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「火の鳥」に学ぶ  死ぬのも死なないのも怖い

縦塗横沫日記7

僕は死ぬのが怖い。物心ついたときから怖いと思っていた。子どものころは楽しいことがいっぱいあったら、死ぬなんてことを考える時間がすごく少なかったはずで、でも夜、布団の中に頭を突っ込んで、息をひそめながらいつの間にか寝てしまうことが時々あった。その記憶が残っているので、今でも暗所恐怖症だし閉所恐怖症だ。棺桶のイメージもあるのだと思う。

 人生も半分以上が過ぎて、身近に死を感じることが多くなったいま、死への恐怖を思い起こすときに頭に浮かんでくるのは、手塚治虫さんの「火の鳥」のシーン。もう一度読んでみようかなと思って調べたら、いろんな物語でていて、しかも相互につながりがあると思われる、壮大かつ重厚なストーリーだった。そのなかで僕の記憶に残っているのは、きっと「未来編」だと思う。主人公が火の鳥の影響で、ずっと死ぬことが出来ずに、永遠に生き続ける。最後は大木か植物かになった覚えがある(今度、ちゃんと読み返してみよう)。そのときの主人公の心情が、死への恐怖をさらにかき立てるものだった。

家族も友達も、それこそ人間自体がいなくなってしまった世界を、一人で永遠に見つめ続ける「人生」。ぞっとした。死にたくはないが、家族や友人がいなくなった世界を、一人で生きていくのは想像を絶する。つまり人生は家族や友達や関わりのある人との関係性があって成り立つのだ。死ぬことは怖いが、ずっと生きることも怖い。そう思わされた漫画だった。

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