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渡辺貞夫さんを「さわやかな朝に聴きたい人」だけにしないススメ

ジャズプレイヤー渡辺貞夫さんは御年85歳なのに今もライブで全国を回っていらっしゃいます。先日は名古屋だったようで、シンガーKeiko Leeさんがこんな写真をあげていらっしゃいました。

ご高齢にもかかわらずバリバリ吹いていらっしゃる貞夫さん。ずーっと日本を代表するジャズプレイヤーでいつづけていて、海外な名プレーヤーからもこんな称賛を受けているようです。

僕はjazz inn LOVELYでライブやふらっと立ち寄られ地元バンドに飛び入りで吹かれるのを聴かせていただいていたのですが、そういった時にLOVELYマスターから聞く貞夫さんのとの話は「演奏がスウィングしているか」ばかりだったのを覚えています。もちろん当時も、日本のジャズメンで一番有名な方で、30万枚近く売りあげていた(と言われていた)アルバムは軽快で心地いいサウンド、まさに草刈正雄さんと出演されてたCMのこのイメージのように輝いていらっしゃいました。

このツーショットの笑顔のように、音楽は爽やかで軽快(有名なのは「カリフォルニア・シャワー」「オレンジ・エクスプレス」など)、武道館でコンサートをされる、そんな渡辺貞夫さんが実は考えているのが「スウィングしているか」このジャズらしさにカッコよさを感じつつ、「貞夫さんがこだわるスウィング」をいつか知りたいなぁ、と頭のすみで思っていました。そこから20年、25年と経過、貞夫さんは85歳でも昔のままライブを続けていらっしゃる、という情報を目にしたこの機会に「貞夫さんがこだわるスウィング」を考察することにしてみました。

いろいろ読んでいる中で出会ったのが、2016年東京ジャズ出演に向けた日本経済新聞のインタビュー記事。こう書かれています。(以下引用)

1970年代後半から80年代にフュージョンのヒット作を連発し、ジャズというジャンルの枠を広げた人でもあるが「僕のルーツはあくまでもビバップ」と話す。ビバップはモダンジャズの原型にして保守本流ともいえるスタイルだ。(中略)今の若手もジャズの基礎としてビバップを勉強しているが「時代の空気を知らない」という。NIKKEI STYLE「渡辺貞夫さん 歌えるビバップ目指す」より

ここでおっしゃっている「ビバップの空気」というのが、貞夫さんのスウィングの中の一つじゃないか、と思いました。
人が”ジャズ”とイメージするBarとかでかかっている音は”モダンジャズ”と言われる音楽です。そのモダンジャズ”の基本の形(となったの)が ”ビバップ”。
「ルーツはビバップ」と言い切る貞夫さんの中にあって大切なのが「ビバップ時代の空気」ということで、”貞夫さんがこだわるスウィング”もそこにあるのではと考えたわけです。
ここで出てきているビバップについて、糸井重里さんとタモリさん、山下洋輔さんが語り合った場でこう説明されています。

楽譜どおりの演奏に飽きていたジャズメンたちは、場末のクラブでセッションを繰り広げた。これに目をつけたジャズクラブ「ミントンズ・プレイハウス」のオーナーが、タダで食事を提供するといってミュージシャンを集め、客を呼び込んだ。この夜ごとのセッションが、ビバップに発展していく。ほぼ日刊イトイ新聞 - はじめてのJAZZ2 ほとんど丸ごと再現ツアー より

「この夜ごとのセッションが、ビバップに発展していく」このあたりがジャズにとって大事な時代で、夜ごと繰り広げられたセッションは若いミュージシャンがヒートアップし活気に溢れてた、と考えられます。その空気へのこだわりが貞夫さんの「スウィングしているか」という言葉の中に入っている、のではないかと。

あくまで思いつきの見解なので間違っているかもしれません、でも「貞夫さんがこだわるスウィング」は、熱量が高いモノ、というのは間違いないような気がします。今回こう考えて貞夫さんの作品を聴き直してみると、僕には今までよりカッコよく聴くことができました。

貞夫さんをまだ聴いたことがない方まずはこの動画はいかがでしょうか。
ボサ・ノヴァの名曲「No More Blues」。聴きあたりは軽快で心地いいのですが実は最初の貞夫さんのアドリブからの展開はセッションのHOTさ、スウィング感をしっかり味わえます。



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