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Webディレクター人材問題① なぜWebディレクターは人材不足と言われているのか

Webディレクターという仕事は常に「人材不足」と言われています。資格もなく特殊なスキル(例えばデザインスキル)も必要なく名乗れる仕事で、多くの人がこの肩書をもって仕事をしていると思うのですが、実際に採用活動を行うと、企業としてはなかなか“良い人材”に巡りあうことが難しいようです。
 
私自身、人材を募集する側(採用担当)、応募する側(転職活動)の両方を経験していて、確かに双方のマッチングの難しさを感じていました。


ディレクター、「Webディレクター」と語りがち

まずは自分について。
私自身は自分のことを「統合ディレクター」もしくは「プロデューサー」だと思っていますが、おそらく経歴を見た一般的な人々がイメージする言葉は「Webディレクター」になると思います。
 
Webデザイン/グラフィックデザインを両方とも行う制作会社で両方のディレクションを行っていると、自然とWeb案件(デジタル案件)がメインになりやすいと思います。デザイン領域の場合、グラフィック案件(紙/アナログ)はアートディレクション領域までできるデザイナーがいれば、ディレクターの仕事の領域はそこまで広くない(少なくとも私がいた会社ではそうでした)。一方でWeb案件は、一定の規模になれば必ず複数人が関わるプロジェクトになるため、ディレクションが必須となります。
 
結果としてWebディレクションに充てる工数が増えるため、ポートフォリオを整理すると「Webディレクター」という印象が強くなるわけです。もちろん、このデジタル社会においてはよほどグラフィックに力がある会社でなければWeb案件の方が多い、という現実もあります。
 
そしてディレクターが少ない会社では、フロント対応から企画提案、コンセプトメイキング、コンテンツ企画などのプランニング領域から、プロジェクトアサイン、制作進行管理までを行うことになるため、自然と「Webディレクター」とよばれる職域に多くの時間を費やすことになります。

何が言いたいのかというと、「Web専門のディレクター」も「Webもやってきたディレクター」も皆等しくWebディレクター。もっと言えば、「多種多様なWebサービスの立ち上げ経験を持つ人」も「バナー広告作成ついでにLPの運用を進行していた人」もWebディレクター。肩書きだけでは何も表現できないふわっとした職業です。

本当に「人材がいない」のか?

さて、このWebディレクターという仕事。繰り返しますが、市場的には「人が足りない」と言われています。確かに求人サイトにはWebディレクターの求人募集がたくさん。でも個人的な印象としては、むしろ供給過多のように感じています。だって“希少な人材”の割には、求人募集の給料が決して高くないから。もちろん給料が低い理由は、プロジェクト自体の案件単価が低いという業界全体の構造上の問題もあります。
 
人が足りないのではなく、マッチング率が低い。
現実は、ただこれだけの話ではないかと。
 
ではなぜマッチング率が低いのか。ここからが本題になります。あえて物事を単純化すると、マッチング率が低い理由は主に以下の2つです。 

  • 「Webディレクターの仕事」と言われるものがあまりに広範すぎて、1人の人間がすべてをカバーすることができないから(前述の通り)

  • 特定の資格がなく参入があまりにオープンすぎて、個々の人材によって定義がバラバラすぎるから 

正直、同じWebディレクターでも、いざ話をしてみるとまったく話が噛み合わないなんてザラです。むしろ話が噛み合う方が珍しいぐらいで、当然「Webディレクター養成」みたいなセミナーでも言っていることは人によってバラバラです。
 
もちろんこのカオスな状態を良く思っていない人も多く、特に一定の成功を収めた人の多くが、「次世代育成のため」「業界の未来のため」にセオリーをつくろうと書籍やセミナーであるべき姿を具現化しようとしています。そしてそれによって、ますます定義が広大であやふやになっていくという現象が起こっています。セオリーがないというより、誰も彼もが「これがセオリー」と主張しまくっていて、結果的にどんどん収拾がつかなくなっている状態ですね。
 
だから単純に「Webディレクター」を募集しても、自分たちが求めるWebディレクター像と実際に応募してくる人の経歴・スキルとが絶望的なまでにマッチしにくい。ゆえに企業は、散々ミスマッチの人材を書類選考で目にして疲弊した挙句、ある程度“それっぽい人物”で手を打つ。はまるかどうか未知数な状態で迎え入れるので、不良人材化のリスクを考えると給料もある程度リスクマネジメントせざるをえない。そして実際に、皆あっさり辞める(私も転職しているので人のこと言えない!)。
 
アメリカのようなレイオフ前提の文化ならまだしも、簡単に解雇しない代わりに高額給与や膨大な退職金も用意できない(レイオフ前提の文化は、この高額給与&レイオフ時の高額退職金がセットだから、従業員も受容できる)日本の企業文化では、とてもじゃないけど企業は高給で迎え入れるなんてできないですよね。私も前職で採用に関わっていたので、この企業の論理はものすごくよく分かります。ちなみにこの企業文化うんぬんについては、私は特に思想持ちではないので先に行きます。

Webディレクターとは?

当然、私自身も「Webディレクターとは」みたいな定義づけをできる人間ではないですし、できたところでまた主張を増やすだけですので、今後奇跡的に大きな社会的成功を収めて(その予定も野心もない)書籍やらセミナーやらのオファーがあったとしても、正直断りたい(断るとは言っていない)。
 
では何を書くのかというと…。
Webディレクターに何をさせたいか明確にさせないと(汎用性やオールマイティを求めると)全員不幸になる確率が高い。ということを、何回かに分けて構造的な観点から言語化したいと思います。
 
ちなみにこの言語化は、 

  • 出版編集プロデューサーとして、編集プロダクションに仕事を依頼

  • 長く制作会社の統合ディレクターとして、主にBtoB企業のコーポレート案件(直取引)を担当

  • 広告代理店のインハウスディレクターとして、ナショクラ・BtoC企業・代理店案件のマーケティング案件を担当 

という、いい加減な多様なキャリアを経験してきた人間の、あくまで個人的な見解です。正しい意見とも思っていないので、「ああ、こんな考えもありだね」ぐらいの気持ちで受け止めてもらえればと。
 
なんとなくディレクターがほしいと思っているクリエイティブ起点の企業や、なんとなくWeb事業やDX、UI/UXをインハウス化したいと思っている企業、なんとなくWebディレクターというキャリアを意識している非ディレクター人材などを意識した内容にしたいと考えています。

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