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工藤吉生の『未来』の短歌

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歌誌『未来』に掲載された短歌のまとめ。2016年1月号から。彗星集。 投げ銭方式なので、無料ですべて読めます。
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#作品

小学校とカズヨシの思い出【10首】

小学校とカズヨシの思い出【10首】

カナコちゃんと歩いていたらテッペイにからかわれたな黄色い校門

馬跳びは馬がいくらかマシだった他人の両手を押しつけられて

白ずくめになって給食当番をしているオレはよい子だったか

われながらひどく悲しい捨て台詞「漢字あんまり書けないくせに」

給食の時間に忘れた宿題をさせた教師の黒田 うらむよ

真剣に話していても嘘っぽい人がいるんだカズヨシもそう

カズヨシの頭を何度も叩いたな理科の磁石の授業

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レーズン岩

レーズン岩

税抜きにすれば安いが税込みになればそうでもない工藤です

なんのツボなのか忘れた親指と人さし指のあいだ揉みこむ

レーズンの埋まったパンはガキのころさわった岩を思い出させる

雑念というのはオレが普段から寝起きしているぬかるみのこと

木の棒につらぬかれてる塩辛いさかなも食べたお別れの会

文字だけでこんな光の感触を描けぬものかと思いつつ踏む

アンパンマンアンパンマンと呼ぶうちに泣き声になりエン

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パワーでかじる〈短歌9首〉

「パワーでかじる」

自転車を漕いでる足が二本ともはずかしくなるぴかぴかの朝

予報では雨だけれども降ってくる気がしない昼に青いガム踏む

ヘッドライトは二つの目だと思うとき肛門ふたつの生き物知らず

自動車の中に置かれたティッシュ箱にはなれないよオレは酔うから

小走りをやめてはじめてまたやめるおばあさんに何回も追いつく

ポスターに描かれた空き巣がどう見ても泉谷しげるだ春夏秋冬

ゆず・レモン

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「未来」2017年4月号に載った短歌

「未来」2017年4月号に載った短歌

誰も見てなければ頬にある肉を動かしてみるまだ笑えるよ

モンテスキュー、よかったな女子高生がさっきお前のこと言ってたぞ

ほう、犬の服が光っていることで安全性が高まっている!

一口をかじったら具がみんな出てやがて具のないオレのバーガー

なめんなよぶちかますぞと頑丈な壁を背中でズンと押しやる

歩道橋の上で出くわす細長い影の誰でもどうだっていい

リセッシュの隣に置いたファブリーズ仲の良くない夫

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