町豆腐でやろうぜ!

 どうも。地域批評シリーズ編集長の岡野です。

 世間では「町中華」という言葉が市民権を得ています。町中華の定義は「地域に根差した昔ながらの大衆中華店」といったところでしょうか。今やこの分野のスペシャリストもいて、彼らがテレビ、雑誌、ネット記事などさまざまなメディアの取材で町中華を訪れ、その魅力を発信し、そのおかげで行列店になった店も少なくありません。

 私も町中華、たまらなく好きなんです。
 まずはビールかチューハイを頼み、つまみはチャーシュー、餃子、レバニラ炒め(店によってはお通しで出てくるザーサイやもやしナムルもよい!)。シメにシンプルな醤油ラーメン。この黄金律たまりません。

 実家の茨城、現在住んでいる墨田区内にも懇意にしている町中華があって、コロナ禍以前はけっこう頻繁に通っておりました。ちなみに地域批評シリーズの取材で地方に行っても、どこか1食は町中華で済ませます。町中華には大将の人柄や地域性が濃厚に出るので、その地域を知るにはかっこうの場所なんです。そんな町中華はもはや日本の大衆文化のひとつになったといってもいいかもしれません。

 ただ出る杭は打たれるってやつなんでしょうか、最近ネット上で、町中華や立ち食いそばを美味いといって有難がっているやつの気が知れない的な記事を見かけました。
 そのライター?は安いメシには基本美味いものなどないという主張のようです。ただ、たとえば町中華を味だけの視点で語るのが間違っていますし、定番の大衆中華の味とはそもそも絶賛されるようなものでもありません。
それに味覚には人それぞれに違いがあるのですから、酷い指摘をされたらその店のファンや常連客からすれば余計なお世話です。

 個人的に食べ〇グのグルメレビューも大嫌いなんですが、なかでもレビュアーが店の批判をしているのが気に入りません。彼らは自分の味覚が絶対的に正しいと思っているのかもしれませんが、そのうぬぼれは百歩譲っていいとして、食べてマズいと思ったら今後行かなくていいだけです。わざわざ発信する必要はないですし、赤の他人に飲食店経営者の人生を左右する資格はありません。有名レビュアーのなかには自分が神になったと勘違いしているような人もおられますが、先ほどの記事といい、飲食店やグルメについて、目立ちたいからと逆張りをするのはどうかと思いますよ。世の中には反論すべきことがもっといっぱいあるでしょうに。

 ついつい前置きが長くなりましたが、今回のお話のメインテーマは実は「町中華」ではありません。私が話したかったのは町の豆腐店のことです。私は町にある昔ながらの豆腐店を、町中華にちなみ、勝手に「町豆腐」と呼んでいるのですが、最近私の住んでいる界隈から町豆腐が全滅してしまったのです。私がこの世の中で一番好きな食べ物は「イカ」なんですが、実は「豆腐」も相当好きです。なんだか白いものばかりですが、決して心がピュアハートなわけじゃありません。

 私の場合、豆腐はスーパーではなく豆腐屋で買うのがデフォルト。1丁150円くらいはしますが、町豆腐で買った豆腐で夏は冷奴、冬は湯豆腐というのが晩酌の際の定番ツマミです。ところが今や我が家のそばに町豆腐はなく、かなり離れたところまで買いに行くしかありません。人によってはナニソレと思うかもしれませんが、私はこの豆腐をたずねて三千里状態に意外とショックを受けています。
 家にもっとも近かった町豆腐のご主人はもうかなりのご高齢で、跡継ぎがいないのはわかっていて廃業も時間の問題だとは正直思っていました。儲けもおそらくそう多くないですし、つらい仕事なので辞めるのも仕方ありませんが……たまに茶トラのにゃんこが店番をしていて、その姿を見て心が癒され、この子たちの餌代にと追加で油揚げや納豆も買っていたあの頃が走馬灯のようによみがえってきます(私、死ぬんでしょうか!?)。

 あのにゃんこが店を継いでくれていたら……

 どうやら書きながらショックで頭がイカれてしまったようです。今なら豆腐の角に頭をぶつけて本当に死ねるかもしれません。

 町豆腐は最盛期(昭和35年)には、全国に5万軒ほどあったようです。ところが今は7千軒ほど。都内にはもう600軒ほどしかありません。スーパーが豆腐メーカーを買い叩き、1丁50円を切るような激安の豆腐が並ぶようになったのも、町豆腐衰退の要因のようです。いくら豆腐の味がよかろうが、値段が違いすぎて個人店では対抗できません。本来豆腐は店の数だけ味があるといわれます。大量生産の画一化した豆腐の味では情緒もへったくれもありません。ただ私はグルメアナリストではないので、スーパーの激安豆腐をマズいとは言いません。情緒がないだけです。
 いやはやホント、我がテリトリーに奇跡的に町豆腐が復活しないでしょうか。マチドーフ、カムバ~ック!

 さて最後に地域と豆腐のお話を少々。豆腐の消費量都道府県トップ(総務省家計調査・令和元年参照)はどこだと思います? 

 答えは「静岡県」

 調査対象の静岡市民は年間48丁ほど豆腐を買っていたようです。2位は三重県で、3位は佐賀県。けどどうしてこれらの県が上位なのか理由が思い当たりません。ただ佐賀は豆腐どころにしてイカどころでもありますし、リタイアしたらゾンビランドに移住しちゃうのも個人的にはアリかなと。いっぽう不思議なのは豆腐や油揚げで有名な北陸3県(石川県・福井県・富山県)の豆腐消費量が軒並み下位なこと。北陸人は買わずに家で作っているのでしょうか? 

 ちなみに東京(区部)は29位。最近の都会人は豆腐をあまり食べないようです。ダイエットで豆腐バーは食べるようですが、それより冷奴もっと食べましょうよ。町豆腐を日本の伝統として守っていくためにも!!

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