2021年日本シリーズ総括②第3戦 投手継投で明暗

日本シリーズ第3戦は舞台を移して東京ドームへ。

https://note.com/mmiyauchi/n/ne372b0e53794


第3戦から5戦まではヤクルトのホームゲームなので、DHが使えないため、投手への代打起用、継投が注目される試合となった。

その②オリックスの中継ぎ陣の継投ミスと外国人野手の差

第3戦の先発投手はヤクルトが小川泰弘、オリックスが左腕の田嶋大樹。
オリックスは、第1戦・2戦とDHで先発した吉田正尚をレフトで起用した。

オリックスは3回、2番・宗のセンター前へのタイムリー安打で1点を先制。だが、3番・吉田正尚が三振、4番・杉本裕太郎が凡退して1点どまり。
小川を捕えることができなかった。
ヤクルトは3回まで田島の前にノーヒット。4回二死からホセ・オスナがようやく二塁打を放って得点圏に走者を進めるが、8番・西浦直亨を申告敬遠、9番・投手の小川はセンターフライに倒れて無得点。
ヤクルトは5回、1死から2番・青木宣親がセンター前安打で出塁すると、オリックスベンチは田嶋を諦めた。田嶋はここまで92球だった。
この後、オリックスは2番手のサイドスロー右腕の比嘉幹貴が3番・山田哲人をショートゴロに斬ってとり、二死。
比嘉がワンポイントの役目を果たすと、続く左の4番・村上宗隆を迎えたところで、セサル・バルガスにスイッチ。
しかし、バルガスは村上と5番・ドミンゴ・サンタナに連続四球を与え、2死満塁とすると6番・中村悠平にセンター前に弾き返され、2点を失う。
さらに、中村の二塁進塁を防ごうとしてサードの宗佑磨が悪送球。ボールが外野を転々とする間に、一塁走者のサンタナまでホームインした。

オリックスは6回、先頭の吉田正尚の二塁打に飛び出し、続く、杉本裕太郎が2ランホームランを放って3-3の同点に追いついた。
小川はこの回までを投げて6回3失点でマウンドを降りた。

田嶋を5回途中、無失点のまま降板させたオリックスと、小川に6回3失点までは我慢したヤクルト。
オリックスは7回にヤクルト2番手のスアレスを攻め、左の田口麗斗から二死一、二塁のチャンスをつくり、3番・吉田正尚がレフト線に落として、4-3と勝ち越した(記録は二塁打)。
なおも、二死満塁のチャンスをつくったが、5番・スティーブン・モヤの代打のアダム・ジョーンズを迎えたところで、ヤクルトは石山泰稚をマウンドに送る。
ここでジョーンズが三振に倒れ、チェンジ。
オリックスは突き放すチャンスを逃した。

ヤクルトはピンチの後にチャンスありとばかり、直後の7回表に2死からドミンゴ・サンタナにシリーズ初ホームランが飛び出して、逆転。
マウンドの吉田凌は第1戦、第2戦と無失点に抑えていただけに、オリックスベンチは自信を持って送り出したのだろう。
先頭の青木宣親にはセンター前に運ばれ、続く、山田哲人をセンターフライ、村上宗隆を三振に抑えたが、サンタナに痛恨のホームランを浴びた。
サンタナは第1戦、第2戦とノーヒット、第3戦もここまで3打席ノーヒットと、シリーズで8打数無安打と当たっていなかったが、願ってもない場面で、しかもライトに流したホームランとサンタナらしい一発だった。

ヤクルトは8回も石山がイニング跨ぎでマウンドに上がり6番から始まるオリックス打線を三者凡退。

そして、ヤクルトが5-4と1点リードで迎えた9回表、最後のヤマ場がやってくる。
ヤクルトのマウンドにはスコット・マクガフ。
マクガフは第1戦では2点リードの9回裏、一死も取れず、痛恨のサヨナラ打を浴びており、短期決戦では起用がためらわれる場面だが、高津監督はマクガフに懸けた。
マクガフは先頭の若月健矢にバットを折られながらセンター前に運ばれた。
続く福田周平に送りバントを決められ、このシリーズで当たっている宗佑磨。第1戦ではマクガフから同点タイムリーを放っている。
マクガフは宗をファーストゴロに打ち取ったが、二死三塁。
ここで打席は吉田正尚。
ヤクルトベンチは伊藤コーチがマウンドに行った後、高津監督は吉田正尚への申告敬遠を指示。
4番の杉本裕太郎との勝負を選択した。
首位打者との勝負か、本塁打王との勝負か。
一発が出れば3点入る場面であり、難しい選択であったが、結局、マクガフは杉本を力でねじ伏せ、ファーストゴロに打ち取り、ゲームセット。
吉田正尚への申告敬遠策は成功して、ヤクルトベンチとマクガフに軍配が上がった。

第3戦を総括すると、3つのポイントがあったと思う。

(1)オリックスの投手継投が早かった。
オリックス先発の田嶋大樹は5回2死まで93球と、100球近くを投げていたが、中継ぎ陣が盤石でないことを考えると、5回は点を与えるまでは任せてもよかったと思う。
中嶋監督からすると、第2戦の9回、1回を無失点に抑えたバルガスに懸けたのだろうが、経験不足は否めなかった。
オリックスは中継ぎ陣に不安があるが故に、先発の田嶋をもっと引っ張ってもよかったと思われる。
勝負所を焦ったが故の痛い3失点となったのではないか。

第2戦、先発の高橋奎二を再三のピンチでも変えなかったヤクルトベンチとの明暗が分かれた。

スワローズは7回に継投で1点を失って勝ち越されたが、二死満塁から登板した石山泰稚が追加点を許さず、8回も三者凡退に抑えたのが大きかった。

(2)外国人選手の差が出た。
ヤクルトは山田哲人、村上宗隆が併せて8打席無安打と抑えられたが、その後を打つサンタナが値千金の勝ち越し2ランホームラン。

一方、オリックスは吉田がタイムリーを含む2安打、杉本がシリーズ初ホームランで2打点と気を吐いたが、その後を打つモヤと代打のジョーンズが併せて4打席無安打、3三振と大ブレーキになった。

(3)9回表、1点リードで吉田正尚を敬遠、杉本裕太郎と勝負した。

ヤクルトベンチからすれば、サヨナラ負けがある9回裏ならいざしらず、表の守りで敬遠して勝ち越しの走者を出し、本塁打王を迎えるというのは一歩間違えれば、ビッグイニングになるおそれがある。
しかも、杉本はこの日、シリーズ初ホームランを打っている。
それでも高津監督は「1点勝負」と読んで、吉田正尚を避けて、杉本との勝負を選んだ。
直前、伊藤コーチをマウンドに送っており、そこでマクガフと捕手・中村悠平に意見を聞いたかどうかは定かではないが、ベンチとバッテリーの間で十分な意思統一を図った可能性はある。

これでヤクルトは2連勝で2勝1敗。シリーズで初めて優位に立った。

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