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サブカル大蔵経86広川洋一『ソクラテス以前の哲学者』(講談社学術文庫)

 紹介・解説・翻訳と、至れり尽くせり。著者の静かで真摯な使命感を感じます。哲学をサブカルチャーとして読む時代が来るならば、本書は貴重な聖典。古くて新しいモノの見方を、キリスト教以前のギリシャの考え方を、教えてくれます。

アリストテレスによれば、哲学者は、あらゆる事物の第一の原因、原理を知らねばならない。これを対象とする学が哲学であり、真の意味での知恵ソピアであるp.13

 〈原因を知る〉…あれ、仏教かな?

自然万有を統合的・統一的に理解するための出発点をアナクシメネスはアナクシマンドロスの「無限なもの」のように純粋に理論的・抽象的思惟のうちにあるのではなく、私たちが日常経験しうるものの世界の内部に求めた。それが「空気・アエル」p.62

 これも、大乗仏教の〈空〉かな?

ある時、ピタゴラスは、子犬が打ち叩かれているところを通りかかり、不憫に思いこういったと伝えられている。「やめよ、叩いてはならぬ。これは私の友人の魂だからだ。その鳴く声を聞いて、それとわかったのだ。」p.74

 ギリシャも輪廻転生?やはり、ギリシャとインド思想のつながりを感じます。

「浄め・カタルモイ」は神々の仲間へと立ち戻ったエンペドクレスが、人間の生が必然的に伴う穢れに対してその「浄化」の手段を具体的に語り聞かせることを目的としたもの。p.154

プラトン、ソフィストをいかさま師呼ばわり。p.178

 余計にソフィスト、気になります。

数多いソフィストたちの個性を要約することは容易ではないが、相対主義、懐疑主義、そして人間主義とでも呼ぶべき傾向を、私たちは彼らの思想に認めることができるように思われる。人間が万物の尺度であると言う言葉は端的に語るものである。客観的な絶対的な真理・尺度は存在しない。あるのはただ、主観的・相対的主義であり、従って各人にとって真実と思われるものは各自にとって真実なのである。p.179

 これ、キリスト教には危険思想かもしれないが、一番現代的な気がします。相対化…インドの〈六師外道〉と重なります。

人間にとって何であれ、望む通りになるということは、良いことではない。(ヘラクレイトス)p.246

 ここもすごい言葉だと思いました。願望が満たされることにより、人間が勘違いしていくことを戒めてくれているのでしょうか?

海は大地の汗。(エンペドクレス)p.287

 文学的表現ですが、海<陸なんですね。あ、しょっぱい原因の説明なのかな…?

真実を語るべきなのであって、長話をする必要は無い。(デモクリトス)p.347

 デモさんの性格も見えて嬉しいです。

生まれた子供がどんな子であれその子と一緒にやっていく。(デモクリトス)p.357

 デモさんのテレフォン人生相談。

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