mizutoikiru

フィクションについて等。

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最近の記事

2003年のアジアン・カンフー・ジェネレーション

1996年に大学の軽音サークルで結成されたアジカンは、大学卒業後メンバー全員が会社員として働きながらバンド活動を続けていく。(その後、一人また一人と会社を辞めていくことになる。) ライブハウスでコンスタントに20人くらいの観客が呼べるようになったのは、メジャーデビューが決まる頃であったという。 初の正式音源である1stミニアルバム『崩壊アンプリファー』がキューンレコードから再リリースされ、メジャーデビューを果たすのが2003年4月23日。少なくとも2002年が終わるまで、ア

    • この世界の真実 ファイナルファンタジーⅦ

       村人の生活保障をちらつかせ、巨大企業がエネルギー施設の建設を目論む。村のリーダーはそれに乗せられ、村人たちも賛成に回る。建設後、爆発事故が発生。証拠隠滅と情報操作が迅速に行われる。村は廃墟同然となり、村人はリーダーを責める。最後まで唯一建設に反対していた人物は、精神が崩壊し自殺する。  村人たちの責任転嫁を嘲笑うのはたやすい。しかし、ここで一度自分の心に問いかける必要がある。遠くの被害者である「我々」は、安定したインフラを享受するため暗黙のうちに許してこなかったか、と。

      • 機械仕掛けの神 アベンジャーズ/エンドゲーム

        ※『アベンジャーズ/エンドゲーム』のネタバレを含みます。  エンドゲームを観終わった後で振り返れば、この物語の展開は必然であると感じる。しかし観ている最中は、物語がどこに向かって収束していくのか分からなかった。  我たち観客は最終局面になって初めて、自分が観たかったものが何かを悟るのだ。  ところで、エンドゲームの脚本に携わる二人(クリストファー・マルクス、スティーヴン・マクフィーリー)は、かつて映画『ナルニア国物語』の脚本も書いている。ここで『ナルニア国物語/第2章:

        • レディ・ジョーカーの悪、笑い男の正義

          1.悪 攻殻機動隊 S.A.C シリーズの中で、髙村薫『レディ・ジョーカー』の影響が最も強く表れているのが、23話「善悪の彼岸」だ。この回に登場するセラノゲノミクス社社長アーネスト瀬良野氏は、その運命も含め『レディ・ジョーカー』に登場する城山社長との共通点が多い。 それだけでなく、アーネスト瀬良野氏の下記の台詞は両作品の本質を端的に示すものだ。 世の中に潜む悪は、我々が想像するようなレベルを超えてそこにいる。                『攻殻機動隊 STAND ALON

        2003年のアジアン・カンフー・ジェネレーション

          埋立地の風景━━村上春樹とパトレイバー

           高度経済成長。それは宮本浩次の歌詞を引用するならば「我々の上の世代の人間が神風のように猛然と追い続けた繁栄という名のテーマ」であった。  「我々の上の世代」とひとくくりにして良いかは分からないが、その時代を通過した人間の胸にのみ立ち現れる心象風景というものはあるかもしれない。そんなことを、村上春樹とパトレイバーという組み合わせから想起した。思いついただけなので、下記に引用してこの文章を終える。  僕は昔よく車を停めて海を眺めていたあたりで立ちどまり、防波堤に腰かけてビール

          埋立地の風景━━村上春樹とパトレイバー

          緑の夢

          最近脈絡もなく、昔プレイしたクロノトリガーのあるエピソードが胸に浮かんでくる。ロボが荒地を400年間耕し続けて森を蘇らせるエピソードだ。 砂漠と化した大地をもう一度森に戻したいというフィオナの夢を叶えるため、ロボは中世の世界に残りフィオナを手伝うことに決める。主人公たちは、タイムマシンで400年の時を越えてロボに会いに行く。森は蘇り、ロボの体は神殿に安置されていた。 泥にまみれたロボの400年は、主人公たちにとっては一瞬だった。残酷な話である。 その後、ロボは焚き火の前