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サブカル大蔵経814中森明夫『寂しさの力』(新潮新書)

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「おたく」の命名者として名高い中森明夫さんは私の世代より少し上のイメージで、「噂の真相」での連載が心強かったです。

ディズニー、ヒトラー、ジョブズ、坂本龍馬、大杉栄、酒井法子のお品書きの羅列が中森さんならではか。さみしさの世界史。

寂しさとは、仏教でいうと、カルナか?

カルナ、言葉にならないうめき。

うめきは、ヒトを人間にさせるのか、生き物に戻すのか。

母の「さみしさ」を肯定するために書くのだ。p.180

ドラマチックな新書。

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人はなぜさみしいのか。それは生まれてきたからでしょう。生きるとはさみしさを受け入れることです。さみしさを肯定することです。さみしい人ほどより生きている。p.5

 寂しさを「さみしさ」と書く、本書。

愛がないからさみしいのではない。さみしい心が愛を作り出した。p.4

 さみしさありき。唯寂論か。

さみしくても、大丈夫、ではない。
さみしいから、大丈夫。p.6

 さみしさ力。全肯定。

父はライオンズクラブ地区会長幹事。中森ライオン!ウォー!p.35

 中森明夫さんと両親の相剋。

悲しさは一瞬、さみしさは永遠ーー。それこそが父が教えてくれたことだ。いわば亡き父と私は「さみしさ」によって永遠につながっているのだ。p.63

 私も父の死に間に合わなかったからこそ、いまもつながっている感じがします。皆そうやって生きてきたのでしょうかと思います。

子供の時に欲しいと思っていながら、手に入れることができなかったものすべてをディズニーランドに盛り込んだ。つまり、ディズニーランドとは幸福な子供時代の再現ではなかった。全く逆です。不幸な子供の夢見た世界だった。p.81

 ディズニーのさみしさ。幸せの影に寂しさが浮かび、寄り添う。

ジョブズはディズニーのあの創造の狂気を受け継いでいます。ジョブズもまた親に捨てられたさみしい子供だった。捨てられた子供が、世界とつながろうとして、情報通信機器を産み出した。捨てられたことと、つながること。ジョブスの生涯は、その2つの言葉で要約できそうです。p.118

 スマホの、ネットの本質。さみしさ。

相澤会長曰く、松田聖子はO脚なんです。でもミニスカートでデビューさせた。彼女が欠点を隠したロングスカートでデビューしたらきっと売れなかったでしょうね。p.126

 アイドルという菩薩。欠点という如来。

山口百恵にとって、絶対になりたくないものこそ、美空ひばりの孤独でした。p.148

 「月刊プレイボーイ」での筑紫哲也インタビュー。美空ひばりと山口百恵。ひばりを否定ゆえの友和婚か。

山を下りたホッファーは、モンテーニュの引用なしには口を開けなくなっていたそうです。p.168

 部屋で本を読みすぎた今の私に近いような。


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