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三毛猫に会えない日

蜂の巣坂の途中に、三毛猫が住んでいる。
両側には家が数件づつ並んでいて、おそらくどこかの家の猫だと思う。
でも、最近は会えない日が続いている。
側溝を覗いてみたけど、狭すぎて暗くてよく見えない。

三毛猫はいつも側溝の中から顔だけ出していた。
足音が聞こえて、隠れたのかもしれない。
側溝蓋のすき間から覗いているのだ。
私が通り過ぎるまで、じっと目で追っている。
白と黒とオレンジの三色で、可愛らしい顔をしている。
側溝から出てこないので、まだ体は見たことがない。
そのうち出て来るかもしれない。
全身の模様や毛色が見られるかもしれない。
顔見知りになれば、そばに来てくれるだろうか。
角を曲がるとき、いつも胸がドキドキした。

蜂の巣坂の三毛猫。
彼女(多分、メス猫)のことを、私は勝手にそう呼んでいる。
この坂の路面はちょっと不思議な格子柄で、ドーナツ模様と蜂の巣模様が交差している。
ドーナツ模様はよくあるけれど、蜂の巣模様は他で見た覚えがない。
急勾配でもないのに、何か理由があるんだろうか?
希少な三毛猫と蜂の巣模様は、どこか謎めいている。

三毛猫は、たまたまここに居ただけなんだろうか。
どこか違うところに、住んでいるのだろうか。
うちの棟のお向かいさんも、猫を数匹飼っている。
彼らは、何時でも自由に5階から階段を降りて出かけていく。
かなり遠くで見かけるので、その度に驚かされる。行動範囲が広すぎる。
もし、うちの猫たちが外に出たら、帰って来られないと思う。
年末にお向かいさんから、妹猫が家出したと聞いた。
三毛猫も家出したのかもしれない。

どこにいるんだろう‥‥
今日も散歩の途中で探してみる。
蜂の巣坂で、また会えるだろうか。

蜂の巣坂の付近で三毛猫を探してみた。


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