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何度でも読みたいnoteの引き出し

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何度でも読みたいなぁ・・・と思ったnote、トラックバックのように大々的に紹介はしないけれど、誰かにもおすすめしたいなぁ・・・と思ったnoteを、そっとしまう場所です。ときどき、…
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2021年10月の記事一覧

想いを包む

───── 「美涼ちゃん、あがる前にカットしたペーパーを片付けておいてね」 作業台の上に残った、ラッピングペーパーの切れ端をわたしは指さした。 「出た! さくらの千里眼!」 同期のくるみが冗談っぽく言う。紙の切り口や折り方で、誰がラッピングしたかが分かるのは、どうも特別に見えるらしい。 「ホント、よく分るよねぇ。わたしはリボンの結び方でも分からないや」 「リボンは一番個性が出るよね。逆にリボンでも分からない、くるみの方が不思議だよ」 「うっさい!」 くるみとこんな

私のミソジニー

頭上より遠く先に、光がぼんやりと揺れている。 酸素が薄く、視界の悪いここに、いつからいたのだろう。 不思議ね、自分の意志で決めて進んでいいのに、みんな同じ方へ列を作って流れていく。 倒れた人に手を差し伸べる者はいない。 足を引き摺り歩く老人を見て、可哀そうと足を止めた子どもに親が、私たちに出来ることは何もないと、お医者さんに任せればいいと、子どもの手を強く引き、急ぎ足で進んで行く。 流れから右に大きくそれて歩き出した中年者に、冷ややかに陰口を続ける中年者と、指を差し馬鹿笑いを

どうしていつも、原稿を書くとき泣いてしまうのか。

もうだめだ。ひとり、PCの画面の光を受けながら、絶望する。涙がはらはらとこぼれる。理想とする「なにか」を書ける気がしない。 ということがわたしには、ちょくちょく訪れる。 こんにちは、こんばんは。ライターのくりたまきです。 まばゆいほどの、すばらしいコンテンツが、世の中にはいっぱいある。それに比べて、わたしが書くものの、どうしようもなさといったら。足元を見ると、呆然とする。ぼんやりと理想が遠くに見える気がするのに、そこにたどり着かない。純粋に、力が足りないのだ。 みたい

風見鶏

一日をなんとか乗りきって、アパートの自分の部屋に辿りついた、ベッドに倒れ込むと、いつものようにがさがさになったタオルケットに抱きつき、鼻を押しつけ思いきり息を吸い込む。 これで少し気分が落ち着くのだ。もう、するはずもない、母の残り香を感じとる。幼い頃からのルーティン。 薄いピンクのタオルケットは、私が3才の頃から使っているもの。寒い冬でも羽毛ぶとんの下には、このタオルケットを掛けている。 母は優しい思い出だけを残して、私が5才の時に病気で他界した。タオルケットは唯一の母

泣きながらカップ麺を食べた。まだ大丈夫と自分に言い聞かせた

ライター1年目、文才がないとずっと自分を責め続けていた。右も左もわからないままライターになった。コネもなければライターとして活動する友達もいない。相談できる人もいなければ、この思いをどうやって口にすればいいかもわからなかった。夜通し書いた原稿は、赤字ばかりになって返ってきた。まるでお前の人生はダメだと言わんばかりに。 ライターとして独立するまでは、ずっと気長に文章を書いていた。PV数も読み手の反応も悪くなかったし、書きたいことを書いて、たくさんの人に読まれる嬉しさも知ってい

会社の雰囲気をガラッと変えた、たったひとつの習慣

昔、うちの印刷工場はすさんでいました。オジサンが下駄を履いてタバコを吸いながら印刷をしているような状態です。 はじめて、ビル1棟分の本格的な印刷工場を構えたのが、15年ほど前のことです。当時は、オペレーションも従業員の管理方法もまったくわからず、工場はみるみるうちに荒れてしまいました。 しかし、いまでは工場見学にきたお客さんに「すごくきれいで、あいさつの気持ちいい工場ですね」と言っていただけます。ここに至るまでには、僕の父で創業者である先代の、執念と哲学がありました。