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原浩 火喰鳥を、喰う(角川ホラー文庫)を読んで
今回もネタバレをなるべく回避し、味覚や嗅覚で表現する抽象的感覚派読書感想文を書いてまいります。
作品は原浩さんのデビュー作、「火喰鳥を、喰う」です。
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ある出来事を契機に徐々に現実が変質していく恐怖を描く物語です。
主人公の雄司の元に、戦争で亡くなった大伯父の戦地で残した日記が届くと同時に、家族代々の墓石から大伯父の名前の部分のみ削り取られる事件が起きます。
2つの出来事をきっかけに、奇々怪々な事件が立て続けに起き、祖父が姿を消す事件まで起こります。
異常事態を解決しようと、不可思議な現象に造詣のある一人の人物を訪ねに行くも、奇妙な出来事は次々と襲いかかって来て……。
ホラーとミステリの要素を兼ね備え、恐怖と読みやすさを併せ持つ良作です。
最後もスカッとする終わり方ではないのも、作品の魅力を底上げしております。
こちらは読書初心者の方にも、少し変わった作品を読みたいと思う方、両方にお勧めできるかと思います。
不思議な風味ですが幅広い方にお勧めできる作品で、喩えるならばカエル肉を丸焼きにし、トマトで煮込んだような1品です。
カエルが姿を残したままトマトのスープから顔を覗かせる非現実性や、さっぱりと酸味が現実の冷徹さを表しているようです。
あっさりした1品ですが、奥底にバターのコクを感じられ美味なのです。
今回の読書感想文はここで終わります。ホラーを読みたい気分で少しでも気になった方は、ぜひ手に取ってみてください。
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