#短歌
クイズノックほか ~『未来』2019年12月号掲載
クイズノックほか 工藤吉生
クイズノック二週間見てミョルニルとベイカーベイカーパラドクス知る
わるいときだけ思い出す肉体の臓器は幸福論に通じる
ビッグイシューの「イシュー」の意味を検索しきれいに忘れ現在に至る
まっしろなくしゃくしゃ紙を内に秘め買う者を待つブランドバッグ
聴覚の検査するとき押しボタン持ってクイズの緊張感だ
マジシャンが指から落とす砂のよう財布を出る出る出るレシートは
守護霊シクシクとかのやつ ~『未来』2019年11月号掲載
守護霊シクシクとかのやつ 工藤吉生
守護霊がオレのうしろでシクシクとシクシクとああ、ああシクシクと
首もげるくらい共感したというそのままもげて飛べばたのしい
そうこれが二十九度だよ冷房をなにもつけずにいてやや暑い
自販機のルーレットいま惜しかったもう一度やったら遠かった
あちらへと行きたいオレとこちらへと来たい見知らぬ人、信号機
短冊にねがいごと書くような人の願いがきれい叶ってほしい
平成三首、そのほか【短歌10首】 ~『未来』2019年5月号
平成三首、そのほか
平成のはじめに性に覚醒しあくびしながら平成おわる
年号がうつるくらいじゃ変わらんよ、人は 奥から牛乳えらぶ
振り向けばうしろすがたの平成が後ろ歩きをしているでしょう
デパートとデパートつなぐ空中の通路に人っぽいもの揺らぐ
一点の撮ったおぼえのない画像でてきて知っている白い壁
筋トレじゃなくて赤ちゃんあやしてる動きも視野に信号を待つ
赤ちゃんのころのアルバムひらいた
東京へ、授賞式へ【短歌10首】
東京へ、授賞式へ 工藤吉生
オレの行くときだけ雨がやんでいる予報だったがもう過去のこと
革靴になじまぬ足で歩いてるいつもの道が水中みたい
新幹線 何年ぶりに 乗ったかな 「ん」が3つある しんかんせんに
人混みを我慢して行くガマンしてがまんしてまだひとごみのなか
狭くって高くて不味い東京のうすぐらい店も旅の思い出
地下道をながく歩いて外へ出た雨の水面を白鳥うかぶ
TOKYOは外国
エライ【短歌10首】
「エライ」 工藤吉生
よいしょ、って座ったソファが思ってたよりも深くて天をあおいだ
眼球のない目でこっちをにらんでるマネキンのコートもう秋だねえ
何時間寝たか計算しているがよくわからない二時間がある
玉ねぎが十キロ入っている箱を持ち上げるときこころはひとつ
悪臭はするけど誰がすかしたかわからぬ電車の客、客!客。客?
コインだと思えばあまり痛くないすごく激しい雨のつぶつぶ
クイズ出し
男乃道 【短歌10首】
「男乃道」 工藤吉生
誰か死ぬたび平成が終わったと言われて飽きる平成の終わり
九千円たしかにあって受け取ってけれどもごまかされてる感じ
レシートはいろいろ書いてあるねえとひらひらさせるゴミ箱の上
理想郷 生寿司(2割引)のあとヨーグルト(58円)もある
そんなのがいくらでもでてくるんでしょピアノと管楽器の二重奏
ぐきぐきに曲がった松の枝振りの「でや」とテニスの球を打つ人
トラックに
変人はみだし放題【10首】
「変人はみだし放題」
変人が生えてきそうなあたたかい日差しだ さてと散歩に行こう
ギター弾く人のうしろを通るとき振り向かないでくれと願った
ジャヌカンの「鳥の歌」には「笑わせてやりたい放題」という歌詞あり
ふざけてる替え歌みたい制服の上に乗っかるオレの顔面
声のでる自販機いなくなってから記憶が鳴らすイラッシャイマセ
つかのまの光は自分に影がある事実を思い出させてくれた
DOUTORの