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どうせ大変!? 就職先選びで考えておきたい“Webディレクターの立ち位置”について

Webディレクターという仕事は、会社によって求められることが大きく変わることは、以前の記事(Webディレクター人材問題③ 可視化は困難!? Webディレクターの“経験”について考える)でも散々書きましたが、現実として私たちが雇われるためには、選考時に得た決して多くない情報の中から、就職先を決めていかなければなりません(仰々しく当たり前のことを言う)。
 
断っておきますが、会社選びの基準は、なにも仕事内容だけではありません。待遇、福利厚生、勤務時間、会社の安定性、オフィスや人間関係の雰囲気など、判断要素はいくらでもあります。
 
ただ、ここではあえて物事を単純化して、会社を選ぶ際の仕事内容の基準として、社内におけるWebディレクターの立ち位置について考えたいと思います。 


直接的にお金を生むか

立ち位置なんて曖昧な言葉を使いましたが、要はWebディレクターに数字を求めるかどうか、という話です。営業部署の役割を求められているのかコストセンターなのか、とも言えますね。

「数字を求められるWebディレクター」について

例えば制作会社やWebシステム/アプリ開発会社、クリエイティブエージェンシーなどでは、受託開発やサービス利用などWeb制作(もしくは開発)そのものが企業の商品になるケースが多いです。

その場合、当然ですが採算性が求められます。

この採算性には大きく「①売上を求められる」「②利益を求められる」という2つの考え方があります。

①売上を求められる

いわゆる案件開発もしくは営業というやつですね。クライアントから案件を獲得して、企業に売上をもたらす仕事。会社によっては営業職やプロデューサーが行うこともありますが、特に小さい制作会社ではクライアントと向き合っているWebディレクターがそのまま営業を兼ねている会社も多くあります。

この仕事がWebディレクターに求められる場合、どうやって競合との違いを生み出すかという点が、評価の大きな比重を占めることになるでしょう。納品物(アウトプット)の品質だけでなく、ブランディングやUI/UXなどの付加価値性、納品に至るまでのプロセス、細やかで柔軟な対応力、クライアント理解なども含めて、「この会社だから」とクライアントに思ってもらう(あるいはクライアント内でそのような合意形成を取りやすくできるような仕事をすること)、要はサービス力が大事です。 

②利益を求められる

一方で、案件開発の場に立っていようといなかろうと、受託制作・開発=売上が発生している案件のディレクションを行うのなら、必ず求められるのが工数管理です。社内のメンバーの稼働時間、社外パートナーの外注費などを適正に管理すること。要は原価をコントロールして、案件の利益を出すことです。

営業職やプロデューサーが売上の責任を負っていたとしても、利益(正確に言えば原価管理)の部分はWebディレクターが持つ、といった会社もあります。その場合、Webディレクターには迅速・効率的にプロジェクトを進めることが求められるでしょう。下手したら、自分のディレクション能力が、アサインしてくれた営業やプロデューサーの査定に影響する可能性もあるわけですから、責任は決して小さくない。

もちろん、ただ案件を工数かけずにやればいいのではなく、工数をかけるべきところはかけて、クライアントに期待以上の制作物・体験を提供することも重要です。自分が関わった案件から継続的な引き合いが発生したり、クライアントが別の方や新規案件を紹介してくれたり、次の案件で自分が指名されたりすることもまたWebディレクターの価値になるわけですから。

この競争力や採算性というところが、特にWeb制作を“クリエイティブな仕事”と捉えているタイプのWebディレクターには想像以上にしんどい。いわく「そういったビジネススキルが苦手だから、クリエイティブ人材になったのに」

「売上を追わなくていい部署」について

一方で、例えば事業会社や一部の代理店などでは、自社サイト・SNSなど直接的にはお金を生み出さない仕事をWebディレクターの役割として求める会社もあります。あるいは、企業内の新規開発部署のクリエイティブサポートなど、外注費を出すことができない仕事をサポートする「インハウス制作部隊」と定義される仕事もあります。これらの仕事では、売上・利益を追わなくていいコストセンター的な立ち位置とされることもあります。
 
ときに売上を求められるWebディレクターから「数字に追われなくていいね」と言われたりすることもある立場ですが、これはこれで相当に大変な仕事だと思います。 

売上・利益以外で、存在価値を示さなければならない

まずこの立ち位置のWebディレクターは、自分のパフォーマンスが「会社の売上・利益に直接的には貢献していない」と自他ともにみなされがちです(本当はただ可視化できていないだけで、他の間接部署含めて会社の売上・利益に貢献していない仕事なんてないんですけどね)。
 
そのため、常に自分の存在が会社に軽視されるリスクを抱えています。数字という分かりやすい指標で存在価値を示せない以上、それとは別の付加価値を自ら見つけてアピールしていかないといけません。 

社内の理解度・リテラシーがバラバラもしくは乏しい

Webディレクターが抱える案件自体が企業の商品になっている場合は、営業や経営陣もその商品価値を一定理解しています。要は、ディレクターやデザイナーの仕事に対する理解やリスペクトが前提にあります(その分、求められるものも高まりますけど)。
 
しかし、Web案件が企業の商品にならない売上を追わなくていい立ち位置の場合、そもそも「あの部署/あのWebディレクターって人、何やっているの?」みたいな社員がわんさかいます(そして説明しても理解してもらえない)。逆の立場で考えてみれば当たり前ですよね。自分と関わりがない部署の仕事にどこまで興味とリテラシーを持つことができますか?という話です。

それどころか、この手の会社ではマネージャークラスや経営陣でさえ、なぜこの会社にWebディレクターがいるのかよく分かっていない人もいます

冗談みたいな話ですが、「これからはクリエイティブな人材を抱えておくことが必要だから」となんとなく採用して、実際のところは使い道を決めておらず「人を集めたから、このクリエイティブチームで会社にどうやって貢献できるか考えてください」という指令が下ることさえあります(実話)。

実は強く求められる「案件を生み出す」力

このようなWebディレクターを評価する基準がない会社で働くには、実は数字を求められるWebディレクターと同じかそれ以上に、現状への問題意識や課題発見能力、それを提案してプロジェクト化する能力、要は案件を生み出す力=社内営業力が求められます。(皮肉!)

結局、数字はきっちり見られる

そして、コストセンターという立ち位置は企業にとっては投資≒経営リスクでもあるので、案外仕事内容や売上・利益への間接貢献などをシビアに見られます。しかも、売上・利益の責任を抱えていない場合、プロジェクト責任者が自分ではないことも多く、そうなると数字を抱えているWebディレクターならできる「この案件は赤字だけど、あの案件を省力化して取り戻そう」「この案件は、次年度に向けての布石だから採算を気にしない」といった言い訳総合的な判断も自分で行う権限を与えられていません。

あるいは、特に事業会社のインハウスディレクターとして採用される場合は、自社サービスのサイトやLPの運用などWebマーケティングとしての成果を求められることもあります。

そして会社の主力商品ではないため、成果が上がらない状態が続いたときに「撤退」や「体制変更」という選択肢が経営陣に生じやすくなり、ジョブチェンジを命じられたり、チーム解散や事実上退職に追い込まれたりするリスクも当然あります。

事業会社のインハウスディレクターと聞くと「安定」「勝ち組」「ホワイト」みたいな印象を持つ人も多くいますが、実際のところはそんな生やさしいものではないです。少なくとも、私は営業部署とコストセンターの両方を経験した上で、いま制作会社=営業部署としてのWebディレクター兼プロデューサーです。

「どのプレッシャーを取るか」という視点で選ぶ方法もある

つまり、数字を求められるWebディレクターも求められないWebディレクターも、まったく違う方向性でそれぞれプレッシャーはあるということです。
 
まあ、仕事なんだから当たり前です。
 
何が言いたいかというと、こういったプレッシャーの質を見極めておくことで、自分がどのタイプのプレッシャーならコントロールできるか、どのタイプのプレッシャーには脆いかということから、入社後に自分がつぶれるリスクを計算することができると思います。それはそのまま、企業とのマッチングにもつながっていくと思います。
 
別に「苦手なものを回避せよ」と言いたいわけではありません。「自分はこのタイプのプレッシャーは苦手だが、だからこそあえて挑戦する」ということも、素晴らしい決断のひとつだと思います。
 
その場合に大事なのは、「だからこそあえて」という意思があるかないかです。これがあれば、たとえいざ仕事の中で苦しい状況に追い込まれたとしても、「自分はこのプレッシャーを体験するためにここに来たんだ」とポジティブに思えたり、「やっぱり自分には合わないから転職しよう」と撤退判断を適切にできたりする可能性を高めることができるはずです。
 
少なくとも「こんなはずでは」と精神的に過度に追い込まれたり、「自分は価値のない人間だ」と全否定に走ったりするリスクは避けられるんじゃないかなと。

「いい勉強になった。次はこういったタイプの仕事をやってみよう」

こんな気持ちで仕事をしていけば、少しはWebディレクターの仕事を続けていけるモチベーションを維持しやすくなるのではないかと思います。

まあ、そう簡単に辞められると、残った人が大変なんですけどね!(でもメンタルエラーを起こされるよりは転職された方がマシ。そして、人のこと言えない)

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