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サブカル大蔵経899フィリップ・C・アーモンド/奥山倫明訳『英国の仏教発見』(法蔵館文庫)

螺髪ゆえのブッダ黒人説。涅槃図は東洋の怠惰の象徴。ゴータマとルターを重ねた改革者ブッダ。英国がてこずるヒンドゥー教を改革した仏教の称賛。開祖以後堕落した仏教をカトリック批判の材料にする…。

西洋、特に英国によって仏教が手探りで探索されていく過程は、珍奇を超えてダイナミックな印象です。かえって清々しい。その後、欧州での仏教研究は飛躍的に進み、日本を飛び越えてしまいました。

その後日本でも明治初期に国際化の中で〈仏教〉は発見されました。日本の海外留学生はその西洋が発見した仏教を日本に逆輸入し、そこで西洋の仏教徒も利用されました。英国がカトリックやヒンドゥー教を堕とすためにブッダを発見したように、日本もキリスト教を堕とすために異国の仏教徒を利用したといえるかもしれません。

 宗派仏教から、テキストに基づく統合された原始仏教へ…。しかし実は私も、西洋バイアスのかかった仏教を受け入れているだけなのかもしれません。

日本人にとって、ある程度、身近にあり、ありきたりの存在と思われているであろう仏教を、本書を手掛かりにしながら、英国、さらには西洋という外部からの視線にさらされたものとして捉え返してみたときに(翻訳者あとがき)p.387

 英国が乏しい情報を手がかりに仏教を探究したように現在の時代環境だからこそ私が出会える仏教がありそうな気がします。

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「すなわちビルマ人たちはヒンドゥー教徒であるが、ブラフマーの信奉者ではなくブードゥー派で」(1872年マイケル・サイムズ)p.40

 ブッダとヴィシュヌとブードゥーと。

「すべての巨大な像を黒人の特徴が覆っていた。このことは、ブッダがどこかエチオピアの部族から出てきたという見解を裏づけている。」p.52

 英国出身の中国の宣教師の螺髪コメント

今や衰微した仏教に対抗して、前進し繁栄しているキリスト教を宣教する事業を正当化するイデオロギーを提供した。p.90

過去の理想的なブッダは評価するが、現在の仏教は消滅したことを材料にするえげつなさ。

「涅槃は仏教徒の最高善であり、怠惰な東インド人の現世、あるいは来世の幸福度の最高点である」p.108

 欧州から見た寝釈迦図へのツッコミ。

ブッダの立場は、ヒンドゥー教への敵対者だったと認識されることで大いに高められた。p.151

 英国のヒンドゥー教への嫌悪がブッダをアゲる。インド統治において英国は相当悩まされたのだろうか。

ルターと宗教改革者たちがキリスト教圏に対して行ったことをゴータマはインドに対して行った(1860年代半ばの『神聖文学ジャーナル』)。/ブッダとルターの対比、仏教とプロテスタンティズムとの類比が、仏教を解明するためだけでなく、反カトリックの論争のためにも役立ったことは明らかである。p.158.159

 釈尊はカトリック的なバラモン教に抗議したという視点。革命者、共産主義者というブッダ像は後にオルデンベルグ『仏陀』で訂正される。

進化論においても仏教においても人間と動物との区別が消滅していることに対して懸念を表明することが依然として可能だった。p.184

輪廻転生・六道と進化論!しかし、輪廻転生は仏教のオリジナルではないことを後にリス・デイヴィスに訂正される。

彼らの独身制、共同体の生活、僧院、声明による法要、数珠、断食、悔い改めは、キリスト教の修道士とよく似た雰囲気を与えます。p.260

チベットのラマは〈修道院〉だった。


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