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終わる時間と残された者

残された者達。男3人。全員マザコン。
それぞれの悲しみはそれぞれにしかわからない。
それでも悲しんでられない者、悲しみに溺れる者、何も変わらない者。
皆このままでいる事は出来ないし、時は待ってはくれない。
生きてる以上食べなくてはならないし、洗濯しなければならないし、掃除もしなければならないし、生きていく為の努力と生活はしていかねばならないのだ。
それなのに、塞ぎ混んで病いにやられて前向きに生きていく事を拒否してるんじゃないの?と思われる兄や結局自分の事ばかりしか考えられない父の態度を見ていると、矢張りイライラが募る。
生前唯一(病気であっても)僕の主夫としての行為を心配してくれて全面的に肯定して感謝の言葉を投げてくれてた母親という存在が、もう居ないという現実に愕然として今更ながら大きなモノを失ってしまった喪失感に身を焦がしてしまう。
「誰にも愚痴を言うことも出来ない永遠に。」
その現実の重さに嫌気が差す。
結局、何も変わらない。
母親が居なくなったという事以外に。
前向きに生きる事は1人生きがってやった所で周りの家族がこの体たらくじゃやる気も失せる。
生活から何から(今回の葬式からこれからの四十九日事、事後の死亡に関する事)全て結局僕がやっている現実。
買い物も料理も掃除も洗濯も家庭に於ける全て全部は僕がやらなければならないという現実。
本当つくづく嫌になる。
なんで仕事も嫌嫌辞めて家庭に入って自分を殺していつまで暮らしていかなきゃならないんだ!
正直、このままだったらストレスで爆発してしまう。
でも放り出して居なくなる事も出来ないのも事実で腐っても家族。母親が好きだった家族。自分を殺してでも保ちたかった家族なんである。
何度も話し合いはしてきたけど、残りの家族は2人本当似たもの家族で「何事も続かない」性質でいつも最初の数日で「自分に負ける」
食べたものもすぐ片付けない、片付けたとしても中途半端。
やる事なす事抜けているそして自分が1番。まぁ甘ったれなんだと思う。
当初自分が1番甘ったれだと言われ続けたし自分自身もそう思ってたけどそうじゃなかったみたい。
今はこうやってやってればいい。
来年はもう許さない。
食い縛って生きてもらわなきゃ困る。
改革をしてもらわなきゃ困る。
嫌でも大人になってもらうからな!
覚悟しとけ!


思いだして気がついたアルツハイマーの予兆(4)

専門医の病院へと連れて行く。
そこは、意外と小さな診療所的規模で、患者でごった返してた。
「こんなにも居るのか」見るからに認知症と思われる患者ばかりだった。
約2時間ほど待たされて、ひと通りの認知症のテストや検査が行われた。
本人は多少嫌がったが無理矢理納得してもらうしかなく、「終わったら美味しいご飯に行く」という交換条件を飲んでもらって事なきを得た。
「結果なんですけど、アルツハイマー認知症で間違いないでしょう。でも比較的早期で発見出来たので良かったです。ヒロミさんの場合、糖尿病からの影響がとても強い因果関係があるので、糖尿病を治療しながら様子を見ていくという事です。そしてこれは理解して頂きたいのですが、今日本ではというか世界でも認知症を完全に治す薬も治療法もありません。症状を遅らせるという治療法しか今の所ないのが現状ですが、いい薬もあるので諦めないで頑張りましょう。認知度としては2ですね。」
やはりそうか。
もっと早く気が付かなかったのか?俺!馬鹿!
「2度と治らない」その言葉が胸を突き刺す。
母親は、ニコニコして外食行くのを今か今かと待ち望んでいた。

そして俺とこれから約5年間に渡って戦う愛ある戦争が始まったのである。

続く。

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