できなくなったことで、得たものと失ったもの

おととしの夏からついこの間まで、双極性障害Ⅱ型のエピソード(※症状が出ている期間のこと)の渦中にあった。漸く寛解したものの、大きな躁鬱の波を繰り返してからできなくなってしまったことがいくつかある。どうも、脳の細胞の一部が死んだか、あまりうまく働かなくなってしまったらしい。

割と頭を使う仕事なので、当初は絶望したしひとつの能力につき3日ずつぐらいは泣いた。今回は、偶然か必然かもともと得意だったところには目立った影響がなく、苦手だったところが大きなダメージを受けた。正直、仕事や生活ができなくなったこと自体よりもADHD+ASD (発達障害)由来の苦手さを補うためにこつこつ積み上げてきた生活の知恵や工夫がほぼ一瞬(体感)にして無に帰したことの方がショックだった。しかし、何事にも良い面と悪い面がある。考えようによっては既に工夫の経験があることでラッキーだったのかもしれない。悪くなっていく最中は、悪い面しか見えなかったが、能力が下げ止まったら少しずつそれぞれの変化の良い面も見えてきたので、記録しておく。


①時間の感覚が消えた
未来のことがイメージできなくなった。これまでは、数日ぐらいなら予想というか時系列を追って想像することができたし、例えば2週間後に提出する書類をいつ仕上げればいいか等はある程度工夫して考えれば計画をたてることができた。
しかし、今は具体的に考えられるのは30分後ぐらいまでである。今日が何日かも理解するのが難しくなった。何回見ても忘れてしまうし、○○日にこのイベントがある、と言われても、それが遠い未来なのかすぐ先のことなのかは、わからなくなってしまった。カレンダーは読めるが、どうしても空で予定までの日数がわからないことが多い。一歩先の足元しか見えない状態で真っ暗な道を歩いているみたいだ。正直、滅茶苦茶怖い。
ちなみに、半年ぐらいかけて徐々にできなくなっていった後、コンサータを試したときに完全に時間感覚がなくなり、その後変化なくできないままなので、多分時間を担当してる脳の細胞が死んだんだと思う。
悪い面:一人でマイペースに作業はでこるが、予定がたたず、誰かと待ち合わせしたり時間を守るのは難しくなった。仕事では○○どうなりそう?いつ結果わかる?などと聞かれてもなかなか答えられない。さすがにノープランです★とも言えないし....。
対策:とにかくメモる。全ての予定はGoogle keepで一元管理し、作業計画はカレンダーに付箋をはってたてる。もちろん感覚的にはわからないので、適当に決めている。どうせ調整するのはどこの誰かもわからない明日以降の自分だ。遅刻は諦めた。なので、できるだけ人との約束はしないようにしている。孤独な生活だ。。
良かった面:予定へのこだわりがかなり緩和された。そもそも予定自体をイメージする力が減ったので、こだわりようがない。数時間後のことなら完全に他人事のような感覚でさくっと変更できる。あと、これまではその後の予定を考えすぎて動けなくなることが多かったが、それはほとんどなくなった。今に集中できる感じは素晴らしいし、頭がすっきりしていわゆるフロー状態になりやすくなった気がする。予定を諦め(ざるをえなくなっ)たら考えることが減って、「次になにするか」を決めるときの混乱も減ったからかもしれない。

②遂行能力が下がった
元々低かったが、作業の手順を思い浮かべながら実行することが前よりさらに苦手になった。これは、仕事でも、生活でも頻繁に起こる。例えば、お風呂の入り方とか。
対策:これもGoogle keepのチェックボックス機能を使って、手順が決まってるものはルーティーンの作り、少しずつためるようにそている。例えば、金魚の水かえなら、◻ポンプで水槽の水をバケツにとる◻トイレに水を捨てる◻新しい水をくむ◻カルキ抜きを入れる、みたいな感じで分解して書く。仕事はもっと細かく書いている。新しい作業をやるときは、必ず作戦タイムをとり、事前にチェックリストを作ってからやるようにしている。風呂は銭湯で人が体を洗うのを見ながら入る。お手本があれば大丈夫。
悪い面:とにかくスマホから目が離せないので、人との共同作業が難しくなった、というかまだ一度もチャレンジしてない。そして、必死さが出ているのか誰も話しかけてこなくなった。まあ助かるけど....。作業は遅くなったし、すぐ立ち止まって確認しなければいけないので、効率はあまりよくないように感じられる。携帯を常に見てるのでネットをしてさぼる誘惑と戦いつづけなければいけないのは少し疲れる。あと、スマホの電池がすごい減る。
良かった面:人目を気にしすぎて作業のペース配分がうまくいかないことが多かったので、人目を気にする余裕がなくなったのは却ってよかったかもしれない。必ずタスクリストを確認するので、ケアレスミスは減った気がするし、分からなくなったときに立ち止まって考える癖がついた。

③さっきまで何やってたか覚えていられなくなった
例えば作業中に話しかけられたとき、会話が終わったらもう、これまで何をやっていて、次に何をしなければいけないかを完全に忘れていることが増えた。つまり仕事中に「今ちょっといいかな」が発生するとその日は終わる。あと、会話をしても、会話が終わると会話していたこと自体を忘れてしまう。チャットにしてくれぇーーー!!ちなみに、すごーく時間がたってから思い出したりするので、記憶自体はどこかにあるんだと思うが、必要なときにはほぼ間違いなく出てこない。
部屋のなかで少し歩くともう、今どこへ何のために向かっているのかわからなくなる。ご飯を取りに行こうとしてた、お水を飲もうとしてた等も忘れるので(忘れ続ける=死)、食べ物は透明な扉の冷蔵庫に入れ、ペットボトルのお茶を買ってベッドから見える位置に積んである。引っ越したときに奮発して2DKのアパート(※ボロい)にしたのに、ベッドルームから出られなくなってしまったので大変悲しい。綺麗なワンルームにすればよかった。もちろん仕事はかなりの支障がある。
紙のメモとEvernoteを愛用していたが、捲ったりページを移動した瞬間にわからなくなるので、必要なメモが一枚に見てとれるGoogle keepに全ての情報を移すはめになった。
対策:とにかくGoogle keepから目を離さないことしかない。それでも忘れたら縁がない作業だったんだと思うことにしている。タスクリストをガチガチに作ってマイペースにやるしかない。社会人的にアレかなとか考えずとにかく写メとメモを徹底。口頭でのコミュニケーションを避けているがいつまで逃げ切れるだろうか。。
悪い面:言うまでもなく全てにおいて困る。
良かった面:作業の区切りごとにタスクリストを書き換える作戦タイムが必要になったため、これまでうまくできなかった休憩がとれるようになった。トイレにも行けるし、ついでにストレッチをしたりしている。もちろん次のタスクに◻トイレ◻ストレッチと書いてあるからできることだが、休憩は大きな課題だったので休むための良い方法が見つかったのは良かったと言える。

結論:Google keep がなくなると、私の社会人生活は終わる。色々な意味で。グーグルさんには頑張ってサービスを継続してほしい。

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