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サブカル大蔵経684寮美千子『あふれでたのは やさしさだった』(西日本出版社)

僧侶仲間である奈良の藤本くんが法話で紹介されていた本。

ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』でも作者が刑務所で教師をしていた時の描写がありましたが、想像もつかない場での出会いと、彼らの作品が鮮烈すぎる。

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ほんとうを言えば、いいところばかりお見せしているような部分もあります。もちろん、実際には、たいへんなこともあるんです。でも、それは彼らだけのせいではない。彼らの環境が悪かったことは事実なんです。p.24

 少年刑務所という存在の意義と矜恃

この瞬間、いきなりなにかが変わる。ほんとうに、一瞬で変わるのだ。演技をした子たちが、びっくりしてみんなの拍手を聞いている。p.65

 表現することで変わる。

先生。ぼく、今日、生まれて初めて、信用できる大人に会いました。p.71

 表現できません、と勇気を出して言うことが、しなくていいという選択肢を生む。この勇気こそ最も価値のある勇気かも。

この後、少年たちの作品が続きます。

ぼくは 黒が好きです
男っぽくて カッコイイ色だと思います
黒はふしぎな色です
人に見つからない色
目に見えない色 闇の色です
少し さみしい色だな と思いました
だけど
星空の黒はきれいで さみしくない色ですp.110

 星空の黒はさみしくない。

空が青いから白をえらんだのですp.112

 お母さんが病室で告げた青空

病院での母親の言葉を思いながら
すきな色 
ぼくのすきな色は青色です 
つぎにすきな色は赤色です
「僕はFくんの好きな色を、一つだけじゃなくて、二つ聞けてよかったです」p.120

 漫才の相方のような優しさ

サンタさん お願い
ふとっちょで怒りん坊の
へんちくりんなママでいいから
ぼくにちょうだい
世界のどっかに きっとそんなママが
余っているでしょう
そのママを ぼくにちょうだい
そしたら ぼく うんと大事にするよ

ママがいたら きっと
笑ったあとに さみしくならないですむと思うんだ

ぼくのほんとうのママも
きっと どこかで さびしがってるんだろうな
「社会」ってやつに いじめられて たいへんで ぼくに会いにくることも できないでいるんだろうな

サンタさん ぼくは 余った子どもなんだ
どこかに さみしいママがいたら
ぼくがプレゼントになるから 連れていってよ p.191

 私はどうなのだろうか。

はたと気づいた。わたしたちは「指導」をしていない。p.212

 教誨師に聞かれて。指導とは

「先生、変わらなくていいんですよ。元に戻ればいいんです」p.217

 少年院での少年の言葉。変化とは元に戻る、元に還るということか。

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