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読書記録『SNSカウンセリング』

貴重な時間を使ってわたしのnoteを開いてくださったあなたに感謝します。

1つ前の記事で折角書いた原稿が消えてしまったというお話をしました。心が折れてしまったので、もう書くのは辞めにしようと思っていたのですが、なんだか悔しいのでやはり書くことにしました。

『SNSカウンセリング入門 LINEによるいじめ・自殺予防相談の実際』

第1回読書記録
SNSカウンセリング入門 LINEによるいじめ・自殺予防相談の実際』

目次は以下のようになっています。



序章 SNS相談を取り巻く状況
アカデミック・アドバイザーのコラム:LINE相談と変化のステージ

1 なぜSNS相談なのか?
 1.若者のコミュニケーション形態の変化と悩み相談の現状
 2.専門家の消極的な対応
 3.SNS相談に向けられがちな批判や疑い
 4.SNS相談のメリットとデメリット
 5.海外におけるSNS相談の動向
 6.LINE相談の実践経験から
相談員のコラム1:相談初日に飛び込んできた子どもたちからの問い

2 LINE相談に寄せられる中高生の悩み:統計データから
 1.相談の概要
 2.相談活動の主な統計データ
 3.さらに詳しい統計データの考察
 4.まとめ
相談員のコラム2:LINE相談の経験から学んだこと

3 SNS相談にマッチした相談技術
 1.SNS相談員に求められる前提条件
 2.SNS相談における相談員の基本姿勢
 3.具体的な応答の技術
 4.LINEの特性に対応したその他の応答上の工夫
 5.まとめ
相談員のコラム3:重たい相談への対応の工夫
 
4 SNS相談の相談体制と実施手順
 1.SNS相談の相談体制
 2.LINE相談の実施手順
相談員のコラム4:SNSを相談ツールに

5 LINE相談の事例研究
 1.事例の提示にあたって
 2.架空事例①:人間関係で悩む中学3年生女子
 3.架空事例②:家族関係で悩む高校2年生男子
 4.架空事例③:死にたいと訴える高校1年生女子
 5.まとめ
相談員のコラム5:扉をたたく勇気に応えたい

6 まとめ:SNS相談の課題
 1.今後に向けての展望
 2.SNS相談の難しさ
 3.今後の課題
相談員のコラム6:LINE相談室の中

文献
あとがき


私はこれまで「SNSカウンセリング」について詳しく調べたり、書籍を読んだりしたことはありませんでした。図書館の「心理」の棚の前に立った時、ユングやロールシャッハについて書かれた本が並ぶ中、可愛らしい装丁の本が目についたので手に取ってみることにしました。

普段仕事をする中で、SNSやメッセージアプリを使って相談に応じることがあります。普段の仕事を通して、そしてこの本を読んで感じた「SNSカウンセリング」のメリット・デメリットについて書いていきたいと思います。

◎メリット

私が考える「SNSカウンセリング」のメリットは3つです。
①いつでも・どこでも相談に対応できる
②写真や動画が共有できる
③あとで読み返すことができる
まず①についてです。私の仕事は相談業務がメインではありませんので、空き時間を使って相談に応じることになります。仕事が立て込んでいたり、出張などがあったりすると、なかなか落ち着いて話をする時間を確保することが出来ません。また、人目を気にせずに話ができる場所が少ないということも課題だと思っていました。その点、SNSでは時間や場所にとらわれずに相談に応じることが出来ます。相談者も人目や時間を気にせずに相談できると思います。
②について。私たちは普段「言葉」を使ってコミュニケーションをとっていますが、「言葉」に対する認識は微妙にずれていることがあります。例えば、「すごい雨」という言葉を聞いた時、「すごい」という言葉がさす雨の程度(降り方)は人によって違うのではないでしょうか。つまり自分のなかの「ものさし」と、他の人の「ものさし」が必ずしも同じとは限らないということですね。この問題の全てを解消することは出来ませんが、「言葉に対する認識の違い」を解消するために写真や動画を共有するというのは有効だと思います。同じもの(写真・動画)を見ていれば、共通理解をもちやすく、食い違いが生まれにくいのではないでしょうか。
最後に③についてです。私自身、電話があまり得意ではありません。電話を受けるのも掛けるのも苦手で、メールで済ませることが出来れば、そうしてしまいます。電話や対面では録音・録画をしない限り、やりとりが残ることはありませんが、SNSではやりとりを保存し、あとで見返すことが出来ます。その場で「消化」しきれなかった気持ちやまとまりきらなかった思考をあとで読み返すことによって整理できるのは大きな利点だと感じました。

▲デメリット

つぎに「SNSカウンセリング」のデメリットだと思うことを2点挙げます。
①言語能力に頼る部分が大きい
②関係が築きにくい

まず①についてです。先ほども「言葉に対する認識の違い」について書きましたが、「言葉を使う」というのは簡単なことのようで実は難しいことです。自分の気持ちや思いを「的確に」表現することを苦手とする人は多いように思います。現にTwitterなどのSNSでは言葉の捉え方でトラブルになっているケースをよく目にします。「言葉を的確に使う力」は教育を受けたり、人と関わったりすることを通して沢山の言葉に触れ、自分で育てていくものです。こうしたことを踏まえると、「言葉をうまく使えない(=自分の気持ちを的確に表現できない)」人にとってはSNSを通して相談するというのはハードルが高いことかもしれません。
最後に②についてです。もちろんSNSを使ったカウンセリングで相談者との信頼関係を築いているカウンセラーももちろんいると思います。ここではあくまで私個人の考えとして、「関係が築きにくい」と書きました。対面での関わりであれば、相談者から発せられる言葉以外にも、表情や間の取り方、声のトーン、手や目の動きなどから情報を得ることが出来ます。しかし、SNSでは「文字」からしか情報を得ることが出来ません。また、SNSは「相談を切りあげるのが簡単」ということも挙げられます。以前受けた研修のなかで、精神科の先生が「動機づけの弱い相談者に対する支援を継続するのは難しい」という話をしていました。電話や対面の相談に比べてSNSは「相談やすい」という利点がある一方で、「簡単にやめやすい」という問題もあるのではないかと思います。

随分と長い記事になってしまいました。今回は「SNSカウンセリング」についての本を読み、普段の仕事のことも絡めながら感想を書きました。本のなかではどのような年代から相談が寄せられているのかについても分析がされていましたが、やはり10代が多いようです。普段10代の相談者と関わる機会が多い人はぜひ手に取ってほしい1冊でした。

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