#未来
クイズノックほか ~『未来』2019年12月号掲載
クイズノックほか 工藤吉生
クイズノック二週間見てミョルニルとベイカーベイカーパラドクス知る
わるいときだけ思い出す肉体の臓器は幸福論に通じる
ビッグイシューの「イシュー」の意味を検索しきれいに忘れ現在に至る
まっしろなくしゃくしゃ紙を内に秘め買う者を待つブランドバッグ
聴覚の検査するとき押しボタン持ってクイズの緊張感だ
マジシャンが指から落とす砂のよう財布を出る出る出るレシートは
守護霊シクシクとかのやつ ~『未来』2019年11月号掲載
守護霊シクシクとかのやつ 工藤吉生
守護霊がオレのうしろでシクシクとシクシクとああ、ああシクシクと
首もげるくらい共感したというそのままもげて飛べばたのしい
そうこれが二十九度だよ冷房をなにもつけずにいてやや暑い
自販機のルーレットいま惜しかったもう一度やったら遠かった
あちらへと行きたいオレとこちらへと来たい見知らぬ人、信号機
短冊にねがいごと書くような人の願いがきれい叶ってほしい
枯れ枝と財布【短歌10首】 ~『未来』2019年7月号
枯れ枝と財布 工藤吉生
におい付きの風がでてきて春になる虫も変態たちも目覚めて
微笑んで穴掘る人はいないのだ「のだ」なんて言うから土になる
オレ、飛沫、わりと見るかも だいたいは透明なのが多かったかな
ピンクの雲いいなさわってみたいなあ財布にいくら入ってたかな
魔王と言い枯れ枝と言う子と父で馬の手綱を握るのは父
筆くわえアシカが新元号を書くみたいな・でかい白紙みたいな
体液を拭
ミューズさん ~『未来』2019年6月号
「ミューズさん」
むしゃくしゃな日でも遠景ゆっくりと近景はやく飛び去っていく
走ってる「時」に振り落とされるのは嫌だシワシワしたおでこ嫌だ
あたらしい波がいったん退いてそれを含んだ次の波くる
好きなだけ言わせといたら在日で生活保護で毛が無くて死者
消しゴムがないからツバで消したって少し離れた席で荒れてた
細ければいいのかよ!? って怒ってた脚線美コンテストのタモリ
母親の故郷と旧姓お
平成三首、そのほか【短歌10首】 ~『未来』2019年5月号
平成三首、そのほか
平成のはじめに性に覚醒しあくびしながら平成おわる
年号がうつるくらいじゃ変わらんよ、人は 奥から牛乳えらぶ
振り向けばうしろすがたの平成が後ろ歩きをしているでしょう
デパートとデパートつなぐ空中の通路に人っぽいもの揺らぐ
一点の撮ったおぼえのない画像でてきて知っている白い壁
筋トレじゃなくて赤ちゃんあやしてる動きも視野に信号を待つ
赤ちゃんのころのアルバムひらいた
男乃道 【短歌10首】
「男乃道」 工藤吉生
誰か死ぬたび平成が終わったと言われて飽きる平成の終わり
九千円たしかにあって受け取ってけれどもごまかされてる感じ
レシートはいろいろ書いてあるねえとひらひらさせるゴミ箱の上
理想郷 生寿司(2割引)のあとヨーグルト(58円)もある
そんなのがいくらでもでてくるんでしょピアノと管楽器の二重奏
ぐきぐきに曲がった松の枝振りの「でや」とテニスの球を打つ人
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