■トップの責任。背負う覚悟はあるか!

所属員5000人弱とはいえ、労働組合の委員長を務めていた時のプレッシャーは非常に大きいものがありました。
組合員全員が納得できる政策ってないんですよね。
「子育て育成支援」関連の制度を整備した際も多くの反対意見や批判をいただきました。
自分以外の人にしか恩恵がもたらされない、というケースでは確実に何かしらの不満や批判が出てきます。

例え組合員全員が喜ぶはずの「ボーナスUP」が実現しても、配分(=個々人の評価)によって批判も不満も出るんです。

これが組合員にとってデメリットとなる政策、例えばボーナスカットのような話であればなおさらです。

例えば、の話です。
あくまで、例えば、の話ですよ?

監督官庁から「人件費削減しなかったら、どこかに吸収合併させる。従わなければ潰す」と言われたとしたらどうします?
それを理由に会社から「ボーナスカット」の話を打診されたら組合執行部として賛成も反対もないですよね?
でも、これを組合員にそのまま伝えてよいかというと非常に難しいのです。

一人ひとり丁寧に時間をかけて説明すればわかってもらえるかもしれませんが、会社の財務内容を理解できる組合員は少なく、組合員全員に説明してまわることは不可能ではないか?
会社への不信感につながらないか?
モチベーションが下がってしまうのではないか?
退職を考える組合員が増えてしまうのではないか?
もし万が一、組合員からお客様に洩れてしまったら、信用不安を招いて更なる業績悪化につながりかねない
もし万が一、組合員から情報が流出したことが監督官庁に伝わってしまったら?

組合の執行部は悩んで悩んで、「組合員にとっての本当の幸せとは何か」を考え抜いて、自分たちが泥を被り、監督官庁の話は伏せ、何かしらの理由を考えて組合員を説得する、という決断をせざるを得ないのかもしれません。

監督官庁からの命令でやむを得ず、ということを組合員に伝えてしまえば、執行部は批判をされずにすみます。
でも「組合員にとっての本当の幸せ」を考えるならば、組合員から
「お前ら会社の犬か!」
「第二人事部なのか!?」
「組合費返せ!」
等々、数々の批判を受けながらも「組合員の本当の幸せを守る」という責任を果たさざるをえない時があるのです。

それだけ組織のトップは責任を負っているのです。
そして「組合員から理解してもらえない」という孤独の辛さを感じているのです。
それでも、組合員のために頑張り続ける。
そこに組合執行部の輝きがあるのだと私は思います。

でもこれは組合だけの話ではありません。
部長。
課長。
組織のリーダーはすべからくこの矛盾、責任の重さ、孤独を感じていることと思います。

もしそんな時に、部下の中でたった一人であっても、管理職の辛さを理解してくれる人がいたら。
組合員の中にたった一人でも、執行部の苦しみを理解してくれる人がいたら。
組織のトップはその責任を全うする勇気を得ることができるのです。

上司のこと。
組織のトップのこと。
批判することばかりが目についてしまう方はぜひ!彼ら彼女らの苦しみに目を向けてみてください。
自分が物事の一面しか見えていなかったことに気が付くことができれば!
きっとその気づきこそが、より良い組織をつくる第一歩になりますよ。

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