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サブカル大蔵経568岸田秀『史的唯幻論で読む世界史』(講談社学術文庫)

アメリカを歴史的に精神分析すると、白人とアメリカが究極のいじめられっ子だったという衝撃の本です。昨今の白人至上主義の動きを見ると、この本のことを思い出していました。

最初の人類はアフリカに発生した黒人種であった。p.9

 人類は黒人しかいなかった。

その黒人種のあいだに白子(アルビノ)が発生し/彼らは毛色が違っていたために、黒人種からさらに差別されて、一万年ぐらい前、北の寒冷地のヨーロッパへと追っ払われる。p.10

 多数派の黒人に差別された少数派の白人が移動してヨーロッパになる。

エジプト人は黒人であった。奴隷は白人であった。p.10

 世界初の文明は黒人帝国。白人が奴隷。

この白人奴隷たちがモーセという指導者に率いられてエジプトから逃亡し、ユダヤ教を創始し、イスラエルを建国する。後にローマ帝国に迎合するユダヤ支配層に対して反乱したイエスは危険人物視され処刑される。その後にイエスのグループはパウロを指導者としてユダヤ教から離脱し、キリスト教を創始し、ローマ帝国の下層民の間に猛烈に広がる。ローマ帝国が植民地のヨーロッパに押しつけたキリスト教に文句をつける宗派がプロテスタント(文句をつける奴)と呼ばれ、その一派のピューリタンが、迫害され逃亡、成立したのがアメリカ合衆国。p.10-11要約

 西洋史とキリスト教の二千年を要約。

簡単に言うと、アメリカ人は、黒人に差別された白人の中でさらに奴隷にされて差別されたユダヤ人に差別されたキリスト教徒に差別されたピューリタンに端を発するわけで、つまり、四重の被差別のどんづまりの民族なのである。このような歴史的背景が、その抜群の軍事力で気に入らない他民族に攻撃し虐殺し、現代世界を支配しようとしているアメリカという国の思想と行動を説明するのではないか。p.12

 「差別=被差別連鎖史観」(p.118)

欧米人から教わった世界史をコマーシャルだと見ると、何だか腑に落ちなかった世界史がはっきりとよくわかるようになった。コマーシャルなのだから、欧米文明の悪事や欠陥は隠蔽され、この文明が最高の文明で、イスラム文明やアジア文明などの他の文明が劣っていることになっているのは当然であった。p.261

 岸田秀さんにしか書けないヒストリー。本書の中でも、ヨーロッパの歴史に「ちょっと待てよ」と疑問を持った学者の論争も掲載されていて、それを踏まえた岸田論文なのですが、まず、歴史の常識に疑問を持つことを教えてくれました。

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人類は家畜である。/自ら家畜になった。p.16

〈人種〉が在る理由。

白人種は人類最初の被差別人種だった。p.21

 暖かく動植物の豊かなアフリカを追い出され、寒冷で土地の痩せたヨーロッパへ。

ヨーロッパ人が書いた探険物語を読むと、アフリカ大陸は無知で迷信的な未開な土地になっている。p.52

 ヨーロッパ人が来てからひどくなった。

つまり、キリスト教徒にとってユダヤ教は、自分自身の劣った分身、見苦しい存在である事実をいやおうなく突きつけてくる分身なのである。p.88

 キリスト教とユダヤ人差別の理由

アメリカを打倒すれば一件落着というわけにはいかない。ナチスと同じ。p.91

 差別の構造が連環している。次に新しいアメリカが出てくるだけ。

北朝鮮は大日本帝國である。p.150

 昔から発言されているとのこと。

ギリシア=ローマ文化はヨーロッパの古典文化ではなく、近代ヨーロッパ人は、古代日本人が中国文化を、近代日本人が欧米文化を輸入したように、他民族他国の文化を輸入したに過ぎない。しかもアラブ人を介して輸入したのであった。p.176

 実はギリシア・ローマの直系ではないヨーロッパ。受け継いでいたのはアラブ。

宗教改革は、堕落したローマ・カトリック教会に対する弾劾という形を取っているが、ホンネはキリスト教そのものに対する、そして、キリスト教を押しつけたかつてのローマ帝国の残像に対する反逆であろう。p.266

 アーリア神話は、ゲルマン民族にとってキリスト教に代わる拠り所にした神話で、それがヒトラーを生んだと。ドイツのルターの動きはローマの植民地政策への対抗。

日本兵の死体からアメリカ、ヨーロッパ文明の起源に興味を持った。p.279

 東京裁判史観の根底のアメリカ帝国主義、ひいてはヨーロッパ中心主義の謎。


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