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【邦楽】サマソニ参戦10年超の私が、特に印象深いライブを振り返る②

「mizuさんって、絶対星野源とか好きそう」

以前、職場の同僚に言われたことがある。
間違いではない。


洋楽好きを自称する私だが、「YELLOW DANCER」は発売当時よく聴いた。
エッセイも読んだ。中でも「そして生活はつづく」が特に好きだ。
言っておくが、私は下ネタが苦手だ。しかし、彼のエッセイは(本人が計算しているのかはさておき)そこかしこに哲学的な香りが漂っていて、それがたまらなく良い。だから最後まで面白く読める。
そして何より、同じ埼玉県出身。それだけで親近感が湧く。

一度だけ、彼のライブを観たことがある。

それは遡ること2012年のフジロック、お昼のフィールドオブヘブンのステージだった。

午前中を苗場への移動に丸々費やし、すっかりお腹を空かせた私は、初期の代表曲「くだらないの中に」や「夢の外へ」を、ピザの出店の行列に並びながら、そしてピザを食べながら、聴いた。
まだ「恋」どころか「SUN」も発売されていない時期。アコースティック曲中心のセットリストはともすると非常に地味だったが、苗場の山奥の情景と相まって、日々の仕事でささくれた私の心は間違いなく洗われた。

そんな星野源さんは今年のサマーソニックに出演が決まった。
もし観ることができたら、私にとっては実に12年ぶりのライブとなる。唯一、OneRepublicと時間帯が被らないことだけを願う。

ということで、今回は邦楽を軸に、サマーソニックで印象深いアクトを個人的な視点で振り返っていきたい。

私は邦楽のライブには日頃殆ど行かない。ゆえに、フェスは邦楽アーティストと出逢う場としても貴重なのだ。
そこまで知識がある方ではない、熱心なファンとも程遠い、けれど音楽は好き。そんな私の個人的な記録として、お読みいただければ幸いである。

※通し番号は前回からの続きとしているが、内容は独立しているので、前回の洋楽編を読まなくても全く問題はありません。

③Mr.Children(2013)

ここでいきなりミスチルかよと思った方、いくら何でも大衆的過ぎない?と思った方。期待を裏切り申し訳ない。

この年は所謂「ミスチル地蔵」問題がクローズアップされた年でもある。

ミスチル地蔵とは、ミスターチルドレンのライブを最前列で観たいがために、その前のアクト(今回はスマッシング・パンプキンズ)の演奏時から最前列を陣取るファンのことを指す。ミスチルが登場するまではボンヤリと立ちすくんだり、その場に座り込むなどする姿が見られたことから、ネット上で”地蔵”と揶揄されてきた。

https://lp.p.pia.jp/article/news/88337/index.html

国内の国民的人気を博しているアーティストを目玉としてブッキングすると、度々この手の「地蔵」問題が勃発する。
個人的に、ある特定のアーティストだけ観たい人にフェスという場所は不向きだと心から思う(演奏時間が短い、体力的負荷が大きい、1アーティストに出す費用として考えるとフェスのチケットは割高、等々)のだが、敢えてこの場で多くを語ることはしない。

だが、普段はそう観ることが叶わないアクトを堪能できるのが、音楽フェスの魅力の一つであることは事実。
ということで、洋楽ファンから影で「客寄せ」などと言われようが、私自身はミスチルを観ることを結構楽しみにしていた。

そして実際に生で聴く「名もなき詩」や「終わりなき旅」に涙腺が緩んでしまったのも確かだ。

しかしながら、何より私が驚いたのはこの曲を演奏したことだ。

この曲のシングルCDの売上について、前後のリリース作品と比較してみる(データは全てWikipediaから引用)。

13thシングル『Everything (It's you)』オリコンチャートでは初週60.2万枚、累計売上は121.7万枚。
15thシングル『終わりなき旅』オリコンチャートでは初週51.6万枚、累計売上は107.0万枚。

14thシングル『ニシエヒガシエ』初週36.1万枚、累計売上は66.4万枚。

前後にリリースされた曲はいずれもミスチルの代表曲。比較対象としてはどうしたって不利だが、数字だけを取り出せばセールス的に見劣りするのが正直なところだ。

実際、この「ニシエヒガシエ」は、他のミスチルのシングル曲と比べるとかなり異色の作品だと思う。
全体に退廃的な雰囲気が漂っているし、「ミスチル=バラード」のイメージからかけ離れる程にギターやドラムは主張が強めだし、歌詞はやけっぱちで躁鬱っぽい(「抗鬱剤」「張り付けの刑」という不穏な単語も出てくる)。

しかし私は、大衆受けするとは言い難いこの曲がリリース当初から好きだった。
世間一般からの期待や願望は抜きにして、ミスチルが本当にやりたい音楽はこういう実験的で生々しいロックなのではないか、とまで思っていた。実際のところは分からないけれども。

そんな訳で、サマソニでこの曲のイントロを聴いた時は一瞬信じられなかった。
まさか、彼らのキャリアの中でも実験的と言われるこの楽曲を、敢えてのサマソニで演奏するとは、と。
そして、売上それ自体は他の楽曲に劣るとしても、フェス仕様にオールタイムベストのセットリストをぶつけてくるはずの状況でこの曲を選曲する辺りに、私はバンドの攻めの姿勢を感じた。

なお、この曲におけるブロック後方にいた周囲の観客の盛り上がりは、個人的な体感としては何とも微妙なものだった。やはり、ミスチルの一般的なイメージとは異なるのだろう。
しかし私の中ではどうでも良い。少なくとも、私は彼らのサマソニでのステージを忘れることはないだろう。

④TOKIO(2014)

メンバー脱退で、音楽活動が休止状態にあるのは周知の事実。それだけに、2014年のサマソニでのライブは今思い返しても本当に貴重だった。
時間帯が昼間だったことを考えても、観客の入りはかなりのもの。ジャニーズ(旧名)ファンもいたのだろうが、私のような興味本位で集まった観客もきっと多かったはずだ。

私自身、アイドル系アーティストのファンだったことは一度もないし、寧ろそのような音楽からもコミュニティからも距離を置いていた。正直言って、あの黄色い歓声が苦手だったのだ。
しかしそのステージは、「アイドル」という言葉で片付けるのは失礼に感じる程に、実力を感じるものだった。

演奏や歌にはロックのダイナミズムも、安定感もある。「宙船」や「AMBITIOUS JAPAN!」、「LOVE YOU ONLY」などの代表曲を散りばめつつ、セットリストはメンバーが作詞作曲を手がけた活動後期からの選曲が多め。前者の曲で観客が盛り上がることは最早仕方がない訳だが、活動後期における、作詞作曲を含めた創作活動への力の入れ様が感じられ、非常に良い印象を持った。

個人的には、この曲も演奏してくれて嬉しかった(競馬ファンの間では"The Legend"シリーズが人気だが、個人的にはJRAの近年のCMの中では一番好きなCMだ)。

現状音楽活動の再開は見通せないだけに、フェス出演以降バンドが辿った経過は非常に残念だが、サマソニでのステージは本当に良かったと、私は声を大にして言いたいと思う。

思い出は語り出せばキリがないが、また新しい夏がやってくる。次の思い出の1ページに期待して、この記事を締めくくりたいと思う。

※おまけ
邦楽で数少ない好きなアーティストである斉藤和義さん。
ファンクラブに入っていた時期もあり、ライブは両手で数えられる程度の数は行っている。そんな中でも、後にも先にもライブで聴いたことがあるのは2015年のサマソニだけ、という思い出深いこちらの曲を貼り付けておく。少なくとも私は涙なしには観られなかった。
ここ数年和義さんのライブに行けていないのだが、最近のライブでは演っているのだろうか?


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