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新しい顧客層を引きつける通信キャリアの戦略【2023年通信シェア・満足度セミナー Vol.2】

▼連載コラム
Vol.1 通信キャリアの市場動向と各社の挑戦
Vol.2 新しい顧客層を引きつける通信キャリアの戦略
Vol.3 ARPU増加への戦略と市場影響
Vol.4 今後の新規獲得とリテンションの鍵


オンライン専用プランが伸び率の課題に

では、通信サービスのシェア変化を見ていきましょう。

2023年2月の調査と比べて2023年9月の調査では、NTTドコモはahamo、KDDIはUQ mobile、ソフトバンクはY!mobileが増加しています。楽天モバイルは変化なく、1,000万回線を目指すには何か仕掛ける必要があります。
 
また、通信障害の影響も少しあると思いますが、キャリアの本ブランドが下がっている中でオンライン専用プランが伸びきれていないのが各キャリアの課題でしょう。

キャリアサブブランドが新規ユーザー獲得力を着実に維持

新規ユーザーの獲得状況を年ごとに見ていきましょう。

2020年には楽天モバイル、2021年には大手3キャリアでオンライン専用プランが開始されました。とくに楽天モバイルは、開始当初から爆発的にユーザーを獲得したことがわかります。
 
とはいえその後は失速しており、その失速に対して伸びているのがUQ mobileです。その前から徐々に伸びてはいたものの、2022年にはY!mobileを上回る獲得でした。
 
オンライン専用プランを見ると、ahamoとLINEMOは維持している状態で、povoは少し下がってきている状態です。これらから、Y!mobileとUQ mobileは着実に力をつけて新規ユーザー獲得を維持していることがわかります。
 
新規ユーザーにおいて、NTTドコモは学生による初めての通信キャリア契約が毎年非常に強いです。KDDIとソフトバンクももちろん獲得しており、この3キャリアが初めての通信キャリア契約を独占している状態となっています。

同キャリア内ユーザー流出による本ブランド回復の流れ

各キャリアユーザーのポートIN(流入)部分を2023年9月のデータで見ていきます。
「docomo→docomo」のような同一キャリアのプラン変更を除いた結果になっております。

まず、初めての契約はdocomoが約7割、auが6割、SoftBankが約5割になりました。初めて契約する小学生~高校生は3キャリアを選ぶ方が多い結果になっています。(関連調査:2023年1月初めてスマートフォンを持つ子どもと親への意識調査
 
楽天モバイルは2桁に届かず、キャリアスイッチングは強いですが、初めて契約する通信キャリアとして推進しないと3キャリアに対抗できないのではないかと考えています。逆に見ると、3キャリアの初めてのスマートフォンに対するプロモーションや今までのノウハウは素晴らしいです。
 
ahamoは約7割、povoは約6割、LINEMOは約3割、各本ブランドから流入しています。ahamoは以前よりは落ちていますが、それでも本ブランドから流れてきています。povoやLINEMOは楽天モバイルから流入が取れています。povoやLINEMOがdocomoの母体からも流入があると良いのですが、保守的なdocomoユーザーからの流入は結構苦戦しているとデータ結果から確認できます。
 
初めての契約に関しては、LINEMOがLINE使い放題などをつかって強化していけば、もっと他サービスに並べるのではないかと思います。とくにソフトバンクは、docomoやauと比べて初めて契約するユーザーの割合が低いので、SoftBank・LINEMO・Y!mobileでユーザーを取っていくのが良いでしょう。
 
Y!mobileとUQ mobileは各キャリアの本ブランドからの流入があり、ボリュームのあるところから流れているので、2サービスとも伸びている結果になっています。
 
次にポートOUTを見ていきましょう。

docomoユーザーは約3割ahamoに流れていますが、この割合を増やしていくことでahamoユーザーは増えていくと考えます。
また、ahamoからdocomoに戻る逆流の考え方もあります。初めての契約ユーザーをahamoで獲得し、それをdocomoに戻す。この流れが面白い発想になるのではないでしょうか。
 
Y!mobileからSoftBankのペイトクに入る、UQ mobileからauのau マネ活プランに入る流れで、ARPUを高めていくことが見えてくるシナリオになるでしょう。
 
流出を防ぐために、上記のようなデータのリテンションや、本ブランドへ戻していく割合を分析して施策などをうっていくと変化が出てくると思います。定量調査ではなく、インタビュー調査で背景などの詳細を調べていくことがおすすめです。


調査結果をMMD研究所に公開しておりますので、あわせてこちらもご覧ください。

2023年9月MNOのシェア・満足度調査
2023年9月MVNOのシェア・満足度調査
2023年9月通信サービスの料金と容量に関する実態調査
2023年9月スマートフォンOSシェア調査


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