ハイトーンを出すのに適切な状態の息を出せていますか?~息の音を使った画期的な確認方法
今回の記事は、下記の記事の内容をより分かりやすく再構成したものです。
トランペットに限らず、全ての金管楽器に共通して使える【息の音を使った体の中の状態のチェック方法】に関してご紹介します。
1.ハイトーンを出すための条件
ハイトーンを出すためには、大きく分けて以下の三つの条件が必要です(厳密にはハイトーンに限らず全ての音に当てはまります)。
適切な状態で息を出すことができている(体の中の状態)
適切な状態のアンブシュアになっている
その他(姿勢、楽器の角度など)
この三つのうち、三つ全てが揃った場合に奇麗な音を出すことができますが、一つでも揃わないと【奇麗に音がでない(一応出てはいるがカスカスで使い物にならない)】【そもそも全く音が出ない】という状態になります。
三つの条件の組み合わせを表にすると、上のように六通りの組み合わせになります。
奇麗に音が出せた場合は【a】だとわかりますが、そうではなかった場合【b~fの五通りのうちのどれなのか】を判断するのは非常に難しいです。
2.切り分けが重要
ほとんどの場合、ハイトーンの練習をする際に実際に楽器を吹いて狙った音が出せたかどうかで判断をしていると思います。
しかし、狙った音を奇麗に出せた場合は問題ありませんが、出せなかった場合に先ほどの組み合わせの【b~fの五通りのうちのどれなのか】を判断するのは非常に難しいです。
楽器の演奏に限った話ではありませんが、何かしらの問題を解決する際【どこで問題が発生しているか】を特定するために【物事を細かく切り分けて】個別に検証する手法が非常に有効です。
先ほどの三つの条件をそれぞれ【個別】に【適切な状態になっているのか】をチェックすることができれば問題の解決に近づきます。
3.適切な状態で息を出せているかのチェック
この記事では、三つの項目のうち一つ目の項目である【適切な状態で息を出すことができているか】に関して、誰でも簡単に個別にチェックすることができる画期的な方法をご紹介します。
既存の方法の問題点
現在、ハイトーンを出すこつとして一般的に認知されている方法として
・口の中を狭く
・息を細く
・息のスピードを速く
・舌の位置
・シラブル
などが存在します。
しかし、これらの【狭く】【細く】【早く】などの説明は曖昧過ぎて【どのくらい狭くすると何の音がでる】といった具体的な説明をすることができていません。
そのため、例えば【口の中を狭くして吹いてみたがハイトーンが出なかった】場合、
・口の中を狭くし過ぎたのが問題なのか
・口の中を狭くし足りない(広すぎる)のが問題なのか
・狭くする場所が間違っているのか
・それ以外の門外なのか
を判別する方法がありません。
しかし、今回紹介する【息の音を使ったチェック方法】を用いることで【今の息の出し方(体の中の状態)】が【今出そうとしている音に対して適切な状態なのか】を誰でも簡単に判別できるようになります。
息の音を聞いてチェックする
一般的にはほとんど知られていませんが、実は楽器でB♭の音を出している時【唇が振動する】よりも前の状態で既に【息がB♭の音】を出しています。
まずは次の動画を見て楽器でB♭の音を出している時は息の音もB♭、楽器でFの音を出している時は息の音もFになっていることを確認してください。(息の音が小さいので大きめの音量推奨)
次に、実際に自分で楽器を使って試してみてください。
その際
・楽器を離した後にアパチュア(唇の間の空気が出る穴)をすこし広げる
・アパチュア意外は可能な限り変えない(喉や口の中が閉じたり広がったりしないように注意する)
のがポイントです。
アパチュアが閉じていると息がどんな音を出しているのかを判別するのが難しくなります。
まずは、【楽器から出ている音と息の音が同じである】ことを実感できるまで繰り返してください。ここを理解できているかどうかが非常に重要です。
ハイトーンを吹くときの状態のチェック
ハイトーンが奇麗に出せない場合、【息の出し方=体の中の状態】が適切な状態なのかどうかを判断し、適切な状態ではなかった場合は【まずは楽器を使わずに息だけで適切な状態になるまで練習をする】ことで非常に効率よく上達することができます。
まずは、体の中が適切な状態になっていない例です。3~5秒あたりの息の音が【何の音なのかわからないただの空気の摩擦音】になっているのがわかるでしょうか。
次に、体の中が適切な状態になっている例です。
先ほどに比べると、息の音を聞いて【何の音を出そうとしているのかが判別できる】と思います。
このように、息の音を聞くことで体の中の状態をチェックすることができます。
4.息の音で体の状態をチェックすることのメリット
息の音を聞いてチェックすることには次のような大きなメリットがあります。
【体の中の状態が適切なのかどうか】だけにフォーカスしてチェックできる
唇を振動させないので口が全く疲れない
楽器が無くてもどこでも練習できる
【体の中の状態が適切なのかどうか】だけにフォーカスしてチェックできる
「2.切り分けが重要」でも説明しましたが、音を出すための三つの条件のうちの一つ【適切な状態で息を出すことができている】かどうかだけを個別にチェックできるのは非常に大きなメリットです。
唇を振動させないので口が全く疲れない
ハイトーンの練習をする際、【実際に楽器を吹いて】練習すると当然口が疲れます。
これは個人的な体感ですが、奇麗に出せた時よりも奇麗に出せなかった時の方がより口に蓄積する疲労は大きいというイメージがあります。
楽器を使わずに息だけで練習する場合、口は全く疲れないのでいくらでも練習することができます。
楽器が無くてもどこでも練習できる
楽器が必要ないのでどこでも練習することができます。
外を歩いている時や電車・バスの中などどこでも練習できるので、練習の効率が上がります。
特に、普段家で自由に楽器を吹けない社会人にはお勧めの練習方法です。
5.息の音をコントロールする具体的な方法
息の音をコントロールする具体的な方法に関しては別の記事にまとめてあるのでそちらをご覧ください。
以上、息の音を使った練習方法に関して解説してみました。
この息を使った練習方法ですが、ハイトーンを出すため以外に
・リップスラー、スラー、リップトリルが奇麗に早くできるようになる
・音そのもののクオリティを高める
などの効果もあるので、別の機会に解説する予定です。