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「ハケンアニメ!」にもらったデッカい勇気

ハワイで起きたとんでも話の執筆をさぼっている間に、転職先が決まった。
エンタメ業界で、特に映画に関わりたいと吠え続けて右往左往した数ヶ月だった。

「映画以外にも興味のあることはなんですか?」
「希望とは異なりますが、検討してみてください」

あまりにも「エンタメ」「映画」を連呼するわたしに、エージェントの人は困っていたと思う。無謀なのは、こちらもずっと前から分かっていた。

そもそもの間口が狭い世界だ。

それでも、どうしても好きなこと(映画)を仕事にしたかったのだ。

大学4年の時も同じだった。あの時は、何の武器もないわたしを奇跡的に入れてくれたエンタメ系の会社が1つだけあった。

今回は経験もあるし、すぐに決まるだろうと思ったけれど、
現実はゼンゼン甘くない。

久しぶりのお祈りメールは相変わらず嫌なヤツだったし、
「(前職)辞めなければよかったのかな」と過ぎる日も山ほどあった。

面接で好きな作品の話をしても、上手く伝わらなかったこともあったと思う。

とまあ、そんなこんなで、
落ち込んだり虚無になったりしながら悲願の内定にたどり着いたのだ。

その会社の人は、わたしの話を「いいですね」と聞いてくれたし、
エンタメだけに絞ってみています、と言っても笑わなかった。

本当にうれしかった。

そこで、映画「ハケンアニメ!」のある場面を思い出す。

吉岡里帆さん演じる新人アニメ監督・斎藤瞳が、
隣に住む孤独な少年・タイヨウくんに言う

「この世の中は繊細さのない所だよ。
でも、ごくたまに君を解ってくれる人はいる。
解ってくれるような気がするものを見ることもある」

という言葉だ。

「解ってくれる」か。

わたしを受け入れてくれた会社との出会いもそうだし、
これまで自分が愛してきた作品たちとの出合いもそう。

わたしにエンタメが必要なのは、「解ってくれる」ような気がするからだ。

作品の余韻に浸りながら歩く帰り道、ドラマや映画、アイドルを見て現実逃避をしていた学生時代を思い出していた。

わたしにとっての「逃げ場」は、全部誰かが作った虚構の中にあったなあと思う。
だから、今度は自分が誰かにとっての「逃げ場」を作る側になりたい。

作中で描かれるアニメの制作陣は、
みんな辛そうだったけれど、みんな燃えていた。

やっている作業は違うのに、心の奥深くで繋がっているような信頼関係があって、ああいいな、と思っていたら涙がこぼれた。

今まで憧れてきた生き方を、初めて分かりやすいかたちで見ることができた感じがした。

脳みそをおすそ分けするような仕事だからこそ、妥協ができないのだろう。
それなのに数字で判断せざるを得ない厳しさも伝わった。

”リアル”の世界でエンタメエンタメと叫び続け、上手くいかずに勝手に孤独を感じていたわたしにとって、このタイミングでこの作品と出合えたことはご褒美だ。

ごくまれな、わたしにとってのエクレアだと思う。

虚構の世界なんてよく分からないものを扱うのは諦めて、”普通”に生きればいいのかな、なんて、もう思わなくて済みそうだ。

この作品を支持する声を見たという事実があるだけで、
もう寂しくもならなさそうだ。

今なら胸をはって、エンタメが、映画が好きだと言える。

それでも万が一、また寂しくなったら、
仕事をしていくうちに目的を見失いそうになったら、再び見返そうと思う。

ありがとう「ハケンアニメ!」。
わたしには刺さりすぎました。しばらくはまた頑張れそうです。










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