振り返ったら、春は終わってしまう。
年々、自分を取り巻く時間がとてもはやく流れていく。
目の前にあるものが、まばたきをした瞬間、もう遥かうしろに過ぎているようだ。
そんな懐古的になることが増えたのは年齢のせいか。
春という時間、春という空気。
それはとても美しくて、とても儚い
卒業して歳を重ねても、深呼吸した空気や、頬を流れていく春風を、ふと振り返った瞬間に思い出す。
桜といっしょに、たくさんの感情が咲きはじめる。
楽しいだけじゃない、不安や緊張すべてが混ざり合って、甘酸っぱい、胸の奥が少し痛むような、そんな。
そんな特別な季節。
なにか新しいことをはじめたくなる。
新しいひと、新しい場所、新しいなにか。
そんな感情でいっぱいになるのだけれど、そう思っている間に通り過ぎてゆく。
春は必ず、なにかやり残してしまう。
それが、人がまた春を恋しく待ちわびてしまう所以なのか。
まだ先にあると思っている春。
振り返ると、もう遥か向こうに過ぎて行ってしまう季節。
春に忘れ物をしないように。
私の春をはじめようか。
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