見てみよう。

2014年 木谷良平

ヤクルトが2014年に喫した9連敗は、大卒プロ3年目の右腕・木谷良平が止めた。
木谷は2011年ドラフト2位で指名され、背番号「16」を着けると、2年目の2013年にプロ初勝利を挙げた。
2014年、開幕投手の小川泰弘が早々に離脱し、苦しい先発ローテーションとなり、チームが9連敗という重苦しい雰囲気で迎えた4月26日、神宮球場での中日戦、先発のマウンドに上がったのは木谷であった。
木谷は中日打線に対し、5回1死までパーフェクトというピッチングを見せた。
5回に和田一浩に初ヒットとなる2ランホームランを浴びたが、味方打線が早めに援護してくれたおかげもあり、中日打線を7回を3失点に抑え、見事、今季2勝目を手にした。

チームのピンチを救った木谷は5月23日にチームトップの4勝目を挙げたが、その後は調子が上がらず、4勝6敗、防御率7.26でシーズンを終えた。
翌2015年には登板機会がほぼなくなり、2016年オフに現役を引退、現在はスワローズの打撃投手兼スコアラーを務めている。

2015年 石山泰稚

ヤクルトは2年連続最下位となった前年に続き、この年も5月4日から9連敗を喫して、暗雲が立ち込めていたが、5月17日、東京ドームでの巨人戦に先発したのはプロ3年目の石山泰稚であった。
石山は2012年、ドラフト1位でヤクルトに入団、2013年のルーキーイヤーからセットアッパー、クローザーとして活躍し、60試合に登板、3勝3敗、10セーブ、21ホールドという成績を残し、2014年夏から先発に転向していた。
この日は、打線が3回に巨人先発の高木勇人を捉え、上田のライト前タイムリー安打で先制すると、投げては石山が巨人打線を6回、4安打に抑えた。
7回に2番手の中澤が無死一、二塁のピンチを招いたが、3番手のロマンが切り抜けると、その裏、荒木が左中間を破るタイムリー二塁打を放って貴重な追加点を奪った。
ヤクルトは石山、中澤、ロマン、オンドルセク、バーネットの5投手の継投で巨人打線に得点を与えず、2-0の完封リレーで逃げ切った。
石山はシーズン3勝目を挙げた(シーズン成績は5勝5敗、防御率3.64)。
翌年、石山は本格的にリリーフに再転向することになる。

ヤクルトはこの時点で18勝23敗、借金5と苦しい状況にあったが、6月以降、すべての月で勝ち越し、9月に首位に浮上すると、マジック1で迎えた10月2日の対阪神戦、延長11回裏、雄平がサヨナラヒットを放って2-1で勝利し、14年ぶり7度目のリーグ優勝を決めた。

2017年 プレストン・ギルメット

2017年、ヤクルトがシーズン3度目の10連敗にリーチがかかった9月7日、横浜スタジアムでのDeNA戦で先発マウンドに上がったのは、来日初先発のプレストン・ギルメットであった。

ギルメットは来日当初はセットアッパーであったが、外国人枠や球威の不足などを理由に首脳陣は先発に転向を命じた。本格的な先発を務めるのは自身、プロ1目の2009年以来、8年ぶりというぶっつけ本番であったが、落差のあるフォークボールなどを武器に、DeNA打線を4回までパーフェクト、6回2死までノーヒットに抑えた。
桑原に二塁打を打たれたものの、7回を投げ許した安打は、わずか2本だった。
試合は前日まで26イニング連続無得点のヤクルト攻撃陣が初回、DeNA先発の今永昇太を攻め、荒木、山崎の連打で無死一、二塁とすると、ウラジミール・バレンティンがレフトへ30号3ランホームランを放って先制し、計14安打で11得点を奪った。

試合後、ヒーローインタビューに呼ばれたギルメットは「連敗中だとは知らなかった」と明かした。
ギルメットは一軍から1か月半近く離れ、二軍で調整していたため、チームの連敗を知らなかったのだ。
この年、ギルメットは28試合に登板し、1勝1敗、防御率3.62という成績であったが、オフにヤクルトを退団した。米国に戻って、カージナルス、ブルージェイズ、マーリンズと渡り歩いて、メジャーのマウンドを踏んだが、結局、MLB未勝利のまま現役を引退した。
すなわち、ギルメットにとってヤクルトの9連敗を止めた先発勝利がプロ唯一の勝利だった。


今日5月28日の広島戦、ヤクルトの予告先発は小川泰弘。
ヤクルトはリーグ3連覇に向け、徳俵に足がかかった状態だが、チーム一丸となった奮起を期待したい。

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