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大規模怪異発生日記17

主な登場人物


万禮ばんらい久幸ひさゆき、ヒー、始祖:
かど凌司りゅうしのバンパイアにおける直系始祖。
かど凌司りゅうし、りゅーし:
万禮ばんらい久幸ひさゆきのバンパイアにおける直系係累。
左から
大空ひろたか久幸ひさゆきの実兄スカイの伴侶。鳥人。
千夜ゆきやす久幸ひさゆきの兄の子孫。久実ひさのりの母方の祖父。
久実ひさのり久幸ひさゆきの兄の子孫だが、
ヒューマン社会には久幸ひさゆきと共に
二卵性双生児と偽って生活している。千夜ゆきやすの孫。
左から
西田にしだ絵理香えりか凌司りゅうしの元妻。朗正あきまさ華代かよの生母。
朗正あきまさ凌司りゅうし絵理香えりかの子。母と同居。
華代かよ凌司りゅうし絵理香えりかの子。幼少時に父方祖母の養子となる。
左から
ラン:久幸ひさゆきの友人。凌司りゅうしの恩人。
トゥ、師匠:久幸ひさゆきの友人。凌司りゅうしの魔術の師。
泰市たいち:ランとトゥの伴侶猫。

話中の万禮一家は、 メンバーシップ「夢了の皿」会員の万禮様のオリジナル・キャラクターで 設定その他は会員様御本人と話し合っております。 711号室出演者≒メンバーシップ会員様は常時募集中です♡ 万禮様の偶さか日記も併せてお読みいただくと解像度とエモさが跳満です。



暗夜迷宮日記スクショ 第十七更新分
20230422~20230425
テキストは以下

20230422

師匠の誕生日を祝った。
師匠は爽やかな香りを好むようだったので
ハーブの寄せ植えを庭師に相談して作った。
土壌・水量・日当たり・繁殖力……
様々な要素の好みだけでなく相性まで考慮せねばならぬそうで
初心者には三種類がやっとだった。
ジャーマンカモミールとレモンバームとレモンバーベナ。
レモンバーベナが猫には良くなさそうだが、
人語を解する泰市さんなら大丈夫だろう。
師匠宛に注意書きのメモ帳を添え、
泰市さんの似顔絵に掌マークを重ねた札をプランターにも立てておいた。
安全に楽しんでもらえることを願うばかりだ。


20230423

泰市さんが私の描いた似顔絵に気付いてくれたそうだ。
こちらでは鏡に写った自分を
認識できる猫からしてとても少ないそうなのに、
似顔絵を自分のものと認識までしてくれたと言うから感動だ。
そんな喜びと感動の午前だったが、
午後は少々修羅場だった。
元妻絵理香が訪ねて来たのだ。
私の書斎と始祖の居室に
邸内を映す防犯カメラのモニターを
先週に始祖が導入したお蔭で知る事ができたのだが、
絵理香は受付アンドロイドの真代を遠目で見るや否や、
駆け込んで来てカウンターを乗り越えて
真代に掴み掛かったのだった。
以前なら薄ら笑いでも浮かべていた筈だった私だが、
絶叫して階段を駆け下りた。
「何考えてる!」
「ああ、アナタ、コレ作り物なのね」
西田・・絵理香さん・・、器物損壊で警察を呼びますよ」
「面白い冗談を言うようになったのね」
「冗談なんかじゃありませんよ。
受付業務をしたくない私の為に、
社が幾ら掛けてくれたと思ってるんです」
「……御免なさい、ねぇ、そんな怖い顔しないで」
「一応訊くけど、何が気に入らなくてそんな真似を?」
「アナタに色目使ってる女だと思って」
「だとしても! 
君にそんな行動をとる権利は無いだろう」
「どうして? どうしてそんな酷い事を言えるのよ!
アナタは圭凌司、私の永遠の伴侶じゃない!」
「君がそれを反故にしたの、覚えてないとは言わせませんよ」
「アナタ、アナタじゃないわ……誰なの?!
出て行きなさいよ! 此処は私の夫の家よ!」
「夫じゃない」
「失礼! 失礼しますがね、此処は俺の家です。
そしてこの男はニシダエリカさんの夫じゃなくて、
しがない男やもめで、今現在俺の最も大切な男です」
「《は?》」
「何ですって?」
「凌司君、エリカちゃんにはちゃんと言ってくれって言ったろ。
俺と住んでるって言ってなかったのかよ。
《バンパイア式催眠術のお披露目をご希望か?》」
「…………そうだったな、済まなかった。
《いや、未だ結構、だと思う。
来てくれて助かったよ、これで帰るだろう》」
「ア、アナタ……ソッチに行っちゃったのね……
分かったわ、男の人じゃ私勝てないもの……帰るわ。
送ってくれなくて結構よ」
言われなくても!!
……他者から見たら楽しいだろうなぁ。
何時かネタにしてやる。


20230424

愛息朗正が花束を抱えてやって来た。
私の始祖との第二の人生を祝福するそうだ。
……絵理香に真実を知られると面倒この上ないので
そういう事・・・・・にしておいた。
秘密を共有させる事は負担を強いる事に他ならない。
私には朗正を実直な人間になるよう躾けた責任がある。
同居する母親に嘘を隠して生きさせるのは間違っている。
過去に吐いた嘘を自己満足の為に明かす人間にだけは
なりたくないと願って生きてきた。
良心の呵責を一生抱いて生きる覚悟で
嘘は吐かれるべきだ。
そういう訳で朗正にも真実を明かさなかった。
どうせ私は己が既に人間でないという事から隠しているのだから、
彼等の日常と未来を護る嘘を窮めてやろうと決意した。

20230425

河原を歩いていたら殺気を感じたが
それは一瞬で奇妙な気配に置き換わった。
どうもこの辺りでは、
この川沿いが始祖の縄張境界線らしいので
最近は気を抜かぬよう用心している。
此処を通らずとも用は済ませられるのだが
何故か河口に近いこの川独特の薄い磯臭さに惹かれるのだ。
謎だ。潮風の香りは苦手なのに。
謎ゆえに捨て置けない。
欠落している同僚の記憶と関係があるかもしれない。
……関係があってほしい。


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