偶さか日記１０（暗夜迷宮PC日記）
イラストやスタンプは全て嘉又夢了氏
文中の凌司君は氏のキャラクター。
事前に関係を組んでいます。
４月１６日
偶に世間話する仲だった陽桜市内住みのオッサンが手前の息子と息子の記憶を取り戻していた。
何事も無かったように修復されるってのは厄介でもある。
坊主は高校生だが陽桜中央高じゃなく、陽桜中央なんざ脇も通った事無ぇらしい。
どうやって帰ってきたのかすら分からねぇんじゃ、統計が取れないから厄介だ。
花子チャンをしつこく深追いすれば凌司君の娘と同僚が戻る可能性が有るのか無いのか、他所を当たった方が良いのか…俺達末端に知らされねぇだけで桔梗院が把握してるんならまだマシだが。
４月１７日
珍しく久実から直電が鳴った。
直電を寄越す時は余程の急用だから身構えたが、極々平和な急用で胸を撫で下ろした。
ランチャンがこっちの靴屋に来たんだがサイズが無かったと。
正月に見かけたランチャンと同じ位の背丈のオンナノコ達が何処で靴を買ってるか知らないかと。
トモダチの為に奔走するのは良い事だ。
こういう急用は大歓迎だぜ。
とは言えウチの女性客も１６０未満が大多数で普通の靴屋しか思いつかなかったから、１８０超えの父親の娘ならデカいんじゃねぇかと思って、凌司君に精神感応念話で訊いた。
ちょっと迂闊だった。そうだよ、凌司君と娘は娘が小さい頃にもう別居してずっと会ってなかったんだったよ。
それでも凌司君は一瞬たりともムッとした空気を出さず、コッチの問題を察知して良いアドバイスをくれた。やっぱ良いヤツだなぁ。
４月１８日
バイト先にバンパイアが来た。
バイト先は界狭間を使ってショートカット通勤している都心の繁華街だから誰が来ても不思議はない。
ニンゲンを巻き込むと百年単位の嫌がらせ付き禁固刑だから、余程自棄になってなきゃ喧嘩を売ってくる事は無いが、ものを知らないバンパイア歴の浅いドマゾでは話が変わるらしい。
ドマゾにはドマゾが泣きを入れるような刑が課せられるのに、コイツの周囲はコイツに何も教えてねぇらしい。
俺ともう一人の男性店員に嫌がらせを始めた。
彼はニンゲンの社員で監視カメラの下マニュアルを外れた受け答えはできないから、俺が精神感応念話をヤツに無理矢理ぶち込んでやった。
バンパイア同士の精神感応念話っていうのはチャンネルを開いてない相手には聞こえないモンだが、無理矢理相手のチャンネルをこじ開ける事は俺には結構簡単だ。
こじ開けられた方は頭痛や吐き気を催す。
ドマゾでも頭痛と吐き気はこたえたらしく、口汚く毒づきながらも大人しく出て行った。
ウチの服屋は店長も社員の９割もニンゲンだが、ＣＥＯと１割の派遣社員と言う名のバイトがバンパイアだ。
防犯カメラの映像を「要教育的指導」と題して専用回線でＣＥＯとバンパイア協会に送った。
今日の明日でまた都心に出てくるのは危険な予感がしたから、ナ×キの最寄り店に連絡して、ランチャンの御所望品を確認して無い物を明昼までに揃えてくれるよう頼んだ。
４月１９日
俺は人がセール会場じゃない所で買い物する姿を眺めるのが好きだ。
納得いくまで試着して合わせる物を思い浮かべて悩みに悩む姿を眺めるのが好きだ。
今日は良い日だった。
４月２０日
ター坊が同族の縄張荒らしに襲われた。
ター坊の武闘派女房が撃退して事無きを得た。
今年の春は暖かくなるのが早かったせいか、頭に虫が湧いてるバンパイアが多過ぎる。
４月２１日
凌司君が同族の縄張荒らしに襲われた。
偶然一緒に散歩してたランチャンとトゥチャンが撃退したが、こっちは事無きとは言えねぇ。
ランチャンは確かに強いが、ター坊の女房と比べたらまだまだお嬢さんの域だから、次を警戒しなくて良いと言う訳にはいかねぇ。
俺にちょっかい出してくる中でもドサドの雷霆野郎に襲われたらあっけなく倒れちまう。
ランチャントゥチャンが怪我でもしたら環を持つ土塊の星の施政者連中が星の威信を賭けてこの星に強気の交渉に出るだろう。
戦争になりかねないって事だ。
だからバンパイアにはこの星のニンゲンに傷を負わせるよりずっと重い刑が課せられる。
ああはなりたくねぇな。
俺なんか寂しがり屋だから独房禁固なんか喰らったら数日で死ぬ自信あるぜ。
４月２２日
マー坊が同族の縄張荒らしに襲われた。
相手は最悪のドサドの雷霆野郎だ。
昨日の三人が同じ河原を歩いたのが今日じゃなくて心底良かった。
昨日トゥチャンに罠魔法符を依頼したら夜中に大量に届けてくれたから即座に罠を縄張境界線上に張り巡らせたが、マー坊は察知能力が高くて俺を呼ぶのが誰よりも早いから安心して囮を頼める数少ない弟分係累だが、それでも勝てる見込みは五分の災厄野郎だ。
勝とうと考えていないヤツに勝つのは至難の業だからな。
嫌がらせに容易く命を賭けるヤツに勝つ為には、コッチも命を賭ける羽目になる。
俺は未だ死にたくねぇ。
雷霆野郎には直系だけで係累が３桁いるって噂だったから、バンパイア協会に引き渡した。いや、俺はもう係累が増えるような真似はやらかさねぇと決めたんだ。
協会の担当に言わせると処刑した相手の係累の世話なんざ協会に丸投げで構わんそうだが、俺がそれはキモチワルイんだから仕方ねぇんだな。
損な性分だとは俺も思うが仕方ねぇ。
４月２３日
受付アンドロイドの真代が凌司君の元妻エリカに襲われた。
エリカのプッツン具合を目の当たりにして俺は吃驚仰天。
手前で男を作って凌司君を追い出して離婚届も手前で出してる癖に、凌司君を永遠の伴侶と呼んで縛り付けて、真代を間女と決めつけて襲い掛かるなんざプッツンも良いトコだろ？
堅気の五十路女がカウンターを乗り越えて真代に飛び掛かった姿はフィクションの良い資料として売れそうじゃね？
俺は…痛恨のミス。気付いたらやおい案件を提供してた。
「失礼！失礼しますがね、此処は俺の家です。
そしてこの男はニシダエリカさんの夫じゃなくて、しがない男やもめで、今現在俺の最も大切な男です。」
嘘は一つもついてねぇんだが、どう聞いても薔薇案件にしか聞こえねぇよな。
思惑通りエリカは大人しく帰ったし二度と来なさそうだったから、良しとする。
凌司君は本気で怒ると終始丁寧語を徹す事が分かった。
しかしこの男が本気で怒った事はニンゲン時代には無かった事が聞き込み調査で判ってるから、俺は注意深く見守らなきゃならない。
バンパイア移行期には人間性が変わっちまう事の方が多いからだ。
４月２４日
久しぶりに平和な一日だった。
探索先が公園じゃなきゃなぁ。
公園ってものにはちょっとしたトラウマがある。
４月２５日
一昨日昨日今日と毎日トゥチャンの罠に同族の縄張荒らしが一人ずつ掛かっていたので連行していましたとバンパイア協会から事後報告があった。
ヤツ等にバンパイアである事以外の共通点は無いようだが、俺個人に何か因縁があるかもしれないから思い出してくれってのが本題だった。
俺の縄張で誰かを襲おうとしたが罠の発動の方が早くて、俺のバンパイアアンテナにも引っ掛からなかっただけらしい。すげぇなトゥチャン！
ウチ以外が侵犯を受けた形跡は今の所無いらしい。
始祖も元の地元も現在の本拠地も担当者も共通点が見当たらないとは、まるでネットで立ち上がったテロ国家みてぇだ。
今の所の目的が嫌がらせだから１人ずつ来てるんだろう。
一斉に攻められたらとブルッたら思う壺だ。
怯えやしねぇサ、トゥチャンに罠を発注すれば済むハナシだからな。
あの罠魔法符があそこまで良い仕事をしてくれるとは、正直全く思ってなかったから大感激だ。
バンパイアがニンゲンだった頃の写し絵も何かの魔法の激レア材料になるらしいから、俺の若い頃の肖像の唯一残ってるヤツをトゥチャンにやる事にした。
久々に見たが、可愛かったなぁ俺！
４月２６日
トゥチャンが届けてくれた罠魔法符の追加分を都外の縄張にも設置しに行って帰ってきたらまた１人掛かってた。 都外の縄張は今の所平穏無事そのものだったが、都内は今まさにバンパイア協会が連行する所だった。 確実に「バンパイアの縄張荒らし」を察知して、俺にも察知させない瞬速で無力化捕縛して、バンパイア協会へ通報と連行依頼する…この星で現在進行形で進化し続けてるＡＩを活用してもたった一枚のユ×紙だけでできる技術は無い。すげぇよ、トゥチャンの魔法！ つか、大丈夫か今年？！ 地球温暖化ってバンパイアの脳みそも狂うのか？ いい加減懲りる頃だろうよ。
#暗夜迷宮 #万禮久幸 #圭凌司 #バンパイア #嘉又夢了 #日記 #小説
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