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サブカル大蔵経803藤田哲史『ドローン空撮で見えてくる日本の地理と地形』(実業之日本社)

久々、マニアックな著書と出会えました。街角図鑑と同じ実業之日本社に納得。ドローン映像の綺麗さを写真集のように見たかった気もしますが、あえて一枚の写真に情報を詰めすぎて見づらいくらい濃厚。
高速道路が日本のナスカ絵!

そして、各項目の「見どころ」が的確すぎます。文章が理系的で、でも暖かみがあり新鮮で、愛情を感じます。

それだけ集めて中学生の地理の副読本にして欲しいくらいです。

ドボクの面白さ!

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地元は今でも「シマ」と呼んでいる。新潟の乳の潟を新田開発して生まれた藤蔵新田。p.28

水田の中に浮かぶモン・サン・ミシェル。

砺波平野の散居村。平野の中に家屋が散らばっている散居村。家々には屋敷林が植えられ、小さな森が点在してるようにも見える。p.50

家屋の造はアズマダチ。

輪中。濃尾平野。p.58

河川と台風の重なり。

岐阜県郡上市油坂峠。/岐阜県と福井県を結ぶ街道の難所となってきた。/峠越えの大掛かりな土木構造物は必見だ。p.71

越美線の計画中止と1999年に開通した中部縦貫自動車道。ここ、昔バスで越えました。

高速道路の線形。日本の技術者たちはそれをうまく日本の風土に翻訳した。/高速道路の線形を空から眺めていると、道路設計に込められた技術者の美学とでもいうべきものが伝わってくる。p.74

ドイツの技術者クサヘル・ドルシュのイメージを日本に。昭和以降もお雇い外国人の伝統。ハイブリッド日本。

高速道路のジャンクション・インターチェンジ。北陸自動車道・立山IC。何やら巨人が両手を広げている姿に見えてくる。p.78

ナスカの地上絵!

鉄道の廃線跡。天理軽便鉄道・法隆寺線。天理市にある天理教本部への交通の便を図ろうとして法隆寺と天理の間に建設された鉄道だが、そう思惑通りにはいかず/この廃線跡の一番の見どころは、溜め池の中に土手を築いて線路を通した部分。p.86

鉄道と宗教のサンプル。

直線を通す。人が思い立って(自然発生的にではなく)交通路を作ろうとすると、それは直線を指向するようだ。p.90

リニア。国土を貫く直線の異様性。

根室地域の防御陣地跡。根室地域には、第二次世界大戦末期、本土決戦のために築かれた防御陣地跡が多く残されている。p.106

知らなかったです…。北海道が第二次世界大戦の最終決戦に想定されていて、その〈遺産〉があるとは…。緑につつまれた戦争。三里浜のトーチカ。友知岬や花咲港。

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